千晃side











「秀太ー!!この位置で大丈夫ー?!」







「おっけー!!」











秀ちゃんと外装に回った私たちは無事に看板を作り上げて、掲げることができた。











千「できたねぇ。」







秀「できたな。」

















───────────秀太!!千晃!!














思いっきり誰かに呼ばれて、声の方を振り向くと焦った顔をしただっちゃんが走ってくる。













「宇野……宇野知らねぇ?! 」











だっちゃんは明らかに動揺してて焦ってる。












「ちょ、日高、落ち着けよ。宇野ちゃんなら来てないぞ。」












「…………俺のせいだ。」











「……だっちゃん?」









だっちゃんの初めて見るような目に急に不安に襲われた。












「宇野が……













いなくなった。」


















──────え?













秀「……どういう事だ、日高。」










日「宇野の知り合いとかいうおじさんが来て……




俺が2人っきりにしたんだ。




それから宇野がいない。




連絡しても出ない。




俺が……






俺が離れたりするからっ!!」












秀「落ち着け、日高っ!!」











クラスのみんなも滅多に声を荒らげたりしない2人が言い合ってるのを見て、不安になってる。











千「宇野ちゃん、どこに行っちゃったの……?」











でも、今、1番不安なのは宇野ちゃんかもしれない……。











日「俺、探してくる。」












あれ……?













秀「日高、待てって!!やみくもに探したって見つかるわけねぇだろ!!」











私……












日「だったら、どうしろって言うんだよ!!」











もしかして……












秀「西島たちには言ったのか?」









宇野ちゃんの……










日「そのままこっち来たから言ってない……。」








居場所……








分かるかもしれない。










秀「みんなに話すんだ。それから宇野ちゃんのこと、探そう。」












千「──────っ待って!!!」












にっしーたちのいる家庭科室に向かおうとしていた秀太とだっちゃんの背中に向かって思いっきり呼び止めた。










秀「千晃?」








千「私……





宇野ちゃんの居場所分かるかもしれない。」









日「……え?」





















西島side








「──────っ。」







日高に怒りをぶつけたい気持ちもある。








何やってんだよ、お前がついてたんじゃねぇのかよ!!







って。







でも、俺がその場にいなくて、何も出来なかったのも事実。






きっと真司郎も同じ気持ちだ。





それに宇野ちゃん自身から知り合いだと聞いたら俺も日高と同じことをするだろう。










直「それで、千晃、どういうこと?」












誰よりも真っ先に冷静になったのは直也くんだった。











千「だっちゃんとにっしーがやってたお互いがGPSを登録するアプリ。



私と宇野ちゃんも交換したの!!」










真「ホンマなん?!」










千「幸い、まだケータイ見つかってないみたい。でも……」








秀「日高が西島たちに話してるときからずっと見てるけど動いてる。つまり、車に乗せられてる可能性がデカイな……。」








千「宇野ちゃん……。」











今にも泣きそうな顔をしてる千晃。



それでも、涙を流さないのは千晃の強さ。











秀「しかも、東京に向かってる。」






西「……は?」










男の話は日高から全て聞いた。



つい引っ越したばかりだったというのも、引越し先が東京であるかもしれないことも。











日「直也くん、頼む!!

俺たちを行かせてほしい。」









直「日高……。」











周りは文化祭準備真っ最中。



教師が生徒の外出を認めるのは普通有り得ない。










西「お願いします。」










直「……千晃はここにいろ。」












千「どうして?!」







直「お前まで危ない目にあわせられないだろ。」







千「私、今回は直也くんに何を言われようと行くから。絶対。」







直「千晃!」







秀「浦田先生。」






直「末吉?」








秀「千晃には何もさせませんから。だから、俺ら5人、行かせてください!」










秀太にならってみんなで頭を下げる。



















「わかっ…………」












──────駄目です。




























西「西村先生……。」












駄目だ、と言ったのは直也くんではなく間違いなく西村先生だった。












日「西村先生。今回ばかりは先生のおっしゃることは聞けません。」










千「お願いします。行かせてください。」







長い間黙ったあと、西村先生が出した答えは意外なものだった。























「私も行きます。」


















千「……えっ?」










「これでも柔道初段よ。それに女性もいた方がいいでしょ。伊藤さんだけだと心配ですからね。」











直「西村先生……。」











真「ありがとうございます!!」




超えがたい壁だったものが逆に俺らを守ってくれる、味方になってくれる壁になった。








9年前、





一緒にいながら何も出来なかったのも俺と、





幼さゆえになにも出来なかった日高と真司郎。






そして、




親友の親が関わっている上に教え子がどういう状況かも分からない不安でいっぱいいっぱいのはずの直也くん。







必死に友を救いたいと願う秀太と千晃。







誰もがもう何も出来ない子供じゃない。






自分の手で大切な人を守れる。