秀太side
「……宇野ちゃん、大丈夫かな。」
千晃は宇野ちゃんの言葉に傷つくかと思ったが、そこまで追い込まれてると冷静に考えられたみたいで、さらに宇野ちゃんのことを心配していた。
「ねぇ、真司郎の話ってなんだろうね。」
そして、千晃は……
寂しそうな顔をしていた。
「秀太。」
「うん?」
「私たちは……何も出来ないの?」
日高と真司郎は宇野ちゃんの事件のことを知っていたし、多分直也くんも2人に協力してる。
西島は宇野ちゃんと同じ立場だ。
一番状況を理解できる。
つまり、何も知らなかったのは俺らだけだった。
千「宇野ちゃんとは中学からの親友で……宇野ちゃんのことなら何でも知ってると思ってた……。」
秀「宇野ちゃんもついこないだ知ったんだ。千晃が知ることなんて日高が話さない限り無理。事件を知らなかったことで自分を責めるのは間違ってる。」
千「そうだけど……。」
秀「それに。俺らには俺らなりに出来ることがあるんじゃないか?」
千「……え?」
秀「みんなそれぞれ動いてる。ここに残った俺らが出来ることあるだろ?」
俺は、”残された俺ら”を遠巻きに見つめる人たちを見た。
宇野side
「──────あれ……。」
にっしーに支えられて保健室に来てベットに横になっていたら、いつの間にか眠ってしまったみたい……
保健室は静かだった。
時計を見ると既に10時。
2時間近く眠ってしまっていたみたい。
ふと右側に気配を感じて見てみると、にっしーも眠ってしまっていた。
自分の衝撃的な過去を知ってから色んなことが起こりすぎてて、自分を見失ってしまった。
千晃にも酷いことを言っちゃったな……。
なんで、私が事件を知ったタイミングでこんなことがおこったの……?
分からないことが多すぎて、疑問が頭の中をグルグルと回る。
「……宇野ちゃん?」
呼ばれた方を振り返るとにっしーが目を覚ましていた。
「……ごめん、俺まで寝ちゃった。笑」
そう言って笑うにっしーだけど、ふとあることを思った。
「にっしー、授業は?」
「あー、先生たちが対応に追われてて1時間目は全クラス自習。」
「でも、もう2時間目始まってるよ?」
「宇野ちゃん。」
「うん?」
「俺らは当事者。真っ先に事情を聞かれる人間。」
「あっ、そっか……。」
どの先生も私たちに聞きたいことが沢山あるはず。
もしかしたら、校長直々に話を聞きに来てもおかしくない。
のに……
「にっしーはもう話、したの?」
「ううん。」
「どうして?」
「宇野ちゃんいないと話せないし。それに、宇野ちゃん1人にしたくなかったから。」
「にっしー……ごめんね。」
「なーんで宇野ちゃんが謝るの!ま、とりあえず、全部話すことになるけど、俺がなるべく話すから、いい?」
少し前の私だったら、
それでいいと言ったと思う。
でも、今は違う。
「──────ううん。」
「え?」
「ちゃんと自分で話す。自分で話せる所は。無理なところはにっしーがフォローして?」
今の私はもう弱くない……はず。
「……分かった。」
「宇野さん?」
カーテンからこっそり顔を出したのは保健室の先生。
「先生。もう大丈夫です。」
「よかった。申し訳ないんだけど……先生方が2人に話が聞きたいって。」
「分かりました、すぐ行きます。」
にっしーと頷きあってから私は布団から出た。