宇野side









秀「やっぱノブさんのうまい!!」





直「染みるよな……。」






西「うん、うん……」









久しぶりに日高屋で打ち上げをしようという話になってクラスのほとんどが日高屋に集合していた。








打ち上げがラーメン屋さんってなかなか無いけど、日高くんママはメニューにない料理も作ってくれたり、買っといてくれたりする。
(もちろんそれも込みで料金だけどね。)








秀「はぁー、マジ充実してたな……2日目。」





真「明後日から普通に授業なんて無理や。」





直「ねぇ、なんでいるの?」






千「腹いせに今日はいっぱい食べて直也くんに払わせちゃえ!!」






直「ちょっと、伊藤さん?!」





日「それは賛成!!ほら、よくあるじゃん。ぽん、っておいて釣りはいらない、って。」






直「日高……?」






日「嘘です……。」






千「だっちゃん、直也くんに弱いー。」






真「ホンマや、もっとびしっとしい!」







直「ってかなんでいるの?」






秀「……だって同じ……クラスじゃないな。」






直「お前、学年も違うだろ!!」






真「ええやん、別に。」





直「與の分は払わないからな。」





日「與の分は払わない……?」





秀「ってことは……?!」





西「2Aの分は払ってくれる!!」









「「いえーい!!」」









文化祭後の興奮が冷めなくて、みんないつもよりテンションが高い。















「本当に楽しかったね。」







賑やかさのなか少し離れたところにいた私の元へ千晃が来てくれた。








「うん……来てよかった。」






「宇野ちゃんが笑顔になれたなら良かった。」






「千晃……。」







私、千晃にちゃんと言えてない気がする。









「千晃、ありがとう。」






「え?」








「千晃だって恐怖と不安でいっぱいなはずなのに涙ひとつ流さないでそばにいてくれた。
本当にありがとう。」









あー、これだ。





私が千晃に言いたかったこと。








「宇野ちゃん……。」









涙目になる千晃に心から温かくなって自然に笑顔がもれた。











「宇野ちゃん!!」


















真「千晃が実彩子にチューしようとしたぁー。」







日「おい、秀太。もしかしたら千晃、宇野に取られるかもしれないぞ?!」







秀「若干その心配はしてる。」







西「西子もその中に入りたいなぁ。」







直「最近、そのキャラお気に入り?笑」














千「もぉー、みさちあタイム邪魔された。」







直「まぁまぁ。」






秀「しょうがないよ、すごい良い一日だったから。」





西「terrificだ!」






真「なんで急に英語なん?」







日「それこないだ単語テストに出たやつだからだろ。」









真「なんやそういうことか。急に、にっしーが英語できるようになったんかと思った。」








西「宇野ちゃんはterrific、宇野ちゃんとの日々もterrific!」










にっしーはふざけるように言ってるけど、本心だっていうのは目を見れば分かったよ?







「はい、これはうちからの無事文化祭終了のお祝い!!」






「うわーすごーい!!」




「ヤバいよ、これ!」









日高くんのお母さんがケーキを持ってきてくれてまた盛り上がる。







「すごいよ、宇野ちゃん!行こ!!」







私も千晃の手に引かれて喧騒の中に入る。






そこはすごく心地が良かった。

















────────────





文化祭が終わって1週間後、直也くんが警察と話をつけてくれておじさん……桂城さんに会えることになった。








にっしーと直也くんと病院まで行く。









病室にはにっしーと2人で行くことになってた。










「西島、よろしくな。」





「うん。」







「宇野ちゃんも、無理しないでよ?」






「大丈夫。」








直也くんに見送られてにっしーと2人、病室へ向かった。












────────コンコン








病室の前に立っていた警察官が扉をノックする。








「…………はい。」








中から聞こえてきた声はまだ小さく弱く感じた。








「失礼します……。」









中に入ると肩を包帯に巻かれた桂城さん。










「……おじさん……。」








桂城さんは何かを決意したような目で私から目を離さなかった。









「宇野ちゃん、座ろう。」









にっしーに促されて椅子に座る。







しばらく続いた沈黙を破ったのは……



桂城さん。









「本当に……申し訳……ありませんでした……。」








それだけ、ポツリポツリと発した。







私の知っていたおじさんとはかけ離れた姿にどうしていいか分からない。







未だに9年前の犯人がおじさんだと思いたくない自分がどこかにいる。









「私が……君たちを誘拐し、監禁した犯人。そして……息子に同じ過ちをさせた。」










私に事実を教え込むようにゆっくり話す。







直也くんによると息子さんは完全に心を持ってかれていて、普通に話せる状況じゃないらしい。









「私の中で……おじさんは……


私を見守ってくれる、応援してくれるそんな存在でした。




でも、9年前の犯人は……

私やにっしーを思い通りにしようとした。思い通りにならなければ厳しくした。



正直、1度記憶を失ってる私は完全に全てを思い出したわけじゃない。


でも、思い出せるものもあって……


それは恐怖だったり、不安だったり。





今と9年前、私の桂城さんへの思いはまったく違う……。」








だからこそ、恨みきれない自分がいるんだ。












「恨む気持ちが全くないわけじゃないんです……。




でも……





日高くんや真司郎のこと守ってくれたから。


自分の身をかけてでも守ってくれたから。

ありがとうございました。」









そう、頭を下げた。






顔を上げたとき、桂城さんも、にっしーも驚いた顔をしてたけど、私の心は少し軽くなった気がした。









「私が言いたかったのはそれだけです。」







少しでもその場にいたらいろんな感情が込めあげてきて泣きそうだから、悪いと思いながらもにっしーをその場において病室を出た。













西島side








宇野ちゃんが出てった病室に残された俺と桂城さん、2人。








「西島くん……。」






「はい……。」




「君も本当に申し訳ない。関係の無い君を巻き込んでしまった。」






「俺は宇野ちゃんのように記憶を失ってなかったから、この9年間、何かある事に宇野ちゃんを、事件を思い出してた……。



宇野ちゃんより恨みは強いと思うんです。




だから思いっきり色々言うつもりで来たんです。







でも………………







自分の仲間を守ってくれた桂城さんに頭を下げた宇野ちゃんを見て気持ちが変わりました。







何も言うことはありません。








お大事に。失礼します。」










きっとこれから一生会うことはないと思う。








それでもこれで良かった。








宇野ちゃんを同じ目に合わせてしまった悔しさはもちろんある。







でも、宇野ちゃんのおかげで9年間に片がつきそうだ。







本当にあんなに強く、美しい女性は見たいことない、心からそう思う。