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高校卒業後10年ぶりの同窓会だ。

五十嵐夕紀はこの10年同窓会のお誘いを断り続けていた。

それは高校時代に付き合っていた彼、藤田裕に会う事に気が引けたから・・・

卒業間近、彼は関西の一流大学に合格し夕紀とは遠距離恋愛になってしまう事が決まった。

夕紀は彼より自分が信用できずにその遠距離恋愛を拒否してしまった。

想いを残したまま旅立つ彼を見送りにも行かなかった。

その後時々届く彼からの手紙にも返信する事も無く、何時しかそれも途絶えた。

それを引きずってしまったのか夕紀の恋愛はそれから全く上手く行かなかった。

その日、高校時代からの親友である臼井幸からどうしても一緒に行こうと引きずられるように連れてこられた同窓会だった。

乗り気でない同窓会ほどつまらない物はない。

一人壁の花と化してただ幹事や先生たちが話をしているのをぼんやり眺めているだけだった。

無理やり引っ張って来た臼井幸の姿はいつの間にか消えていて、夕紀はぽつんと立ち尽くしていた。

その時に横から声を掛けられた。

「元気だった?」

急だったのでちょっと驚いて振り向くとそこには裕が立っていた。

高校時代より少しだけ大人びて、でもあの素敵な笑顔は変わっていなかった。

「あ・・・久しぶり・・・裕・・・」

「うん、久しぶりだね、夕紀。」

「うん・・・あの・・・ごめんね・・・。」

「ん?何が?」

「何がって・・・あの・・・ほら、折角くれた手紙に返事とか出さなかったし・・・。」

「ああ・・・でも、仕方ないよ。夕紀も辛かったんだろうし・・・。」

「うん・・・・」

「良いんだよ。もう気にしなくて。」

「ありがとう・・・・。」

「それで、夕紀は今どうしているんだい?」

「あ、うん、こっちの大学卒業してから銀行にお勤めしてる。」

「へぇ~!凄いじゃん。」

「そんな事無いわよ。ただの窓口業務とかだし・・・。」

「いやいや、凄いよ。だってあの頃から将来銀行に勤めたいって言っていたんじゃん。夢が叶ったんだね。」

「あ・・・そういう事話したっけ?」

「うわ、それは酷いな。ハハハ・・・忘れんなよ~。」

「ごめん・・・私、裕に申し訳なくて、出来るだけあの頃の事思い出さない様にしていたかも。」

「そうなんだ・・・・。でもさ、もう忘れて良いよ。お互いもう大人じゃん。あの頃のことはいい思い出として心に仕舞っておいてもいいさ。」

「うん、そうだね・・。いい思い出・・・たくさんあるね・・。」

「そうだよ、いい思い出だよ。だからもう自分を責めなくても良いからね・・・・。」

「うん、ありがとう・・・裕・・・。あの時言えなかったけど・・・大好きだったよ・・・。」

「ああ・・・僕も大好きだった。」

そういう裕の笑顔は変わらず優しい。

思わず涙がこぼれそうになり夕紀はちょっと席を外した。

「ごめん・・・ちょっと化粧室に行ってくるね。まだ居るよね?」

「ああ・・・大丈夫、まだ居るよ。行っておいで。」

そう言われて安心して夕紀は化粧室へ向かった。

化粧室から戻ると裕の姿が見えなかった。

その代わり姿が見えなかった幸が壁際に立っていた。

「あ、幸。何処にいたのよ。私一人にして。」

「ごめん、ごめん・・・。ほら、私が高校時代好きだった山本浩二くんが居たもんだから、つい追っかけちゃって・・・アハ♪」

「アハ♪じゃ、無いわよ、もう。で、山本くんはもう良いの?」

「う~ん・・・だって結婚したって言うんだもん・・・・。不倫はダメでしょ?」

「当たり前じゃない。」

「アハ♪そうよね。で、夕紀はずっと一人で何していたの?」

「あ・・・いや・・・それが一人ってわけじゃ・・・。」

その時司会をしていた元生徒会長が急にマイクのボリュームを上げて皆に注目するように告げた。

「え~、すいません。一通り先生方の話とか終わったので、ここで一つだけお知らせがあります。」

何事かとその会場にいた全員がその言葉に注目した。

「え~っと・・・・この同窓会を企画したのは本当は僕の親友だった藤田裕が先月事故で急死したからです。それでどうしても皆さんに裕の事を覚えていて欲しくて同窓会を開こうと考えました。」

夕紀は呆然とした。

そんなはずは無い。

さっきまで裕と二人で話していたのに・・・・。

夕紀は会場中を見渡し裕を探した。

しかし裕の姿は何処にも無い。



オシマイ