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☆この物語はフィクションであり、登場する団体名、人物名は例え同名であろうとも一切関係有りません。
また、物語の中で起こる出来事には一切科学的根拠はありません。
尚、同じく物語の中での規約や慣習など物語(作者w)の都合上、実際と違う所があります。☆



【どうしよう・・・あと7手で詰められちゃう・・・負けたら終わりなのに・・・】

【お前バカじゃねぇの?】

「えっ?何?」

思わず口走った。

「はぁ?何でしょう?」

対局相手の山田三段が問い返してきた。

「あ、いえ・・・何でもありません。」

【何?幻聴?どうして?こんな時に・・・】

【幻聴じゃねぇよ。】

「えっ?・・・あ・・・すいません、何でもありません。」

【いちいち声を出さないとダメな口か?バカじゃねぇの?】

【な・・・何なの・・・と、とりあえず落ち着かなくちゃ】

「すいません。ちょっと失礼します。」

対戦相手に声を掛けて席を外して化粧室へ向かう。

【こんな時に幻聴なんて・・・どうしよう・・・負けそうなのに、残り時間も少ないのに・・・】

そのまま化粧室の鏡に向かって自分を鼓舞するように言う。

「負けない。負けられない。これが最後のチャンスなんだから。絶対負けられない。」

【あれ?「性交したいわ」じゃないか?】

「えっ?何?」

【だから~!鏡に映っているのお前だろ?「性交したいわ」だろ?エロい名前だから覚えてるよ】

「ち、違うわよ!!せ、「性交したいわ」じゃないわよ!晴耕志 泰葉(はるこうし やすは)よ!」

【へぇ~、「性交したいわ」じゃ無いのか?】

「あ・・・幻聴に答えてる・・・何やってるんだろう・・・どうしちゃったの・・・」

【だから~!幻聴じゃねぇよ。それに、いちいち声に出すなよ。考えるだけで解るから。】

【考えるだけで?どういう事?幻聴なのに?】

【だから~!幻聴じゃねぇって言ってんじゃねぇか!解かんねぇ奴だなぁ~】

【幻聴じゃないって・・・じゃあ、一体何なのよ!】

【う~ん・・・それは俺にもよく分からん。】

「な・・・何なのよ!!!」

【だから~!いちいち声に出すんじゃねぇよ。煩いよ、お前。】

【くっ!幻聴にお前呼ばわりされるなんて・・・どうしよう・・・私おかしくなっちゃった・・・】

【あのなぁ~。ホントに・・・・ふぅ~・・疲れるわ・・バカを相手にすると。】

「・・・幻聴にバカ呼ばわりされるなんて・・・」

【だから、黙って考えろよ。周りに人が居るかもしれないだろ?】

「えっ?・・・・あ、大丈夫・・・誰も居ない・・・。」

【そりゃあ、将棋会館なんて女の子はほとんど居ないからな。化粧室は貸し切りだろ。】

【確かにそうだけど・・・一体何なのよ?幻聴のくせに何でそんな事まで知っているのよ?】

【だから幻聴じゃねぇって何回言えば解るんだよ。本当に馬鹿なのか?】

「馬鹿じゃないわよ!何なのよ!」

泰葉は化粧台に手を叩きつけた。

「あ・・痛っ。」

【・・・やっぱり馬鹿だなコイツ。】

「失礼ね。何なのよ。どうすれば良いのよ・・・。」

【どうすればもこうすればもねぇだろ?お前今年26だろ?負けたら奨励会退会だろ?】

「な、なんで?どうしてそんな事まで・・・。」

【お前の記憶、なんか解るみたいだ。】

「えっ?」

【だから、お前の事は全部解る・・・気がする。】

「意味が分かんない・・・・。幻聴なのに・・・幻聴と会話してる私はどうしちゃったんだろ・・・。負けそうだからおかしくなっちゃったの?」

【だから~!めんどくせーなぁ~!幻聴じゃねぇって。なんか急にお前の頭の中に放り込まれた感じだけど、ちゃんと生きてるぞ俺は。

「生きてるぞって・・・私の頭の中で?どういう事なのよ?」

【だから・・・それは俺もよく分からん。】

「何なのよ~!大事な対局なのに・・・。」

【解ってるって。最後のチャンスだもんな。】

「解るんだったら消えてよ・・・。お願い。神様お願いします。今日は負けられないんです。」

【そう言われてもなぁ。俺だって何が何だか分かんないんだから、どうしようも無いんだよ。】

「幻聴じゃないのなら・・・あなた一体誰なのよ?」

【ん?あ、俺か?俺は・・・あれ?俺は・・・・誰だ?】

「・・・・やっぱり・・・幻聴なんだわ・・・・。」

【違うって。ちょっと記憶が・・・無い・・・だけだ。】

「記憶がないって・・・私の事知っているって言ったじゃない。」

【あ、そうなんだよな。うん、知ってる。なんでだ?エロい名前だからか?】

「だから、違うってば!エロくない!変な読み方しないでよ!」

【う~ん・・・でもまあ・・・俺が天才だった事は覚えてる。】

「はぁ?天才?・・・・何を言っているんだか・・・・。」

【・・・だってお前、今やってる対局負けそうだと思っているだろ?】

「そ、それは・・・だって・・あと7手で必至掛かっちゃうし・・・・。」

【だろ?お前は見えてないだろ?勝てる手筋が俺にははっきり見えてるぞ。だから俺は天才だ。】

「・・・意味が分かんない。勝てる手筋が見えてる?幻聴に手筋が見えるの?」

【しつこい!幻聴じゃねぇよ。俺は天才だ。】

「天才・・・・天災だわ・・・・。」

【こら!考えただけで解るって言っただろ。俺は天災じゃねぇぞ!ホントにもう・・いい加減、はぶてとったら怒っぞ。】

【はぶてとらんもん!・・・えっ・・・なんで?】


続く

★奨励会年齢制限について★
実はこれには延長規定(救済規定)がありますが、お話の都合上・・・無い事にします!(笑)