日高side
「着いた……。あー。耳治んない。」
「そう?俺は全然平気だよ。」
まさか俺と西島で千晃を挟むことになるとは。
後で聞けば宇野と秀太も隣同士だったらしくて、ここまでくると直也くんの策略としか思えない。
でも、そんなこと聞いたらなにが返ってくるか分かったもんじゃないから聞けないけどね。
日「そういえば、帰りって宇野のお袋さん?」
宇「そう。真司郎も一緒に来るって。」
行きの空港までは秀太の親父さんが送ってくれた。
俺らの親も知り合いでこうやって助け合うことが多い。
まだ真司郎も京都にいて西島も転校してきてない時に一回あったのは、俺、宇野、秀太、千晃の両親が日高家集まって飲んだ結果、妙に気があったらしく、その日はみんな日高家に泊まっていったっていう話。
俺はなんか居づらくなって秀太の家に行って泊まったけどね。
西「真司郎、俺らのこと好きすぎるな〜。」
秀「後輩からLINEきたもんな。真司郎が抜け殻ですー!!って。笑」
千「宇野ちゃんがいなくて心底寂しいんだろうね。」
日「もはや姉弟だもんな。あの2人。」
宇「まぁね。否定はしないよ。笑」
真司郎side
「真ちゃんは本当に実彩子のこと好きね。」
「お姉ちゃんみたいなもんやもん。」
4泊5日。
俺的にはめちゃくちゃ長かった。
そして、今俺は実彩子たちを空港にまで迎えに行ってる。
早くみんなと会いたい、その気持ちを否定はしない。
でも、俺には迎えに行きたい理由が他にもあった。
────────────
「すいません?……」
そう女性に声をかけられたのは実彩子たちが修学旅行に出かけて2日経った日のこと。
「……はい?」
どちらかと言うと初対面の人には警戒心を抱くほうやから、相手の様子を窺いながら向き合う。
「あの、ここのお宅、宇野実彩子さんのお宅ですよね?」
「…………は?」
指さす先にあるのは俺が今居候してる実彩子の家。
でも、急に聞かれたことに実彩子が関わっていてすぐに答えることが出来んかった。
「宇野実彩子さん、ご存知ないですか?」
いや、知ってますけど、一緒にここに住んでますけど。
普通ならそう答える。
もちろん俺やって例外じゃなかった。
そう、答えようと思った。
でも。
カバンの中から少しだけ覗く封筒に警戒心が高まった。
──────…………探偵社。
そして、その探偵社の名前に俺は目を見張った。
「……いや、知りませんけど。ここは俺の家です。」
「……そうですか。名字一緒なの偶然ですね。」
多分バレとる。
嘘ついとるの。でもここで自分を曲げるわけにはいかへん。
「ほんまや。そうですね。もうええですか?じゃあ。」
冷静を保ってるように見せたけど、本当はバクバクで破裂するかと思った。
「はぁ……。」
玄関を閉めて床に座り込む。
「なにが起きとるんやろ……。」
俺らの知らんとこでなにかが動き出してるのかもしれない。
そう思うと暗闇に引きづられそうで怖かった。
でも。
それより心配なのは実彩子のこと……。
「あ、いた!!お母さん!!真司郎!!」
おばさんが実彩子と連絡を取りながら空港内をうろうろしてるとやっと合流できた。
真「みさこ〜!!」
宇「はいはい、ただいま。お母さんもただいま。」
千「ほんとに宇野ちゃんのこと好きだねぇ。」
秀「普通の姉弟より仲良いだろ。」
日「シスコンってやつ?」
西「真司郎に怒られるよ??笑」
あー。帰ってきた。
このうるさい感じ。
うるさいねんけど、あったかい。
この暖かみのなかにずっといたい。
心の底からそう思った。