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翌日早朝から2週間に及ぶ外遊へと出発した。

まずは同盟国の「麦国」であった。

麦国大統領チャランポランは前総理安倍川と親密な関係を築いていた。

それは外交、特にちゃう国と直接対決しなければならない我が国にとって重要なファクターである。

これを手放す訳にはいかない。

会談が始まった途端にナオは満面の笑みでチャランポラン大統領に最大の敬意を表し、これまでと大和国の政策が変わらぬ事を真摯に伝達する。

ナオは実はオヤジ殺しの異名を持つ弁護士でもあった。

受け継いだ美貌と鍛えられたプロポーションで誰をも魅了する(作り)笑顔で、数々の勝訴を勝ち取って来ていたのだ。

そのオヤジ殺し魅力はチャランポラン大統領さえ虜にしてしまった。

首脳会談後の記者会見は前総理との親密さをナオが受け継いだ事を、全世界に発信するに十分な内容であった。



続いての外遊先は腹に一物を隠し持つ、ポーチンコ大統領が待ち受ける「おそろしや国」であった。

ここでナオは意外な行動に出た。

それまで友好的な関係であった安倍川前総理の路線を完全に放棄して、強硬な態度を取ったのだ。

「大和国とおそろしや国の国際条約は戦前の不戦条約が最後の条約であり、しかもそれをおそろしや国が一方的に破棄するという国際法に反する形で我が国の領土を不法占領している。

我が国は国際法に則ってこの条約破棄を認めない。なので領土交渉はこの条約に基づいて全ての領土の返還を求める所から始める事になる。」

もちろんポーチンコ大統領は激怒して、会談終了後の記者会見は険悪な様相を呈した。

それでもナオは素知らぬ顔で堂々とこれまでの関係を見直し、新たな大和おそろしや関係を模索すると宣言した。

大和国内に蔓延していたホップ領土返還への期待は、その時点で白紙に戻ったと失望の声がナオへの非難へと変化した。

それに対してもナオは堂々と反論した。

「あれだけ譲歩を重ね、友好的に接しても決して譲らなかったポーチンコ大統領と同じ交渉を続けても全く意味がない。

力技で交渉を仕掛けてくる相手にはそれなりの手段を講じるほかない。

私はこれからそれを熟考して新たな戦略を持って、対おそろしや国との交渉を始めて行く所存であります。

異論があるなら、この8年間一向に進展しなかった安倍川前総理の外交方針に間違いが無かったと理論的に証明して頂きたい。」

記者の質問はそこで止まった。

ポーチンコ大統領も苦虫を噛み潰した顔であったが反論はしなかった。



その後の外遊訪問先ではノーベル賞受賞者初の元首と云う事で注目を集め、世界中のマスコミはその一挙手一投足を事細かに報道した。

外遊途中でそのノーベル賞の授賞式もあり、大々的な報道もそれに花を添えた。

だが、外交自体はあらかた儀礼的な訪問だった為にほぼ何事もなく終了して、あっという間に2週間に及ぶ外遊を終えナオは帰国した。

帰国してすぐさま臨時国会を招集すると云う荒業まで披露する。



ナオの真価を問う臨時国会が遂に招集される。

その所信表明演説は異例にも世界中に中継される事になった。

衆議院の演説台に立つナオが第一声を放つ。

「まず冒頭で今般続いた災害で被災された方々へ心よりお見舞いを申し上げます。

我が国は災害大国であり、今後もこのような災害が多発する事が予想されます。

我が国はその事に対して無防備な政府を生んでしまったと言う苦い経験を積んでおります。

コンクリートから人へ・・・聞こえは良いが、これはインフラ整備・防災対策を放棄すると言う、災害大国である事への意識の欠如から来る無能な放言であります。

私はまず、悲惨な災害を最小限に食い止めるために、インフラの整備、防災対策の拡大を最優先に行います。

次に差し迫る課題は我が国の少子化であります。

これは若年者の所得水準の低下とも関係していると思われます。

これを放置したままでは我が国の国力衰退、即ち国民生活を貧困へと導く喫緊の課題であります。

それに対しての第一の政策として、既婚、未婚に係わらず、出産された第1子に100万円、第2子に300万円、第3子に1000万円の一時金を支給致します。

また、その生まれたお子さんへの教育費の軽減策として国立、公立の全ての教育機関への学費を無料化致します。

その他、私学助成として大学教育に関しては、センター試験偏差値60以上の私大の学費も無料化致します。

その他、学生助成として奨学金の返済免除制度を拡充して、機会均等の平等な教育環境を提供致します。」

ナオの演説は続く。

一部野党からの野次も与党の拍手にかき消され、順調に進んでいた。



続く