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何とか時間に間に合って対局場へと足を踏み入れる。

そこはいつもの対局場では無く、机と椅子を使った対局場だった。

正座が苦手な泰葉にとっては有り難い。

【お、懐かしいな。】

【あら?そうなの?】

【ああ・・俺は一回しか新人戦に出られなかったからな。】

【ああ・・そうね・・・また自慢かぁ・・・。】

【そういう意味ではお前も同じだな。今年一回だけのチャンスだ。】

【えっ?そうなの?】

【あのなぁ~・・・ふぅ~・・・だから規約くらいはちゃんと覚えろよ。】

【ん?どういう事なの?】

【はぁ~・・・この新人戦はだな・・・。】

【うん。】

【まずは五段以下の棋士及び奨励会員に出場権がある。】

【うん、それは知ってるわよ。だって私も毎年エントリーしていたもの。】

【ま、そこの五段以下という規約に引掛って俺は1年だけだったけどな。なんせその年に七段になっちゃったもんでな。わっはっはっは・・・・。】

【もう!だから自慢は良いから・・・。私が最後のチャンスって事を教えてよ。】

【そう・・・お前は最後だよ。それは、もう一つの規約26歳以下ってのがあるんだ。】

【えっ?26歳以下・・・年齢制限がここにもあるのぉ~。】

【ま、そういう事だな。大体26歳迄プロになれなかった奴が新人戦を取ったためしが無いからな。】

【うっ・・・。】

【それとだ・・・。よく覚えておくんだぞ。棋士というのはそこそこ素質があれば六段迄には誰でもなれる。】

【だ、誰でもって・・・。】

【いや、誰でもなれるんだ。六段迄の昇段規定が甘々なんだ。】

【でも・・・長年やっていても五段の先生っていない?】

【・・・それは・・・まあ絶滅危惧種だな。ハハハッ。】

【ぜ、絶滅危惧種って・・・あんまりな言い方じゃ無い・・・。】

【いや、そんな棋士はさっさと引退して別の人生を歩んだほうが幸せだよ。】

【・・・・・でも・・・棋士になるのが夢だったのに・・・。】

【夢だけで飯は食えんよ。六段にもなれないと言う事は・・・勝てないと同義語だ。】

【・・・確かにそうかも知れない・・・でも・・・。】

【デモもスッペタも無いんだ。棋士としてやるなら最悪でも六段迄は昇段しなくてはならない。】

【うん・・・分かった・・・頑張る。】

【あと・・・そうだな・・・20代始め頃迄に七段になれなかったら、タイトルはまず取れない。】

【うっ・・・。それは・・・】

【そう、お前は既にその条件にハマっている。】

【そんなぁ~・・・始まったばかりの棋士人生への夢や希望を打ち砕かなくても良いじゃない・・・。】

【うむ・・・。だから希望を少し与えてやる。】

【えっ?どういう事?】

【それは・・・この新人戦のタイトルを取った者は名人になる可能性がある。名人では無くてもタイトルの1つや2つは取れる可能性が高い。】

【・・・。タイトル・・・・。考えてもみなかった・・・・。】

【はぁ~・・・だからお前は・・・そういう所が棋士に向いてないんじゃないかと思わせる一因何だよなぁ。】

【そんなぁ~。頑張るから・・・そんな事言わないでよ・・・・。】

【そうだ、頑張らなくちゃいけないんだ。さっきも言ったように年齢から言うとお前は将来が無い棋士の部類なんだ。だからこの新人戦は絶対に獲りにいくんだ。】

【えっ?新人戦のタイトル・・・獲りにいくの?】

【はぁ~・・・もう!何のためにこれ迄俺に鍛えてもらったんだ。相手は五段以下のぺーぺーかロートルなんだぞ。ここで勝てなくてどうするんだ。】

【・・・・分かった・・・頑張るわよ・・・必死になる。】

【まあ・・・必死になって・・・また「待った」とかしないようにな。わっはっはっは・・・・。】

【うぐぅ~・・・シツコイってばぁ・・・】

【アハハ・・・まあ、はぶてんな、はぶてんな。】

【はぶてとらんもん!・・・よ~し!頑張るぞー!】



続く