千晃side
「大丈夫かな……宇野ちゃん……。」
辛いときは誰かにそばにいて欲しい。
慰めて欲しい。
大丈夫だよって抱きしめて欲しい。
でも、前を向くときはいつも隣にいる人にいつものように隣で笑ってほしい。
それを見た時こそ、日常に帰ってこれた気がするから。
実際、私も昨日、宇野ちゃんたちと別れて秀太と帰るってなった瞬間、張り詰めていた糸が切れたように涙が止まらなくなった。
私が泣いちゃいけない……
その何倍も辛い思いを、怖い思いを宇野ちゃんはしたんだから……
私が支えないと……
そう心のどこかで思ってて、私自身の感情にブレーキをかけていたのかもしれない。
道路に座り込んで声まで上げて泣き出してしまった私を、通りすがりの人に変な目で見られても秀太は何も言わずただ抱きしめて、そばにいてくれた。
そして、別れ際秀太は笑顔でこう言った。
「明日、文化祭なんだから、その目冷やしとけよ。腫れ上がったら恥ずかしいだろ?
あ、あと寝坊はすんなよ?
じゃあ、また明日な 。おやすみ。」
いつものようにエクボを作った笑顔で言ってくれた。
だからこそ、私は今日休まずにここにいられる。
宇野ちゃんにとって、きっとだっちゃんは日常で、日常を運んできてくれる大切な存在だと思う。
宇野ちゃんやだっちゃん、にっしーの思いは私には分からない。
ただみんなが笑っていられればそれでいい。
3人の関係がどう変わっても私たちは変わらないはずだから。
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秀「千晃、心配しすぎ。日高が行ったんだから大丈夫だろ。」
秀太の言葉に我に返った。
千「……うん。そうだよね。」
真「日高に連れきてもらわな困る。俺が無理やり連れてきても良かったのに、日高に譲ってあげたんやから。」
直「ただ與さんは宇野ちゃんを連れてくる自信がなかったんじゃないのー?」
真「直也くん、うるさい。」
秀「図星やん。」
宇野ちゃん、ここに来ればあったかいよ。
寂しくなんて全然ない。
千「来てさえくれれば、宇野ちゃんの記憶、塗り替えてあげればいいんだよね。楽しい思い出に。」
西「日高なら大丈夫。絶対に。」
にっしーの目は強い想いが宿ってるような気がした。
「あっ…………。」
「宇野ちゃん…………。」
そう言う誰かの声が聞こえて校門の方を見ると日高くんに背中を押される宇野ちゃんが見えた。
西「ほら、ね。」
3人の中には私には分からない強い絆があるのかもしれない。
宇野ちゃんは私が日高くんに託したクラスTシャツを着て、少しずつこっちに向かって歩いてくる。
それを急かすわけでもなく、だっちゃんは同じペースで隣を歩いていた。
駆け出して抱きしめたい想いを抑える。
1歩……また1歩…………。
「宇野ちゃん……おはよう。」
宇野ちゃんの目をまっすぐ見て毎朝言う言葉を口にする。
「千晃…………。おはよう。」
秀「おは。」
真「おはようさん。」
直「おはよ!」
西「おはよう。」
「おはよう、みんな。」
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「ほら、早く支度しないと文化祭始まっちゃう!!」
「うわっ、ホントだ!やばい!!」
催促するクラスメイトの声でみんなが一斉に動き出す。
直「2年A組、売上トップ目指して頑張るぞ〜!!!」
「「おー!!」」