西島side










日高から連絡があった。















────西島、お前が転校してきた理由、教えてくれないか?















って。















覚悟はしてた。




宇野ちゃんの違和感は見てて感じたし、遠くないいつかにきっと宇野ちゃんは日高に全てを聞く時がくると思ってたから。





そして、その日高はきっと俺に全てを聞こうとするはずだと思ってたから。





隠すことなんてない。





教えてほしいと言われた今、俺は宇野ちゃんを守れればそれでいい。
















次の日、午前中から日高の家に行って全てを話した。













俺が転校してきた理由……







俺と宇野ちゃんの関係……










そして……宇野ちゃんの過去の全て

















6割は日高も知ってる事だった。








でも、残りの4割は俺しか知りえないことだったから日高も驚いてた。









でも、日高はきちんと冷静に聞いて、受け止めてくれた。









だから今ここで、宇野ちゃんの前で俺は全てを話す覚悟が付いたのかもしれない。





























2007年7月10日









さっき日高が言ったようにその日に俺と宇野ちゃんは出会ってた。






俺も当時、東京に住んでたから。





宇野ちゃんと日高と同じ学校だった。








でも、クラスは違ったし、まだ小さかったからお互い認識はしてなかった。











だから実質、あの時が初めましてだった。









俺はたまたま1人で遊んでいた女の子と友達になった。












名前は宇野実彩子ちゃん。











その時はみーちゃんって呼んでたかな。









2人で公園でめちゃくちゃ遊んだ。











すごい話したし、すごい笑ったし、とにかく楽しかった。











でも、それが悪夢の始まりだったんだ。





















午後4時50分。








夏だからまだ明るいけど、当時7歳の俺らには帰る時間。









そんな時────────












話しかけてきた1人の男がいた。


















「実彩子ちゃん?」
















今でも顔はハッキリ覚えてる。





でも、俺自身が小さかったからその男はすごい大きく感じた。














「おじさん、誰?」










宇野ちゃんも知らない人みたいだった。












でも、その男はこう言ったんだ。











「君のお母さんのお兄ちゃん。つまり、君のおじさん!

お母さんに君を迎えに行ってほしいって頼まれたの。

だから、一緒に帰ろう?」












男が指さした先には車があった。








後から聞いたところによるとその車は宇野ちゃんの家の車と同じ車種だったらしい。

















でも、当時から知らない人にはついて行ってはいけないという教育はされていた為、毎日のように先生や親から言われていた。










だから警戒してたんだ、俺も宇野ちゃんも。










そのときは。












「私、おじさんのこと知らない。」












そう言われた男は一瞬困った顔をしたけど、すぐに持ち直してこう言ったんだ。












「じゃあ、これを見せれば信じてくれるかな〜?」











男が見せたのは恐らく車のキー。










「あ!ママの!!」












そのキーにはキーホルダーが付いていて、そのキーホルダーは宇野ちゃんのお父さんが特注で、家族のみに作ったミニネームプレートが付いていた。




そのネームプレートにお母さんの名前が刻まれていたんだ。














「ほんとにおじさんなの?ほんとにママに頼まれて来たの?」














「だって、これはママのだろ?本当だよ。」











そのキーホルダーのせいですべてを信じてしまった。











「じゃあ、たぁーくんも送ってあげて!」









たぁーくんとは俺のこと。




西島隆弘だからたぁーくん。



宇野ちゃんが付けてくれた。















「…………お友達?」











「そうなの!ねぇ?いいでしょ?」












かなり男は悩んでた。







そしてしばらくしてから…………









「……いいよ。」










そう言ったんだ。












それが不幸中の幸いなのかどうなのか、よく分からない。





でも、それが幕開けになった。










宇野ちゃんと俺は男を信じて、車に乗った。















宇野ちゃん。







気づいたかもしれないけど…………







俺たちは











────誘拐、されたんだ。












その男に。