宇野side
真司郎が桂城先生を訪ねてから数日後、私は直也くん、にっしー、真司郎の浴衣を買うために千晃と買い物に出掛けた。
「じゃあ、宇野ちゃんからは何も聞いてないの?」
「うん。真司郎が納得したならそれでいいかなって。」
真司郎が帰ってきた後も私は敢えて何も聞いてない。
何かあるなら真司郎から言ってくると思うし、何も言わないってことは大丈夫だとおもうから。
従兄弟の勘ってやつ??笑
「すごいね。私だったら気になって聞いちゃうもん。」
「千晃、好奇心旺盛だもんね。」
「あ、今バカにしたでしょー!」
「してない、してない!褒めてるの!」
「ホントにぃー?」
最近、千晃とよく出掛けるから日高くんとか真司郎とか男子の話をすることが多いけど、私にとって千晃はその中でも違った意味で特別な存在。
言葉に表しにくいけど、ずっと一緒にいたいそう思える存在だった。
千晃、秀太、日高くんが知り合ったのは小学5年生のとき。
小2のとき鎌倉の学校に転校した日高くんは小5のときに初めて2人と出逢って意気投合したらしい。
特に好きな音楽が被った秀太とはすぐに仲良くなったんだって。
その後、中学で私が鎌倉に来て、同じ中学に入り、日高くんと感動の再会(?)を果たして、千晃と秀太とも出逢った。
それ以来一番の女友達だし、一緒に頑張ってきたって思ってる。
高校もわざわざ同じ学校を選んだわけじゃなくて、お互い、行きたいところに行こうってなったらたまたまそれが同じ学校だった。
それが今通ってるこの学校。
日高くん、秀太も同様だった。
結構正反対な性格だし、日高くんが秀太と仲良くならなかったら知り合うことも無かったかもしれない。
正反対だからこそ補い合うことができるし、支え合うことができる、そう思ってる。
「うーん、難しいね。」
男性物の浴衣は正直難しい。
みんな同じ感じだと個性がなくなっちゃうから、直也くんは柔らかい空気感を生かして薄めの色、真司郎は少し変わった茶色を基調にして、にっしーは日本男児っぽく、濃いめの黒に差し色として白が入ってるもの。
それぞれ想像しながら探す。
「そういえば、にっしーが転向してきてもう4ヶ月も経つんだね。」
「早かったような長かったような。」
「でも、より濃密だったよ。」
「そうだね。真司郎とにっしーラブラブだし。笑」
「ほんとそう。にっしーは一生懸命だもんね。」
「ちょっと不器用なところもあるけどね。」
「分かる!でも、最近思うんだよね。」
「ん?」
「あれ?にっしーと宇野ちゃんとだっちゃんの3人って幼馴染みだっけ?って。」
「なにそれー?」
「だって、それくらいテンポがいいんだもん。」
確かに3人で話すことも増えた。
でも、周りから見てもそう見えるなんて思ってもなかった。
たくさん笑いあったし、話したけど………………確信的な事はなにも話せてないのかもしれない。
未だに私たちはにっしーが転校してきた理由を知らない。
「でも、千晃だって、秀太と直也くんと幼馴染みでしょ?」
「まぁね。」
「私、直也くんの笑ったところしか思い浮かばない。泣いたりするの??」
「私もほとんど見たことないよ。声上げて泣いてるのを見たのは1回だけ。」
「1回だけ……。」
「それ以来、直也くんはあんまり泣かなくなったかもね。」
「強くなったのかな……。」
「一番強いのって直也君なのかもしれないね。」
「うん。」
あの笑顔になるまでどんな過去があって、どんな想いをしてきたのかは分からないけど、直也くんは私にとって尊敬する存在で、目標でもある。
真司郎、にっしー、直也くん、それぞれ気に入ったものを見つけて、お店を出た。
これからどんなことがあるのかな……。
でも、このメンバーなら大丈夫。
きっと何があっても前を向くことができるはず。