真司郎side
実彩子たちが教室に向かっても俺はそこから立ち去ることが出来んかった。
それは直也くんも同じ。
「どういうことだよ……これ……。」
「こんなことする意味、どこにあんねん。こんなことしても実彩子も俺らも何も変わらん。」
「──────與。」
「ん?」
「お前に話したいことがある。」
「……でも、始業時間……。」
「どうせ與のクラスの1時間目俺だろ?
それにこんなことがあったら、西島も宇野も事情聴取だ。
そのクラスも1時間目は自習になるだろ。」
その言葉通り生徒の騒ぎを聞きつけた教師がぞろぞろと出てきた。
「分かった。その代わり日高も呼ぶ。それでもええ?」
「うん。日高と第1会議室来てくれ。」
騒々しくなる教師たちと入れ替えに俺は日高の教室に急いで向かった。
日高side
教室まで来たものの、興味本位で西島と宇野を見に来る生徒があとをたたない。
平然としてるように見える宇野だけど、顔を見れば分かる。
顔色も悪いし、一番戸惑ってるのは宇野自身。
誰がやったかも分からない今、なんでこのタイミングなのか、分からないことが多すぎる。
「日高!!」
そんな中、2Aの教室に駆け込んできたのは真司郎だった。
日「どうした、真司郎。」
真「ちょっと来て欲しいねん。」
分かった、すぐ行く、
そう言おうとした俺の言葉は──────
宇「なに??」
宇野の言葉で消された。
真「実彩子?」
いつもより強い口調の宇野に真司郎も戸惑ってる。
宇「私だけ知らないのはもう嫌なの……。」
千「でも、宇野ちゃん顔色悪い。休んだ方が……!」
宇「休むなんて出来るわけないでしょ?!」
千「…………宇野ちゃん……。」
叫びに近い宇野の声にその場の誰もが黙った。
宇「……ごめん。千晃。」
千「ううん。」
宇「もう、どうしたらいいか、私も分かんなくて……。…」
顔は真っ白だし、息遣いも苦しそう。
そんな宇野をこのままにしとくわけにはいかない。
日「宇野。」
西「日高。」
日「…………西島?」
西「宇野は俺は連れてくから。」
クラスではなかなか見せない西島のマジな顔にクラスが息を飲んで見てる。
日「……分かった。」
西「宇野ちゃん、保健室行こう。話を聞くのは休んでからでも遅くない。」
意識はあるけど、見るからに苦しそうな宇野を西島が支えて教室を出た。
さすがに宇野も抵抗はしなかった。
「日高。」
ドアの手前で振り返った西島が俺を呼んだ。
「話の方、頼んだ。」
「…………おう。」
真「日高、早く行くで!!」
真司郎の声に、宇野と西島の背中を見ていた俺も教室を飛び出し、真司郎を追いかけた。
宇野のことで頭がいっぱいで秀太と千晃に声をかけることすら出来なかったことにも気づかずに。