日高side









「きゃーっ!!!!」








悲鳴が聞こえて思わず秀太と顔を見合わせる。









この声は…………











秀「…………千晃?!」









間違いなく千晃だ……。










日「入るぞ!?」










部屋に中に入ると壮絶な光景が広がっていた。






バットを振り上げている男。








そして、それを必死に受け止めている西村先生。








床に座り込み、動けなくなってる千晃。










なんでここにあいつが…………













日「にっしま、宇野頼んだ!!」









宇野を西島に、千晃を秀太に任せて俺は西村先生の助けに回った。








秀太が千晃を抱えて隅に移動させたのを見た西村先生は……









「日高くん。1本キメるからどいた方がいいわよ……!」








「分かりました……!」









出来るだけ先生の負担を軽くしてから先生に託す。










「あんたねぇ、女に手上げてんじゃないわよっ!!」










その勢いのまま先生が1本をキメる…………









はずだった。












男はさっきとは別人のように綺麗に受け身を取ったのだ。










バットは奪えたものの、男は飄々としている。










「オバサンの1本に2回もキメられる程、鈍くねぇよ!!」










「…………!?」











まさかの展開に西村先生も焦ってる。








そして……








男はまさかの行動に出た。










男がポケットから出したのは……











光に照らされ光るナイフ。










「友香里。お兄ちゃんと一緒に帰ろう。な?こいつらはお兄ちゃんが倒してあげるから。」








そのまま宇野のいる場所に近づいてくる。









「いやっ…………。」









そんな宇野の声は男の耳には入らない。






出口は2つ。






1つは男の後ろ側にあるから無理だ。






となると、もう1つは俺らが入ってきた扉。







しかし、そこまでは何気に距離がある。







しかも恐怖で足がすくんでる宇野は1人では動けない。







西島が抱えて行くとなるとスピードも落ちる。







女性である西村先生を傷つけるわけにいかない。








俺がなんとかここで止めないと…………!












「にっしま!!宇野連れて行け!!」








「日高……。」








「西島!!」











そう言ってる間にも男は距離を縮めてくる。







男の目はもう宇野しか捉えてない。









狂ってる、としか言いようがなかった。











「分かった……。」









顔面蒼白になってる宇野を西島が抱えた瞬間、男の顔が1段と険しくなった。









「なにやってんだよ……。友香里、いやがってんじゃねぇかよっ?!」










日「嫌がってるのはお前の事だよ!!




彼女はお前の妹じゃない。



辛いのは分かる!でも!




宇野のこと、妹のように思ってるんなら、分かるだろ?!




彼女が恐怖の目を向けてるのはお前なんだよ!




彼女は……宇野実彩子だ!!




桂城友香里じゃない!!」











────────ハァハァ……









男は完全に狼狽えてる。












────今だ。











「西島、行け!」








「うわぁー!!!」









西島が扉に向かって走り出すのと男が宇野と西島に向かって行くのはほぼ同時だった。










怖くない、と言ったら嘘になる。







さっきから手が震えて止まらない。







でも、逃げるわけにはいかないんだ。







逃げたくないんだ。








自分ために。



















秀太side









震える千晃を抱きしめる。







男の目には俺らは全く写っていない。











「……私のせいだ……!」







「千晃……?」







「私が扉を開けなければ……。」










そんなこと、ない。







「大丈夫。みんな無事に帰れる。笑ってられる日常に帰ろう。」









俺だってもどかしい……。





だからこそ、今は腹を括っていた。









「千晃、ここ動くなよ。」






「秀太……?」














日「西島、行け!!」









その言葉と同時に襲いかかってきた男に向かっていく日高に俺も加勢する。











「秀太……!」







「2人居た方がいいだろ!!」









日高は少し笑ったあと、すぐに真剣な顔に戻った。








ナイフさえ、持ってなければもっと動けるのに、ナイフのせいであまり動けない。









「1回押し返すぞ。」







日高の小さな声に頷いて2人で男を押し返す。







もう男は無茶苦茶にナイフを振り回し始めた。









「秀太……。このまま耐えられると思うか?」







「警察ってどれくらい時間かかんだろうな。」







「その前に直也くんが来てくれると心強いんだけど。」








「確かに。」







「…………秀太。千晃と西村先生連れて出て。」







「いや、でも、日高……。」







「だけど、速攻で戻ってこいよ。」










日高はこっちを向いてないけど、強い思いは十分伝わった。










「…………分かった。」









ゆっくり千晃の元へ戻る。









「西村先生も行きましょう。」






「日高くん、1人にする訳にいかないでしょ。」






「大丈夫です。日高は不死身ですから。」





「…………。」






そう言って頷くと、先生も理解してくれた。






千晃を抱えて、西村先生を支えながら、部屋を出ようとした時……











「直也くん、真司郎!」








直也くんと真司郎がやっと来てくれた。








直「遅くなって悪い。」







真「にっしーが連絡くれたんや。」



















その声は日高にも届いたみたい。










「直也くん、遅い!!」








「悪い…………












日高!!」
























































「────痛って…………」












男が振り下ろしたナイフを止められる人は誰もいなかった……。