秀太side
「…………マジで言ってる?」
文化祭2日前、もしかしたら事件はまだ終わってないかもしれないなんていう衝撃的な事実を知らされた俺はそれをすぐに受け入れることが出来なかった。
すぐそこを見ると千晃と宇野ちゃんが笑い合ってて、その2人の笑顔が奪われるかもしれない……そう思うと不安でいっぱいになる。
日「マジだ。」
日高の目はこれ以上なくマジだった。
秀「え、でも文化祭乗り越えたとして、どうするんだよ。
俺らがずっと付いてることが出来るわけじゃない。
なのに、犯人の方はいつ来るか分かんない……。
宇野ちゃんは一生恐怖に怯えながら生きなきゃいけないのか?」
俺だったら、そんな人生、心底嫌になる。
日「それは俺らも思った。
だから、それも踏まえて直也くんと俺と真司郎でこれから北坂さんから聞いた男のところへ行く。」
秀「男のところに行く??お前らが大丈夫なのかよ?」
9年も経ってるとはいえ、自分が起こした事件の関係者が来て、いい気がするやつはいないだろう。
真「当たり前やろ。
俺も日高も体は鍛えとるしな。なんかあったら直也くんもついでに守るくらいの勢いで行ったるわ。
何があっても手触れさせんから。
秀太は千晃のこと、見ててやってな。」
真司郎は一つ下とは思えない程かっこよかった。
真司郎がそこまで言ってる……
秀「……分かった。千晃のことは俺に任せて。大丈夫だから。」
2人は一人の人間を守る男の顔をしていた。
恋愛感情だけじゃなくて、2人にとって宇野ちゃんは無くてはならない存在で、守り抜きたい存在だから。
俺は俺なりに千晃を守り抜く。
日高side
真「ここ……やな。」
放課後の文化祭準備を抜け出した俺らはあるアパートの1階に来ていた。
男の住所はそこだった。
直「行くぞ。」
直也くんがインターフォンに手をかける。
ピンポーン…… ピンポーン……
日「反応、無いな。」
真「留守なんかな?」
真司郎がドアノブを回してみると……
真「開いたんやけど……。」
なんとその扉は開いていた。
直「すいません……!」
そーっとドアを開けて中をのぞき込む直也くん。
直「……え?」
日「直也くん……?」
────────────あの……。
真「うわっ!なんや、ビックリさせんといて!!」
いきなり俺らの背後から現われたのは一人の若い男性。
日「どちら様……?」
「不動産屋のものです、そこの。」
直「もしかしてここに住んでる人って……」
「引っ越されましたよ、昨日。」
真「引っ越した?!」
俺は慌てて直也くんの後ろから部屋の中を見ると、そこには人の気配も物も何も無かった。
直「あの、どこに引っ越したとか分かりませんか?」
「いや……そこまでは……あ。」
日「なんですか?」
「やりたいことが出来たから東京に住むって……」
真「やりたいこと……?」
日「東京ってことは……」
直「……良かったんだよな、これで。」
俺も真司郎も直也くんも意気込んでた割の呆気ない解決に力が抜けてしゃがみこみそうだった。
直「末吉と西島に知らせてあげて。俺は……北坂さんに会ってくる。」
日「……分かった。」
俺は学校に向かって歩き出す。
とりあえずこれで一安心、だよな。
そう思っていいんだよな?