直也side
宇「すごい、本当に穴場スポット!」
直「だろ?お前ら疑ったバツとして後でアイス奢りな。」
日「直也くん大人気ない。笑」
西「すげぇー!!」
千「ホントに綺麗だね……。」
秀「…………(感動中……)」
真「ホンマやったんや……。」
花火会場に向かう途中でやっぱりこいつらには教えておこうと思って、地元民でも少ししか知らない穴場スポットに連れてきた。
最初は真司郎を中心として半信半疑だったくせに、連れきたら全員感動中だ。
穴場スポットが高い位置にあるために少し花火に近い気がして普通より壮大に感じる。
その分の感動も大きいんだろう。
6人は並んでわちゃわちゃ言いながら花火を見つめてる。
俺はそんな6人を1歩下がって見てた。
「なーに、1人で耽ってんの。」
そう言って近づいてきたのは日高光啓。
日高は人の変化によく気づく人間だった。
今まで教師をしてきて接してきた生徒の中でもすば抜けて何かを持ってる。
きっと日高は将来、人に影響を与える言葉を送ることが出来る大人になると思う。
そんな日高を取り巻く宇野ちゃんや、にっしー、王子、千晃、秀太。
それぞれ個性と良さを持っていて、決して馴れ合いではない何かで彼らは繋がってる。
そんなこいつらを見てるとやっぱり思い出すのはあいつのことばかり。
俺の青春だった。
「実は昔、ここに一緒に来たやつがいるんだよ。」
「え?!彼女?!」
「ばーか。男だよ。」
「なんだ。あんまり直也くんの恋愛話聞かないから聞けると思ったのに。……で、その人は?」
「ん?」
「今この辺に住んでないの?」
「なんでそう思う?」
「もし、いるんなら、今この瞬間一緒にいるはずじゃない?」
さすが。ご名答。
やっぱかなわないな。こいつには。
「……見えるところにはいないよ。でも、俺は今も一緒にこの景色を見てる気がする。」
「…………そっか。じゃあ俺は初めまして、だ。」
そこで追求しないのがまた日高らしい。
「お前ら見てるとさ、あいつのこと思い出すんだよ。」
「その人は……親友?」
親友という言葉を安易に使わないような日高が使ったからか、一瞬考えたけど、でも、やっぱり出た答えはひとつだった。
「俺は……そう思ってる。」
「その人は直也くんに親友って言ってもらえて誇りなんじゃない?」
「そうなのかな…………。俺はさ、羨ましかったんだよ。あいつが。」
「羨ましかった?」
「うん。ムードメーカーだったし。」
「……直也くんも違う意味かもしれないけど、ムードメーカーでしょ。」
「うーん……。俺さ、あんまりマイナスの感情を出さないだろ?」
「確かに。弱音はいてるのとか見たことないかも。」
「あいつは感情のまま、心の向くまま走るような情熱的なやつだった。でも、自己中とかじゃなくて。
周りを見ながらも自分の道を必死に歩いてるって感じ。
感動したり、悔しい時は泣くし、楽しい時はめちゃくちゃ笑ってて。
だからあいつのいう言葉にはいつも心が動いた。
それは俺だけじゃなくて、ね。」
「すごいね。」
「俺もいっぱい救ってもらったくせに俺は全然でさ。やりたいことも言いたいことも1割くらいしか出来てないのに。
儚いのは友情じゃなくて、人間そのものなのかもしれないな。」
「人間は儚いけど、儚いからこその魅力とか儚いからこそ気づけるものがあるんじょゃない?
直也くんがこの場所にその人がいるんだと思うなら別に今からでも言いたいこと言えばいいと思う。」
日高とあいつは真逆と言っていいほど違う。
日高は常に冷静だし、ものごとを一歩引いて考えられるタイプ。
でも発する言葉が妙に相手の心に沁みてくるのは同じだった。
「そうだな…………。俺が教師になった理由もその為でもあるからな。」
「その為?」
「伝えられなくて後悔したことを生徒を通じて伝える。勉強だけじゃなくて、もっと知って欲しいことがあるからって。
それに高校自体の友達って一生の友達になることが多いから。
もちろん礼儀とかを教えるのも教師の仕事だけど、それは俺じゃなくても出来るじゃん?
ほら、生徒指導部の先生とか。
俺にしか教えられないこともあるんじゃないかなって。
それに、一生に一回しかない高校生活楽しんで欲しいしね。」
「おかげさまでenjoyしてます。笑」
なんで日高にこんな話したんだか分かんない。
でも、自然と心が暖まるのが分かった。
「あ、そうだ。」
「ん?」
「王子に会わせたい人がいるんだった。」
「王子??」
「あー、與のことね。」
「……王子って。笑」
もうあと残り数分になった花火を見つめながら、あいつに語りかけた。
俺を教師に導いてくれてありがとう、と。