宇野side







大人しく聞いてた方が自分にとっても良い。








そう思って、聞いてたけど……。










なんでこの話からそっちいくの?











そんなことばっかりで多分かれこれ5分は西村先生の独壇場。









もうそろそろ私も我慢ならない。







言い返したら、ヒートアップするのは分かってるけど、我慢出来なかった。
















「ちょっと待ってください!!」


























そう言ったのは私じゃなかった。















それまで何言われてもじっとしてた…………


















千晃の声だった。



















まさか千晃が言い出すと思ってなくて、みんなビックリする。






西村先生でさえ、ビックリしてるのが分かる。












「……なんですか、伊藤さん。」









「私たちは……



秀太たちに会いに来たわけじゃありません!!



直也くんに用があってきたんです!!」











「直也くん……。浦田先生ですね。なるほど。浦田先生の部屋に遊びに来た、と。」






西村先生も負けじと言葉を返す。



応戦したい気持ちをぐっと抑えて、千晃を見守る。








「遊びに来たんじゃありません。聞きたいことがあってきたんです。

秀太たちには明日になれば会えます。


今、会いたいと思えば、わざわざ部屋に行く危険を犯す必要はありません!

ロビーで待ち合わせればいい。
用がないのに、わざわざエレベーターを6階で降りたりしません。


誰かに土下座して頼まれたとしても、男子部屋にいくことはないです。





でも………。

確かに私たちは今6階にいるのでそのことで言い訳はしません。

実際、6階に来ちゃいけないこと、忘れてたし。




でも、その禁止が意味するものは、男子部屋に行っちゃいけないから、じゃないんですか?

私たちは浦田先生にお聞きしたいことがあって、1度ロビーにも行きました。

そこで、寺田さんが浦田先生は部屋に戻った、という話を聞いたので、ここに来たんです。」







次々に言葉が溢れてくる千晃にしばらく私たちはもちろん、西村先生も動けなかった。











「…………っ、そうならそうと早く言えばいいでしょ?ちゃんと自己主張しないからそういうことになるんです。」











「その時間を先生は私にくれましたか?

1度その説明を私はしようとしました。
ですが、西村先生は言い訳は要らないとそれを切り捨てられました。

そして、あることないこと散々言われて……。

なんでそんなこと言われなきゃいけなんですか?
私の成績が悪いのは認めます。

でも、それ以外先生に咎められるようなことはしてません。カンニングだって、私はやってません。そのことはちゃんと証明されたはずです。


それに、宇野ちゃんにガッカリしたってなんですか。

宇野ちゃんはなにもしてないじゃないですか?

勝手に先生がガッカリして、それを宇野ちゃんに押し付けるってそんな理不尽なこと、ありますか?」










千晃、すごい。



その場にいる誰もがそう思った。






 

「──────っ。」










訪れる沈黙……。











「すいません。」















沈黙を破ったのは部屋から出てきた直也くん。











「すいません。ウチの生徒が。」







宇「直也くん。」








「浦田先生。この子達になんとか言ってください。」










「そうですね……。とりあえず落ち着こうか。周り見て?」









直也くんに諭されて私たちも周りを見てみると、他の部屋の子が何事かと出てきて、私たちを見ていた。








「ほら、伊藤さん、あなたがそんな大きな声で言ってることがこれだけ迷惑になってるんです。分かりますか?ねぇ、浦田先生。」



ここぞとばかりに直也くんに同意を求める。

ここでは西村先生が先輩の立場。


直也くんが歯向かうことは難しい……、そう思っていた。








「はぁ……。でも、私は伊藤の言うことも一理ある、と思いますよ?」








「直也くん……?」







意外な切り返しに1番固まってるのはやっぱり西村先生。







「生徒のことはまず、教員が信じてあげないと。来てつけてかかる前に1度だけでいいんです。どうかしたの?って声を掛けてあげれば。」









「……ですが!」










「大人に信じてもらえないほど、悲しいことはありません。そうじゃないですか?西村先生。」







完全に西村先生にとってアウェーな空気になってしまった。









「…………分かりました。もう失礼します。」









居ずらくなってしまったのか、自分の部屋に戻ろうとする西村先生。











「あのっ!!」











そんな先生を引き止めたのは秀太。










秀「先生が俺らのこと、心配で言ってるのもちゃんと分かってますから。」




日「間違ってる時は、間違ってるって教えてください。」




西「俺らじゃ気づけない時もあるしな。」









ちらっと3人の方を見て、先生はそのまま部屋に戻っていった。



3人とも大人だな。


人間偏差値、高いや。











「さて、場所を変えようか?」