宇野side






4泊5日の修学旅行。





九州ならではの中華街も眼鏡橋も平戸も行った。





美味しいものも沢山食べて、千晃はもちろん色んな人と沢山話して、友達のいい所を再発見できて……。









電波の届かないような山奥で千晃とよもぎ餅作りもやった。




でも、残念な事にお昼直後でしかもその後すぐにホテルで夕飯。




そんな沢山食べられないのに、8人で30個くらい作っちゃって、あんまり食べられなかった。




みんなにも持って帰りたかったけど、それはダメみたい。





(あ、釣りも楽しかったみたい。
でも、思ってたより釣れたんだけど、釣った魚が死んじゃって……。海に返してあげれば良かったって秀太が言ってた。)






それで、教えてくれた方たちが、後で私たちが食べるからって言ってくれたけど、勿体なかったな。





電波も届かないような所だから車もほとんど通らないし、周りは山と畑。





建物は目視できる範囲になかった。








「たまにはいいよね……。気持ちが軽くなる。」




「どうしても日常の中で自分が縮こまっちゃうもんね。」







大自然の中で千晃とそんな話をした。








そして、もちろん平和記念公園や原爆資料館も。






目も背けたくなるような出来事が実際に起こっていて、その出来事があるからの今、私たちがいるんだ。





そのことを改めて実感した。






「俺達、今を精一杯生きないとな。」








その日高くんの言葉に私は素直に頷いた。
















「早かったねぇ。でも思い返すと濃厚だよね……。」




「うん……。あー、戻りたい。この空港に降り立った時から!!」








私たちがいるのは福岡空港。


もちろん羽田空港行きの飛行機に乗るため。



修学旅行も今日で最終日。








「しかも最後なのに、離れちゃったね……。」







たまたま違う場所にいた私たちは直也くんが適当に配ったチケットによって席が離れていた。






「秀太とかは近くじゃないの?」





「あの集団に入り込んで聞く勇気は無い。」





「だよね……。笑」







最終日は最後だから悲しんでテンション下がる人と最後だからテンション上げて楽しもうとする人がいる。






日高くん、にっしー、秀太は完全に後者。



私たちがあそこに入れば、あれを落ち着かせないといけなくなる。




それはめんどくさい。笑









「あ、私こっちだ。じゃあね……宇野ちゃん……。」







見るからに悲しげな千晃と別れてチケットに書かれてる座席を目指す。







「……ここだ。」








なんと一番前の3人席の窓側の席。




隣はまだ誰もいなくて、通路側には隣のクラスの男の子が座って既に船を漕いでる。








「隣、だれかな……。」










そう思ってると、ふと人影を感じた。
















秀太side







「えー。秀太違う席?オススメの音楽聴かせてあげたかったのに。」




「俺にも聴かせて〜。」




「お前の好きなジャンルじゃねぇよ?」





「いいよ、別に!」





「しゃーねーな。って西島と俺、隣じゃねぇじゃん!」






「えー!!??」






なんだかんだ仲良い日高と西島は直也くんが適当に配ったチケットのせいで席が離れた俺と別れて席に向かった。









「…………お。」







そこは3人席で既に2人が座っていて、その内1人が見覚えのある人物だった。










「……うーのちゃん。」







「……秀太!」








そう、たまたま俺の隣だったのは宇野ちゃん。








「秀太、ここ?」





「うん。あれ、千晃は?」





「直也くんが適当にチケット配ったでしょ?それでバラバラに。もしかして秀太も??」





「そう。日高と西島は3人席の端と端みたいだけどね。」






「でも凄いね。たまたま隣なんて。笑」





「運命か?!」





「はいはい。笑」





「照れんなよ。笑」














「本当に楽しかったなぁ。」



「うん。色々あったけどね。」






「ふふっ。千晃も有名になっちゃったし。まぁ元々別の意味で有名だったけど。苦労しちゃうんじゃない?秀太は。」





「そんな苦労も千晃だからこそ、だからね。」






「うわ〜惚気てる。」






そういう宇野ちゃんは本当に楽しそうで、でもこの笑顔の奥にはなにがあるのかと思うとその重さに俺さえも潰されそうになった。







「……宇野ちゃん。」






「んー?」






「前にさ、千晃にも話したことあるだけどね。」





「今の状態がずっと続くなんて言えないじゃん?」






「そう……だね。受験もあるし、みんなそれぞれの道を選んで進む時が来る。」







「でもさ、俺は環境がどんなに変わったとしても俺達は変わんないと思うんだよね。っていうか変わりたくない。


いつまでも宇野ちゃんと日高が西島をあしらってて、それを千晃が嬉しそうに見てて。



それが永遠で有り続けたい。


大きな目で見たら小さい願いかもしれないけど、そんな小さな願いが…………色々なところで願われてる小さい永遠がたくさん集まって…………まぁ言っちゃえば世界の誰もが望む平和っていう大きな願いに繋がると思うんだよね。」







「……うん。」








俺は宇野ちゃんの人生の中で脇役で良い。




でも、ちゃんと宇野ちゃんに影響が与えられる脇役でいたい。





宇野ちゃんが俺らと一緒にいることが前提で、それこそが大切で、重要で。




宇野ちゃんの存在こそが


important、だから。




そう思ってるのは俺だけじゃない。





























「ちょっと、だっちゃん、にっしーの寝相どうにかして!重い!!」










「ねぇ、今のって……。」






「千晃の声、だな。」







「もしかして、3人席の真ん中って……千晃??」







「すげーな、これ。直也くんの計算?」






「まさか……。」