直也side









「直也くん!こっち!」








文化祭が近づいてきたある日曜日、俺はある人と駅近くのカフェで会っていた。










「すいません、こちらがお呼びしたのに遅れちゃって。」







「いいんだよ、どうせ生徒に引き止められて動けなくなってたんでしょ??」





「……ご最もです。。笑」









日曜日だけど、特別に準備をさせて欲しいと日高たちを中心に生徒が言い出して、俺が付くことを条件に許可した。





今は副担任の先生が見てくれてる。






他の先生に頼んでまで俺が会いたかったのは……。







「あの、北坂さん。」






「ん?あ、話があるんだったね。」









あの日の帰り際、真司郎から聞いた話。





家に帰ってから探偵社を検索にかけてみたけどかからなかった。




朋也に兄弟がいるなんて、しかも姉貴がいるなんて聞いたことない。






でも、真司郎が言ったように、俺も出来ることはしておきたかった。






その事実がどの方向に転がろうとも。










「単刀直入にお聞きします。」






「……どうした?」







俺のただならぬ空気に北坂さんも姿勢を正す。







「朋也に兄弟がいますか?」















「……え。」













北坂さんは心底びっくりしたような顔をしてしばらく動かなかった。












そして、徐々に顔が険しいものに変わっていった。









その顔が示す答えは……

















Yes以外のなにものでもない。














本当は笑い飛ばして欲しかった。














そんなわけないじゃないか、って。

















「……いるんですね?」













「……あぁ。朋也の5個上に女の子がいる。」












「お姉さん……。」













それから北坂さんはお姉さん出生から朋也の出生まで、全て話してくれた。








お姉さんの名前は涼さん。





涼さんのお母さんとは結婚せずに別れたため北坂さんにバツはついていない。




その後、朋也のお袋さんと結婚し、朋也が生まれた。








そして……







「朋也……直也くんに言ってなかったんだな。」










「──────。朋也も知ってたんですか。」










姉がいることよりも、朋也がそれを知ってて俺に言わなかったことに俺は驚いた。










俺の知らない朋也がいる──────。










「知ってたよ。っていうか涼の方から近づいてきたらしいんだ。


ある日突然、息子から”俺、腹違いの姉貴に会った”って言われた日は驚きで開いた口が塞がらなかったよ。




姉弟だけあって気が合うのか、何度か会ってたみたいだ。
妻には言ってなかったみたいだけどね。」





そんなこと、1度も朋也は……。










「あの……その方は今、何されてるか分かりますか?」







逸る気持ちを抑えて、核心をつく。




ここから何か手がかりが掴めるかもしれない。









「それは……







知らないんだよ。」









「知らない?」









「連絡も取り合ってない。お互いに他人として生きてるんだ。」










そう言った北坂さんはなんだか寂しそうで、俺はどうしたらいいか分からなくなった。



















「申し訳ありませんが、俺はその方とお会いしたいんです。いえ、写真でも構いません。お願いできませんか?」








写真さえあれば真司郎に確認が取れる。










「なぜ、そんなことを?」








「それは……。」

 






北坂さんに話すべき否か。









迷った俺が出した答えは──────







1人の教師として教え子のプライバシーを安易に教えるべきではない。










「すいません、それは言えません。」







「そう……か。でも、私も本当に分からなくて。この辺に住んでるってことくらいしか。」








「この辺に住んでる……。」









それにしても情報が少なすぎる。



それじゃあ探し当てるのは相当な時間がかかる。










「今後、北坂さんにご迷惑をかけることになるかもしれません。




それでも、俺は俺が思う道を行かせていただきます……。




今日はありがとうございました。失礼します。」











「──────直也くん。」









去り際に呼ばれて振り返ると、北坂さんはいつもの優しい顔で








「頑張れ。」










そう言ってくれた。



無茶を言ってるのは俺なのに、正面から応援してくれた。






















「あ!戻ってきた!」








クラスの誰かの声で全員がこっちを向く。









日「直也くん、遅い!!これ、見積書ね。あと、買い出し行くから車出してー。」






直「日高ひとり?」






宇「1人で行かせたら何買ってくるか分かんないから私も行くよ。」






日「最近のブームはシュークリームかなぁ。」





直「いや、その情報いらねぇし。笑」







秀「なぁ、やっぱ西島、千晃頼んだ!!」






直「なに?千晃、こっちの係じゃなかった??」






秀「人手が足りないってなったときに千晃がやるって聞かなくて。あ、直也くん、おかえり。」






千「ちょっと切っちゃっただけじゃない。秀ちゃん、おおげさ。」






直「千晃より食材が心配。」




千「ちょっと直也くん!?」






秀「食材の救出は無事終了致しました!!」



日「でかした、秀太!!」



千「だっちゃんに言われるとなんかヤダー。」






宇「まぁまぁ。たしかにそれは私も同感だけどね。」





日「宇野、なんか言った?」




宇「べつにぃー。」





西「ほら、千晃はこれやって。」





宇「秀太!今も人手足りない??」





秀「うーん、そうだね……。」





宇「じゃあ、私入るから千晃、日高くんと買い出し行ってくれない?」





千「いいよー!!」





西「えー、結局いつも俺は1人。」





直「俺が手伝ってやるよ。」





西「直也くんっ!!」





日「直也くんは車運転するの!!」





直「あ、そっかそっか。」





西「──────もういいもん。いってらっしゃーい。」








やっぱり日常を運んできてくれるのはこいつらだった。
































──────それなのに。