”宇野実彩子” ”西島隆弘”
この名前にたどり着くのに1年かかったわ。
なんせキーワードが少なかったから。
東京での未解決誘拐事件なんて山ほどある。
男を見つけ出して、足取りを追った。
男が東京のどこに住んでいたのか
その時期になにか事件が起きなかったか
被害者は誰か
正直全てを調べ終わって、明らかにして、どうするんだって話だけど……
どうしても全てを知りたかったのよ。
自己中とでもなんとでも言ってもらって構わないわ。
でも、場合によっては時効が過ぎてなくて通報することも可能だって、事件を解決できるかもしれない、そう思ったのも事実よ。
そして、当時住んでた場所の近所の人に聞いたわ。
9年前、
この場所に住んでいた宇野実彩子、西島隆弘という子が誘拐事件に巻き込まれた、
犯人はまだ捕まってない。
2人は事件後直ぐに引っ越したからどこにいるか分からない、
と。
そこで少し不安になったの。
東京で事件を起こした男が東京からそんなに離れてない鎌倉に住んでる理由は?
男は事件後しばらくは九州に住んでたことは分かってた。
でも、最近になって鎌倉に引っ越してたの。
これって偶然だと思う?
もしかしたら、同じ地区に住んでるかもしれない……
そこまでいったら、ただの偶然とは言いきれない。
もしかしたら、事件はまだ終わってないのかもしれない……
父と男が言い合ってた場所を中心に2人を探したわ。
交友関係も兄弟関係も……
従兄弟の與真司郎
事件当時からの友達の日高光啓
中学からの友達の伊藤千晃、末吉秀太
そして、担任の浦田直也
そして、やっと見つけたの。
男が住んでる所とそう離れてない場所に。
2人を。
與くんに否定された時はビックリしたけど、そうりゃあそうよね。
私なんて怪しさの塊だったもの。
分かった?
これが私とあなた達が今、会ってる理由、よ。
私は男のこと、怪しいと思ってる。
そんな偶然あるわけないじゃない。
しかも、最近、みなさんの周りで変なことが起きてるらしいじゃない。
絶対におかしい。
1度こうして話してみたいと思ってたから丁度良かったわ。
気をつけた方が良い。
特に宇野実彩子さんは。
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日高side
まさかそういう展開になるとは思ってなくて、自分の心臓の鼓動が速くなってるのが分かる。
もしかしたら9年前の事件は終わってないのかもしれない。
9年経った今、
宇野が事件を思い出した今、
同じことを繰り返すわけにはいかない。
日「もうすぐ……文化祭だよな。」
涼「文化祭は一般の人も入れる絶好のチャンスよ。宇野さんは出ない方がいいわ。」
直「でも、高校生活最後のイベントですよ……。」
真「そうやけど、実彩子の安全が第一やろ。」
日「いや……。」
宇野には苦しい思いはしてほしくない。
いろんな意味で。
日「このことを西島と秀太に話す。」
真「秀太??」
日「千晃のことも知ってる可能性があるだろ。千晃をダシにされるかもしれない。そんなこと、させてたまるか。」
直「そうだな、末吉にも話した方が良い。」
日「宇野には……
ちゃんと思い出作って欲しいんだよ。
事件のせいで普通に思い出も作れないなんておかしいだろ。
宇野には俺も西島もつく。
秀太は千晃に付いててもらう。」
真「信じてるからな、日高。」
日「あぁ。」
もう何も出来なかった子供じゃない。
守りたい存在をちゃんと守れる人間になれたはずだ。
日「男の名前と住所を教えてください。」
涼「あなたの幼なじみを苦しめた相手なのよ?大丈夫?」
直「日高は……大丈夫です。教えてください。」
涼「分かったわ。」