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仁王立ちの奈緒を呆然と見上げる有人に、奈緒が厳しい声をあげる。

「有人さん!今度浮気したら絶対に許さないって言ったわよね!」

これは浮気なのか?

そう思えなくもないが・・・違うのではないか?・・・今の有人はそこまで思考が回転しない。

目の前の仁王様に伏してお願いするしか無い。

「ご、ごめんなさい!!もう二度と致しません。ごめんなさい!!」

奈緒とナオがどうしてこんな優柔不断な男に固執するのか?

それは幼少の頃、自分たちが多重人格だと知った周りの大人達は皆、その後二人?に対して腫れ物にでも触れるような接し方をした。

側にいた者で唯一、それまでと変わらず接したのが有人だった。

その時から二人?はいつしか有人だけを見つめながら生きて来たのだ。

その上他の女性と浮気している訳でも無い事が二人?の想いを複雑にしていた。

「・・・・仕方ないわね。本当にこれきりだからね!!有人さん!約束して!」

有人は伏してお願いする。

「解りました。必ずや約束を守ります。もうしません!!」

その言葉を奈緒は心の中では全く信用していなかった。

ナオが諦めるとは思えなかったのだ。

しかし・・・ここで事を荒立てて逆にナオへ走られては元も子もない。

ナオの思うツボだ。

「解ったわ。今回まで許してあげるわ。・・・もう!私はヤキモチ焼きだって言ったじゃない!」

そう言いながら床に座る有人を抱きしめる。

もちろん・・・・

しかし途中で邪魔が入る。

インタホンから招集を掛けていた全省庁の次官が会議室へ集合したとの連絡が入った。

甘く長いキスの途中で二人は離れるしか無かった。

奈緒は立ち上がりインタホンへ答える。

「解りました・・・すぐ向かいます。」

有人も立ち上がり身だしなみを整える。

「じゃ、有人さん、行きましょ。ここから決戦場よ。例の伝言はちゃんと伝えてあるわよね?」

「あ、はい。防衛省始め、総理に指示された省庁には言い付けに従うように厳しく伝えました。」

「そう、じゃあ・・・邪魔者をやっつけちゃいましょう。」

そう言って奈緒は背筋を伸ばして執務室のドアを開ける。

付き従う有人にも緊張の顔色が伺えた。

この戦いに敗れると今までの政権の二の舞いである。



階下の会議室のドアを開けると集まった次官達が一斉に立ち上がる。

さすがに学習能力は高い。

「お疲れ様です。総理。よろしくお願い致します。」

「ご苦労さま。」

素っ気なく言って有人が引く椅子に腰掛ける。

有人が頷くと次官も各人の椅子へ座った。

「さて、と、補佐官、今日の議題は何だったかしら?」

有人に向かって問う。

「はい。先日の各省庁の管轄する独立行政法人の削減についてです。」

有人の言葉で室内に緊張が走る。

奈緒はゆったりと全ての次官を見回し戦いを始めた。


続く