真司郎side










「ねぇ、與、もうちょっと愛想よくできない?ほら、笑って!!」








だったら、裏方やらしてくれればいいのに、何故か受付をやらされてる俺は、さっきから同じことをクラスメイトに何度言われたんやろ。








「俺的には愛想よくしてるつもりなんやけど。」








「いや、小さい子が来たときくらいの笑顔を平等に、全員に!!」








「それは無理や。」









「なんでぇー!?」










ただでも色んなことが解決して、実彩子たちといっぱい楽しみたいのに、実彩子のフリーと俺のシフトは丸かぶり。








もちろんクラスの奴らとおることは本当に楽しいんやけど…………












「與、お前な、先輩たちはあと1年したらいなくなんだぞ?少し先輩離れしといた方がいいぞ?」





ご最も、やけど……







「…………余計なお世話や。」









「はいはい。」










その余計なお世話をやいてきた奴となんだかんだで繁盛してるクラスの受付をやってたら、思ってもみない来客があった。














「……すいません、宇野実彩子さんのお宅ですか?」









「は……?あっ……。」









「久しぶり。與真司郎くん。」






そう言って笑う女性。









「北坂涼……さん。」











そして、その後ろには……












「こんにちは、與くん。」








「北坂校長……。」








少し気まずそうな顔をした北坂校長もいた。














「悪い、花村、ちょっと任せた。」








「えっ!ちょっ!與?!」









慌てふためくクラスメイトを置いて教室から少し離れた。











真「一緒に……来たんですね。」







こうやって見るとどことなく似てる気がする。








涼「……えぇ。」








北「今回のことで少し話がしたくてね……。與くん……私の知り合いが、本当に申し訳ないことをした。」








そう言って頭を下げる北坂さん。









涼「浦田先生から……全部聞いたの。宇野さん、大丈夫?」










真「実彩子なら……大丈夫です。実彩子には日高やにっしーが付いてますから。









それに…………」










北「それに?」










真「謝るんやったら、俺にやないし、実彩子も北坂校長に謝ってもらいたくはないと思います。」










正直、黒い感情が何も無い、と言ったら嘘になる。






けど、桂城さんの親友に謝ってもらってもこっちに罪悪感が生まれるだけや。







それに、北坂校長が直也くんに話したことは事件を解決するパーツでもあった。










真「直也くんに会いに行きますよね?多分直也くんのことやからクラスのとこにいると思いますけど。」










北「直也くんは本当にいい生徒を持ったね……。」







涼「私も同感。」








真「ん?なんて?」








北「いや、何でもないよ。2年A組だったね。」








真「俺、案内しますよ?」









涼「でも、向こうで友達が戻ってこいーって顔してるけど……?」








教室の方を見ると確かにチラチラと俺の方を向いてる一人の男。












真「ちょっと待ってて下さい。」










急いで花村の元へ向かう……









「────────────。」









「よっしゃ!!與戻ってくるまで俺ひとりで捌いたる!!」









……これでよし。










真「じゃ、こっちです。」









涼「なんて言ったらあんな変わるの……?」








すごいスピードで的確にこなしていく花村。








真「いや、なんも……。」












なんて言ったかは……まぁ言わへんけどな。








ただあいつの好きなもん、ってとこ。









「────あ、やっぱり焼きそば作ってる。笑」












外に行って見てみると予想どおり直也くんがヘラを持って豪快に焼きそばを作ってる。









その横では直也くんの指示に動き回る日高。










隣では秀太が同じように腕をふるっていて、受付ではにっしーが、笑顔で対応していた。











西「ありがとうございました!


…………北坂さん!」











1番最初に反応したのはにっしー。










西「直也くん!!北坂さん!!」









直「……ん?






……あっ!涼さんまで!」










北「與くんが連れて来てくれてね。」








日「直也くん、代わるよ。」








日高が直也くんが持っていたヘラを受け取る。









直「ありがとな、日高。真司郎も。」










後は宜しくな、そう思いながら、俺は急いでクラスのもとへ走った。




















直也side










直「嬉しいです。来ていただけるなんて。」









北「1度、ちゃんと話をしておきたくてね。與くんとも、西島くんとも、日高くんとも……宇野さんとも。」











直「桂城さんには……会われれたんですか?」









北「いや、拒否されたよ。あいつも合わせる顔が無いんだろうな。」








北坂さんはやはりどこか苦しそうで。










北「さっき、與くんに謝ったんだ。申し訳ないって。」









直「與は……?」








北「謝るんであれば相手が違うし、それに私が謝ることではないってきっぱり言われたよ。」






────やっぱり。








直「あいつはそういう奴ですからね。」









北「謝ることで自分の罪悪感を少しでも薄くすることしか考えてなかったのかもしれない、って気付かされたよ。」










涼「浦田先生、本当にいい生徒を持ったわね。親友がこんなに立派な先生になったら朋也も妬いちゃうんじゃない?」









直「そんなことないですよ。まだまだです。それにきっと北坂さんと涼さんが仲良くしてる方が朋也は妬くんじゃないですか?」











北坂さんと涼さんが一緒に現れた時は正直、びっくりしたけど、同時に嬉しくもあった。












涼「今度……朋也に一緒に会いに行くことにしたの。九州の方にね。」










北「今回のこともあって……全てを妻に話してね。涼のことも受け入れてくれた。」









直「そうですか……喜びますよ、朋也。」












朋也、まさかこんなことになるなんて思ってもみなかっただろ。





絶対、朋也は喜んでる。











北「直也くんもいつでも行ってあげて。今度来る時はウチに泊めるから。」








直「ありがとうございます。」











事件は笑顔を奪うものではあったけど、笑顔を、温かさを、与えてくれたものでもあったのかもしれない。










直「宇野に……会っていきますか?」










北「最初はそのつもりで来たけど……。やめておくよ。宇野さんが願っていることじゃないし、楽しい想い出を中断させたくもないからね。」










直「分かりました。」










今後、宇野ちゃんと北坂さんが会う機会があるかどうかは分からない。








でもお互いの心の中でお互いの存在はあってその存在も自分の人生の一部になっていると思う。








そして、別れ際に北坂さんが言った









「直也くん、ありがとう。」









の言葉が俺の心を包んだ。




















「直也くーん!来て!!」









「はいはい!!」











俺の教師生活も始まったばっかり。









見てろよ、朋也。








お前が悔しがるぐらい良い教師になってやるから。









周りがなんと言おうと俺は俺の信念を突き進むから。