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暫くの沈黙の後奈緒が樫村に話し始めた。
「先生、これから話すことは・・・国家機密に属するお話になります。秘密の厳守をお約束いただけますか?」
「えっ?国家機密?・・・いや、まあ、そうで無くても患者の事に関しては守秘義務があるので、それは大丈夫だが・・・・。」
「私だけの問題では無いんです。もし・・・この話が漏れたらこの国自体が大変な事に為るほどの事なんです。だから念押ししているんです。」
「う、うむ。良く分からないが秘密は厳守するよ。絶対に漏らさない。」
「解りました・・・では、お話しします。ナオがどうして現れたのか・・・・。」
「うむ。」
奈緒はその時を語り始めた。
1993年12月16日 角田中栄は死去した。
その葬儀の最中、幼い奈緒は角田家本家の蔵で一人遊びをしていた。
まだ祖父の死を理解することも出来ないほど幼かった奈緒は、蔵で本宅の棚にあったフランス人形を持ち出して遊んでいたのだ。
すると何処からともなく大人の声が聞こえてきた。
その声は母の叔父である二階堂と、よく自宅へ遊びに来ていた瓦斯だった。
思わず声を掛けようとした奈緒だったが、その二人の声が今まで聞いた事も無い様な恐ろしい声だったので、奈緒は怖くて動けなくなってしまった。
「二階堂先生、中栄さんを麦国に売ったのは失敗でしたね。」
「そんな事、今更言っても始まらんだろう。大体、大澤の馬鹿者が竹上なぞに派閥争い如きで敗れるのが悪いんじゃ。」
「しかし二階堂先生はその大澤と行動を共にしているではありませんか。」
「仕方ないんじゃ。麦国の意向でどうしても政権の内部にいることが必要なんじゃよ。」
「だからあの時に中栄さんを裏切ってあんな真似をするから、GIAなんかに弱みを握られるんですよ。」
「うっ・・・今更言っても始まらんと言っているでは無いか。それにその事に関しては瓦斯くんも同罪では無いか。」
「うっ・・・いや、しかし私は最後まで反対したんですよ。お忘れじゃないですよね。」
「そんな事、今更言っても所詮中栄先生を麦国へ売った事に加担した罪が消えるわけでは無いぞ。」
「そんな事は言いませんよ。だからこそ一蓮托生と思って、離党した二階堂先生とこうやって連携しているじゃないですか。」
その時奈緒は話の内容の恐ろしさについその場を後ずさって、足元にあった箱に躓いて倒れてしまった。
バタンと言う音に密談を交わしていた二人は慌てた。
「だ、誰だ!そこにいるのは誰だ!」
薄暗い蔵の中の棚と棚の間を動き回り奈緒を見付ける。
奈緒は尻もちをついたまま怖くて動けなくなってしまった。
奈緒を見つけた二階堂は驚いた。
「奈緒ちゃん・・・どうしてこんな所に・・・。」
奈緒は言葉が出てこなかった。
「奈緒ちゃん、大叔父さんと瓦斯の小父さんのお話を聞いていたのかな?」
奈緒は答えなかった。
いつも優しい大叔父様と瓦斯の小父さんが悪魔に見えた。
黙り込む奈緒に二階堂は近づいてつい大声を上げてしまった。
「奈緒!聞いていたのか!!!」
奈緒は余りの恐ろしさに意識を失った。
二階堂が慌てて奈緒を抱き上げる。
「奈緒・・・奈緒ちゃん、大丈夫か?」
二階堂の腕の中で意識を失っていたと思った奈緒の目が開いた。
「クククッ・・・大叔父さん、私は何も聞いてないよ。それと私は奈緒ちゃんじゃないよ。ナオだよ。」
「な、何を言っているんだい奈緒ちゃん。」
「クククッ・・・。だからぁ、奈緒ちゃんじゃ無くてナオだって言ってんじゃん。」
二階堂を見る目が何時もの奈緒と違う。
「・・・・お、お前は誰じゃ・・・奈緒ちゃんじゃ無いのか?」
「クククッ・・・。だから、さっきからそう言ってるじゃん。私はナオだって・・・。」
「どういう事じゃ・・・・。」
それを見ていた瓦斯が呟く。
「二階堂先生・・・これは・・・もしや多重人格では?」
呆然と振り向く二階堂にナオが呟く。
「おや?察しが良い人がいるじゃん。誰だっけその人。」
二階堂は恐ろしい者でも見る様にナオを見つめる。
続く
暫くの沈黙の後奈緒が樫村に話し始めた。
「先生、これから話すことは・・・国家機密に属するお話になります。秘密の厳守をお約束いただけますか?」
「えっ?国家機密?・・・いや、まあ、そうで無くても患者の事に関しては守秘義務があるので、それは大丈夫だが・・・・。」
「私だけの問題では無いんです。もし・・・この話が漏れたらこの国自体が大変な事に為るほどの事なんです。だから念押ししているんです。」
「う、うむ。良く分からないが秘密は厳守するよ。絶対に漏らさない。」
「解りました・・・では、お話しします。ナオがどうして現れたのか・・・・。」
「うむ。」
奈緒はその時を語り始めた。
1993年12月16日 角田中栄は死去した。
その葬儀の最中、幼い奈緒は角田家本家の蔵で一人遊びをしていた。
まだ祖父の死を理解することも出来ないほど幼かった奈緒は、蔵で本宅の棚にあったフランス人形を持ち出して遊んでいたのだ。
すると何処からともなく大人の声が聞こえてきた。
その声は母の叔父である二階堂と、よく自宅へ遊びに来ていた瓦斯だった。
思わず声を掛けようとした奈緒だったが、その二人の声が今まで聞いた事も無い様な恐ろしい声だったので、奈緒は怖くて動けなくなってしまった。
「二階堂先生、中栄さんを麦国に売ったのは失敗でしたね。」
「そんな事、今更言っても始まらんだろう。大体、大澤の馬鹿者が竹上なぞに派閥争い如きで敗れるのが悪いんじゃ。」
「しかし二階堂先生はその大澤と行動を共にしているではありませんか。」
「仕方ないんじゃ。麦国の意向でどうしても政権の内部にいることが必要なんじゃよ。」
「だからあの時に中栄さんを裏切ってあんな真似をするから、GIAなんかに弱みを握られるんですよ。」
「うっ・・・今更言っても始まらんと言っているでは無いか。それにその事に関しては瓦斯くんも同罪では無いか。」
「うっ・・・いや、しかし私は最後まで反対したんですよ。お忘れじゃないですよね。」
「そんな事、今更言っても所詮中栄先生を麦国へ売った事に加担した罪が消えるわけでは無いぞ。」
「そんな事は言いませんよ。だからこそ一蓮托生と思って、離党した二階堂先生とこうやって連携しているじゃないですか。」
その時奈緒は話の内容の恐ろしさについその場を後ずさって、足元にあった箱に躓いて倒れてしまった。
バタンと言う音に密談を交わしていた二人は慌てた。
「だ、誰だ!そこにいるのは誰だ!」
薄暗い蔵の中の棚と棚の間を動き回り奈緒を見付ける。
奈緒は尻もちをついたまま怖くて動けなくなってしまった。
奈緒を見つけた二階堂は驚いた。
「奈緒ちゃん・・・どうしてこんな所に・・・。」
奈緒は言葉が出てこなかった。
「奈緒ちゃん、大叔父さんと瓦斯の小父さんのお話を聞いていたのかな?」
奈緒は答えなかった。
いつも優しい大叔父様と瓦斯の小父さんが悪魔に見えた。
黙り込む奈緒に二階堂は近づいてつい大声を上げてしまった。
「奈緒!聞いていたのか!!!」
奈緒は余りの恐ろしさに意識を失った。
二階堂が慌てて奈緒を抱き上げる。
「奈緒・・・奈緒ちゃん、大丈夫か?」
二階堂の腕の中で意識を失っていたと思った奈緒の目が開いた。
「クククッ・・・大叔父さん、私は何も聞いてないよ。それと私は奈緒ちゃんじゃないよ。ナオだよ。」
「な、何を言っているんだい奈緒ちゃん。」
「クククッ・・・。だからぁ、奈緒ちゃんじゃ無くてナオだって言ってんじゃん。」
二階堂を見る目が何時もの奈緒と違う。
「・・・・お、お前は誰じゃ・・・奈緒ちゃんじゃ無いのか?」
「クククッ・・・。だから、さっきからそう言ってるじゃん。私はナオだって・・・。」
「どういう事じゃ・・・・。」
それを見ていた瓦斯が呟く。
「二階堂先生・・・これは・・・もしや多重人格では?」
呆然と振り向く二階堂にナオが呟く。
「おや?察しが良い人がいるじゃん。誰だっけその人。」
二階堂は恐ろしい者でも見る様にナオを見つめる。
続く