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画面へ映し出される奈緒の表情は硬い。

「国民の皆様にお伝えしなければならない重要な事実を、私は昨日ある人物から知らされました。

その人物のお名前は明らかにすることは出来ません。その事に関しては国民の皆様にご理解を頂きたい。

・・・それではその事実を包み隠さずお知らせ致します。

1985年、昭和60年8月12日午後6時56分、鶴印航空321便が墜落した事故に関して、公開されていた事故調査報告書が虚偽で有ることが分かりました。

事故調査報告書によると圧力隔壁の破壊による油圧機器の操作不能により、最終的に墜落した事になっておりましたが、

新たなる事実によりますとこの圧力隔壁の破壊の原因は、当時自衛隊が行っていた訓練において、銃撃練習用の的機が321便の尾翼に不慮の事故で接触し、尾翼を破壊した事が原因である事が分かりました。

また、墜落地点の発見も当日午後9時過ぎには自衛隊及び反日新聞の取材ヘリによって特定されていた事も明らかになりました。

早急な救助が必要であったにも係わらずそれを妨害し、被害を増大させた事は全てある特定の政治家たちの自己保身と権力への執着にあります。

この事実隠蔽の責任者で実行者は当時の総理である故大曽根氏であります。

私はこの事態を重く受け止め、故大曽根氏へ贈られた全ての勲章・官位を剥奪する事をここに発表致します。

また、別のある特定政治家がこの事実を隠蔽する事に協力し、事故調査報告書を改ざんした事が分かりました。

その過程で「ボインチャン社」の整備不良で起こった事故にするため、麦国政府及び「ボインチャン社」と裏取引を行いました。

「ボインチャン社」は自ら整備不良を認めるなど、事故の隠蔽に協力致しました。

その見返りとして以後の我が国の航空機の購入は全て「ボインチャン社」からとなりました。

整備不良を犯して史上最大の犠牲者を出した「ボインチャン社」から航空機を購入し続けた不可解な理由はそこにあります。

その裏取引の首謀者である政治家は、現在我が政府で重要な役職を務めております「二階堂副総理」と「瓦斯官房長官」であります。

この様な「国賊」を政権の中枢で重要な役職に任命した私の任命責任は重大で、国民の皆様に深くお詫びしなければなりません。

私は今この場でその二人を罷免致します。

また改新党党首として、その二人をこの場で除名処分とし、議員辞職を勧告致します。

・・・・その上で、私は自らの責任を国民の皆様に問わねばなりません。

そこで衆議院の解散を行い国民の審判を受ける所存であります。」

ここで奈緒はカメラへ向かって深々と一礼をする。

その後姿勢を正して、再び話しを続ける。

「また、こちらは別件でございますが、国家の防衛に関して国民の皆様へご報告がございます。

それは過去に私が発明したレーザー医療機器の技術を転用し、レーザーミサイル防衛システム・アマテラスの首飾りを構築致しました事をご報告致します。

これにより我が国は2度と他国から核兵器及びミサイルによる攻撃を受ける事はございません。

国民の皆様、ご安心頂き日々の暮らしをお過ごし下さい。

またこれには贖罪の意味合いもございましたが、この防衛システム構築には自衛隊が総力をあげて協力致しました。

過去の罪は拭えませんが、今後の活動により自衛隊は国民に対しその贖罪を果たして行くことを総司令官たる内閣総理大臣として国民の皆様にお約束致します。

最後に、もう一度、鶴印航空321便事故で亡くなられた犠牲者、ご遺族の皆様に政府を代表して改めて心からご冥福をお祈り申し上げると共に深くお詫び申し上げます。

大変申し訳けございませんでした。」

深々と頭を下げたまま奈緒は動かない。

その場面でその時間の特別放送は終了を迎えた。



奈緒が党本部へ戻ると二階堂と瓦斯が党首室で待ち構えていた。

「あら?大叔父さん、瓦斯さん、どうされました?」

「なっ!どうされましたでは無いではないか、一体どうしてなんだ!」

瓦斯も一言付け加える。

「私達を貶めるなら、何故わざわざ閣僚に任命したのですか!」

「そうじゃ!これはあまりと言うものじゃ。ナオ、ワシは大叔父なのだぞ。」

奈緒は二人の顔を氷の微笑を浮かべて眺めていた。

「大叔父さん、瓦斯さん。」

「なんじゃ・・・。言いたいことがあるなら聞こう。」

「ふん、よくもまあ厚かましくそんな事を言えるわね。」

「なっ・・・あ、厚かましいとは・・・・。」

「大叔父さん、瓦斯さん、私はあの夏、祖父のお葬式での出来事を覚えているのよ。」

「えっ?いや・・・しかし、それはお互い無かった事にすると云う事で話は付いていたではないか。」

「大叔父さん、瓦斯さん、それはナオとの約束でしょ?私は知らないわよ。」

「えっ?な、ナオじゃ無いのか・・・・?」

「そう、私は角田奈緒。大叔父さんの可愛い、可愛い、奈緒ちゃん・・・よ。」

「あ・・・いや・・・しかし・・・どうして・・・。」

「私は総理に就任してからずっと樫村先生と人格統合の治療をしていたの。そして今、角田奈緒は私一人しかいないのよ。」

「あ・・・う・・・・。」

「悪いけど大叔父さん、瓦斯さん。私は大好きだった祖父の命を縮めたお二人を絶対に!絶対に許せない!!」

「あ・・・いや・・・それは・・・・」

「言い訳けしても無駄。私は全てを思い出したの。大叔父さん、瓦斯さん、二度と私の前に姿を見せないで。・・・出ていって!!」

「う・・・・。」

正に鬼の形相で睨みつける奈緒から逃げるように二階堂と瓦斯は党首室を後にした。

入れ替わりに有人が入って来る。

「奈緒ちゃん、あんな事しちゃって大丈夫なの?」

有人は今日1日の出来事全てに対しての驚きのあまり気の利いた言葉が出てこなかった。

「うん、良いのよ、これで・・・。」

そのまま有人に縋るように抱きつく。

有人もそんな奈緒を優しく抱き締める。

そのままソファーに倒れ込み激しく愛し合う二人・・・・・。



ソファーで眠り込んでいる有人に毛布を掛けて、角田奈緒は窓際でゆっくりとコーヒーを味わう。

「・・・私は世界の覇権とか実はどうでも良かった。別にあなたと二人で一人の人生も嫌じゃ無かったわ。でもね・・・有人さんだけは渡せなかったのよ。

I'm sorry・・・奈緒。消しちゃってごめん。」

赤く暮れゆく夕陽に向かってナオが呟く。


Mr.Children Tomorrow never knows


I'mソーリー 完


※長い間、また最後まで自己満足の妄想作文にお付き合い頂いた皆様、誠にありがとうございました。心から感謝致します。※