IN OUT 不参加なのでポチッは不要です
PVアクセスランキング にほんブログ村


選挙期間中に公表した公約の実現へ向けたスケジュールを事細かに並べ、優先順位をも示しながらナオの演説は2時間を超えた。

最後の締めくくりにナオは本心からの言葉を付け加える。

「現在の日本はほぼ官僚によって支配されております。これは政治の世界も経済界も同じです。

つまり、国全体が、国民の皆さんが支配されていると云う事です。

古来より官僚が支配する国家は、その命脈が尽きる物と歴史が証明しております。

敗戦以降の公僕として懸命に働いた官僚と復興に心血を捧げた経済界、即ち全ての国民、先人たちの努力によって現在の我が国の隆盛は齎(もたら)されました。

現在、その先人たちの遺産を私達は享受しております。

しかしながら、その先人たちの遺産を我が物顔で喰い潰す者たちで溢れ返り、現在の我が国は瀕死の状態であります。

私はそのゾンビ共を駆逐し、新たな未来の世代に新しい遺産を残して差し上げる決意でこの場に立っております。

その私の決意に反する者には、情け容赦無く相対する所存です。

既得権益を是が非でも守りたい守旧派との戦いを、国民の皆様には是非とも応援していただきたいと心よりお願い申し上げます。

・・・以上を我が政権の所信表明とさせて頂きます。

ご清聴ありがとうございました。」

一瞬、シンと静まり返った議場から歓声と拍手が巻き起こる。

堂々たる所信表明演説であった。

しかしながら奈緒の願いはそこには無かった。

それをナオは知らない。



衆参での演説を終えて官邸へ戻ったナオは流石に疲労困憊と云う状態だった。

「総理、大丈夫ですか?」

有人が心配そうにコーヒーを差し出す。

「あ、ありがと、有人さん。ふぅ~、流石に疲れちゃったわ。」

コーヒーを啜りながら総理の椅子に深く座りため息をつく。

有人が時間を見るとそろそろ奈緒との交代時間である。

「総理、奈緒ちゃんへの特別な伝言とかありませんか?」

その問にナオが小声で答えたが有人には聞き取れなかった。

「えっ?なんですか?」

有人が側に近づいて耳を寄せると、ナオは有人の首を抱え込んで有人の唇を又もや奪う。

いつもの如くナオの激しいキスに有人の理性は簡単に何処かに飛んでいく。

激しく抱き合い求め合う。

が、しかし、有人は最も大事にしなくてはならない、時間の感覚も同時に何処かへ飛んで行ってしまっていた。

それが意味する事をナオは知った上で、確信的犯行に及んでいる事にヘロヘロ有人は気が付かない。

激しく求め合っている最中にその時は訪れた。

「んぐ・・・キャイ・・・んぐ・・・」

有人は求め合うその目が怒りを帯びた事に気が付き体が固まる。

そっと奈緒が有人を押しのけ、椅子から立ち上がる。

その姿はネメシスが如く憤怒に満ちあふれている。

有人はまさしく縮み上がって尻餅をつき、奈緒をただ見上げるだけであった。

「有人さん、何か言い訳けする事がある?」

有人は石像に変わり微塵も動かない。

「有人さん、何か言ったら?」

石像は喋らないのだ。



続く