暗くなる前にどこかに行きたい。








誰かに知らせないと。












その想いだけで走り続けた。












限界なんて既に超えてる。















でも、止まるわけにはいかなかった。














止まりたくなかった。

















止まったら諦めてしまう気がするから。














止まったら2度と足が動かなくなりそうだから。




























日が少し傾いた頃、やっと森を抜けた。















集落がある────







人がいる────












あと少しだ…………













「坊や、どうしたの?」






















────────たすけて……
















振り絞った一言を発した瞬間、俺の視界は真っ暗になった。




























「…………ここどこ?」












目を開けたときに最初に見たものは真っ白な天井。














そして────














「隆弘?大丈夫か?」

















「………………お父さん。」













俺の親父だった。








そして、俺が目覚めたのは、病院。












「…………お父さん……。」















俺の親父は…………

















警察官だ。











もっと言うと……刑事、なんだ。













俺や宇野ちゃんが行方不明になって、マスコミに情報公開はされてないものの、捜査がされていた。










全国の交番、警察署に俺たちの顔写真が配られた。










俺のことを保護してくれた地元の方が「たすけて」と言ったことに不信感をもってくれて、警察に届けてくれたんだ。










それが7月15日のことだった。














「みーちゃん…………。」









「分かってる。大丈夫だ。隆弘が保護されたところを中心に捜してるよ。」










「はやく…………」












俺だけこんな…………











出来るだけの情報を親父に伝えた。










それをもとに捜索が続いた。















でも、その日中に見つからなかった。
















その夜、疲れてるはずなのに、一睡も出来なかった。












生まれて初めて夜通し起きてた。
























そして、やっと7月16日。














宇野実彩子が保護された。












でも、


















男はもういなかった。












いたのは憔悴しきってほとんど意識がない宇野ちゃんだけ。













でも、無事に保護された。










衰弱はしてたものの、命に別状はなし。












それ以後……












俺と宇野ちゃんが会うことは無かった。

















なぜなら────────


















宇野ちゃんは次に目覚めた時、その1週間の記憶を失っていたから。






































大人達の計らいで俺たちが会うことはなかった。










警察は男の捜索を続けた。










でも、何日経っても逮捕された、というニュースが流れることは無かった。











そして、宇野ちゃんの御両親は宇野ちゃんの為にお父さんの実家がある沖縄に、俺は親父の実家がある北海道に、移り住むことになった。









その犯人は未だに掴まってない。




そして、親父はその事件を期に警察を辞めた。












それからずっと俺の中で事件は終わってないんだ。