続きです!

 

※相櫻

※BL

※学パロ

 

自己責任でお願いします🙇🏻‍♀️

 

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結局あれから相葉くんからの連絡はなかった。

 

 

「櫻井!次試合だから行くぞ〜!」

 

 

今日は球技大会でサッカーに出る俺は、久しぶりに体を動かすから岡田くんと軽くストレッチをしていたら、いつのまにか試合時間になっていたらしく慌ててグラウンドへと向かった。

 

2試合勝ち進んで次の相手は普通科の1年A組だった。整列して向かい合った一番端っこにやる気のなさそうな二宮和也の姿があった。

 

 

二宮くんのクラスか。

 

 

小2から中学までサッカーをしていたからそれなりに戦力な俺は、一点決めて少し油断していた。

ふと相手側の動きを見ているとゴール前でボーッと突っ立っている二宮くんがいた。

 

 

やる気なさすぎでしょ。

 

 

なんて思っていたら

 

「櫻井!危ない!!」

 

 

遠くから佐藤くんの声がして振り返ると、高く上がったボールをヘディングで取ろうとしている相手チームの人と共倒れになってしまった。

その瞬間がスローモーションのように感じられた。

 

相手チームの人に足を踏まれながら倒れてしまったため、自分でも右足首がグキッと音を立てたのが分かった。鈍い痛みと熱を帯びた感覚が伝わる。

 

試合の一時停止を合図するホイッスルがなり、グラウンドがざわつく。

クラスメイトや相手チームが駆け寄ってくるのが見える。

一緒に倒れた相手チームの人も手をついた時に痛めたようで手首を押さえている。

俺も上体を起こして立とうとするが足首の痛みでうまく力が入らない。

 

 

「起き上がれる?痛いよね?ちょっと我慢してね。」

 

 

突然聞き覚えのある声がして顔を上げると相葉くんが俺の背中と膝の下に手を入れていわゆるお姫様抱っこの形で持ち上げられた。

 

 

🔴「あ、相葉くん!?」

 

🟢「君は立てる?痛めたのは手首だよね?」

 

 

手首を摩っている相手チームの人に声をかける。

 

 

「あ、はい。大丈夫です。」

 

 

圧倒されたようにその人が答える。

俺が見た時は岡田くんや佐藤くんの方が先に駆け寄ってきそうな距離だったのに、いつの間に?!と思わずにはいられない。

 

 

「櫻井、大丈夫か?」

 

 

遅れて駆け寄った岡田くんが声をかけてくれる。

 

 

🟢「同じクラスの人?翔ちゃんは俺が保健室まで運ぶから、交代よろしくね。君もゆっくりでいいから保健室においで。先に行って、先生に氷用意してもらっとくよ。」

 

 

テキパキと指示を出している相葉くんに抱かれながらただ見ていることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

🟢「ごめんね、恥ずかしかったよね。」

 

 

保健室まで向かう廊下で眉尻を下げて申し訳なさそうに謝られる。

 

 

🔴「そんなこと!、ていうか重いよね。ごめん。」

 

🟢「全然、軽いよ!痛む?たぶん捻挫だと思うけど、もしかしたらヒビ入ってるかもな〜。踏まれながら転んでたよね?」

 

🔴「見てたの?」

 

🟢「もちろん。翔ちゃんサッカー上手いんだね。」

 

 

見ててくれたことが嬉しかったのも束の間、相手チームに二宮くんがいたことを思い出して納得がいった。

 

 

🔴「相手チーム、二宮くんだったもんね。」

 

🟢「何にもしてなかったけどね、あの子。」

 

 

相葉くんがあははと呆れたように笑う。

 

 

🟢「翔ちゃんばっかり見ちゃってたよ。今日はもうずっと。」

 

🔴「え?」

 

🟢「1試合目から大活躍だったから驚いたもん。いっぱいシュート決めるし、」

 

🔴「1試合目から?」

 

🟢「そう特に見ようと思ってたわけじゃないんだけど、どこにいたって見つけちゃうし目が離せなくて。」

 

🔴「そ、そんな…」

 

🟢「可愛いと思ってたのに、すっごいかっこいいからずるいよね〜。」

 

 

相葉くんが困ったように笑いかけて、先まで熱かった足首よりも顔の方が熱くなる気がした。

心臓の鼓動が早くて落ち着かない。

 

 

🔴「相葉くん、俺」

 

🟢「ん?あ、ついたよ」

 

🔴「え?!あぁ…」

 

 

タイミングよく保健室について我に返って、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなった。

 

 

俺、いま何言おうとしてた…?

 

 

相葉くんが器用に足で保健室の扉を開ける。

 

 

🟢「せんせぇ〜。足首捻挫したっぽくて、あと手首痛めた子も来るから氷作って〜」

 

 

保健室の先生とは親しいようで俺をベッドに下ろしてパタパタと先生のお手伝いをしている。

入学してから初めて訪れた保健室が物珍しくてキョロキョロしてしまう。

 

 

🟢「痛むよね、あんまり下におろさない方がいいからここに足乗せて。」

 

 

ベッドを取り囲むカーテンを閉めて、持ってきてくれた丸椅子にゆっくりと右足を乗せる。

 

 

🟢「ちょっと痛いかも。」

 

 

そう言って俺の靴紐を緩めてゆっくりと脱がせ、

氷嚢をタオルの上からゆっくりと置いてくれた。

 

 

🟢「痛くない?」

 

🔴「う、うん。」

 

🟢「結構腫れてるな〜。病院行った方がいいかもね。サッカーしてたんだよね?」

 

🔴「うん。」

 

🟢「怪我とかしなかった?」

 

🔴「あんまり…擦り傷とか?」

 

🟢「そっか。それは上手な証拠だね。」

 

🔴「そうなの?」

 

 

ガラガラと扉が開く音がして相葉くんは、あの子かも。と呟いてベッドのカーテンの向こうへ行ってしまった。

 

 

🟢「痛むよね?大丈夫?」

 

「先輩は大丈夫ですか??」

 

🟢「あー、櫻井くん?大丈夫そうだよ!」

 

 

相手チームの後輩が先輩を怪我させたことにこれ以上責任を感じさせないように、わざとカーテンを閉めたことに気がついて、相葉くんの優しさと気配りのすごさを実感して胸がキュゥと締め付けられる感じがした。

 

 

「ありがとうございました!失礼します!」

 

🟢「しっかり冷やしてね〜」

 

 

ガラガラと扉が閉まる音がしてカーテンが勢いよく開く。

 

 

「どう?結構腫れてる?」

 

 

保健室の先生が心配そうに聞く。

 

 

🔴「ちょっと。」

 

「病院行った方がいいかもね。ご両親に連絡しよっか。」

 

🔴「あー、うちの親は…」

 

 

仕事で昼間は連絡がつかないことは分かっている。

小学生の頃も熱が出て早退することになったときは潤のお母さんが迎えにきてくれていた。

かと言って怪我で他所のお母さんを呼び出すのは申し訳ない。

 

 

「都合悪いの?」

 

🔴「まぁ…。タクシーで行きます。」

 

「そう?お金は?保険証は?」

 

🔴「持ってます!あ、教室…」

 

 

保健室は共用部にあるため特進棟の4階まで取りに行くにはかなりの距離がある。

 

 

🟢「あ、俺とってくるよ!」

 

🔴「え!?」

 

「じゃあ、相葉くんよろしくね。」

 

🔴「あ、俺の席。」

 

🟢「わかるわかる!」

 

 

そう言って保健室から出て行ってしまった。

 

 

「かっこいいよね〜。」

 

🔴「え?」

 

 

保健室の先生が、私もあと10歳若かったらな〜と呟く。

 

 

「あんなイケメンにお姫様抱っこされた気分はどう?」

 

🔴「え?どうって…」

 

「もし、あなたが女子だったら確実に惚れてただろうな〜」

 

 

ドキッとした。

女子だったら惚れてた。という言葉が脳を回る。

 

 

俺は男だから惚れたらいけないし、惚れることもないのか。そうだよな。

 

 

「氷溶けてきたね。昇降口までは歩かなきゃだし、軽く固定しよっか。」

 

 

保健室の先生が氷嚢の氷を新しく変えてくれて足首と氷嚢を綺麗に固定してくれる。

 

 

🟢「翔ちゃん、カバンこれであってる?」

 

 

少し息の上がった相葉くんが勢いよく戻ってきた。

 

 

🔴「速っ!う、うん合ってる。」

 

「じゃあ、テーピング終わったらついでに昇降口まで送ってあげてくれる?」

 

🟢「最初からそのつもりです!」

 

「いい男だね〜あんたは〜。」

 

🟢「いや〜そうですか〜?」

 

 

えへへと照れて笑う相葉くんを見ているだけでドクドクとうるさく鳴る心臓をぎゅっと抑えた。

 

 

 

🔴「ごめん。相葉くん。」

 

 

相葉くんに肩を貸してもらいながら昇降口までひょこひょことゆっくり歩き進む。

 

 

🟢「全然いいよ!それより痛くない?抱っこしようか?」

 

🔴「いや!いいよ!それは!」

 

 

お姫様抱っこされたことを思い出し、顔に熱が集まる。

 

 

🟢「ふふ、お姫様抱っこはしないから〜」

 

🔴「じゃあ、何抱っこ?」

 

🟢「普通の抱っこ?」

 

🔴「普通ってなに?」

 

🟢「わかんない」

 

🔴「なんだよそれ〜」

 

 

自然と笑いが込み上げる。

気を許して笑みが浮かび気持ちが軽くなる感覚がした。

相葉くんと一緒にいると落ち着くし安心する。

 

 

🟢「座って待ってる?」

 

 

昇降口に着いて少し段になっているところに腰を下ろして待っていることにした。

 

 

🟢「タクシー来ても一人じゃしんどいよね。一緒に待ってるよ!」

 

🔴「え!それは悪いからいいよ!」

 

🟢「いいよ。翔ちゃんといたいし。」

 

🔴「え…?」

 

 

聞き間違いかと思う。俺も同じことを思っていたから。

悪いからいいよと言いながらもっと相葉くんと一緒にいたいと思っている自分がいた。

でも、同じ気持ちでいてくれてるなんて思っても見なかった。気を遣わせないための嘘だと自分に言い聞かせてもどこがで期待してしまっている。

 

 

🟢「翔ちゃんが転んだ時、反射で走り出しちゃってたんだよね。」

 

🔴「ん?」

 

 

唐突に相葉くんがポツリと話し始める。

 

 

🟢「いてもたってもいられなかったんだよね。」

 

🔴「えっと…」

🟢「翔ちゃんのこと助けなきゃって思った。」

 

🔴「…そ、そっか。ありがとう。」

 

🟢「うん。どういたしまして!」

 

 

二人の間に微妙な沈黙が生まれた。

 

 

🔴「あ、あのさ、参考書なんだけど、」

 

 

なんとなく気まずくて気になっていた話題を持ち出した。

 

 

🟢「あー!うん!おすすめある?」

 

🔴「苦手教科とか教えてくれたからメールで伝えるけど…」

 

🟢「ほんとに?!」

 

🔴「うん、それに…もし良かったら勉強教えようか?」

 

🟢「え?」

 

🔴「あ、いや、教えるとか偉そうに言ってるけど、別に俺教えるの上手くないし、でも今日のお礼もしたいし、もし良かったら、一緒に勉強なんて…どうかな?と、思いまして…」

 

 

前半捲し立てるような勢いで口が動いていたのにだんだん自信がなくなって相葉くんから目を逸らした。

 

 

🟢「翔ちゃんってほんっとに可愛いね!!!」

 

🔴「えっ!?」

 

🟢「教えてよ!勉強!テスト期間だけ!」

 

🔴「うん…」

 

 

うなずいてチラッと相葉くんを見ると、初めて見るような優しい笑顔で俺を見ていた。

ドキッと心臓が跳ねたのが分かる。

 

 

🟢「翔ちゃん。」

 

🔴「な、なに?」

 

🟢「タクシー、来たっぽいよ。」

 

🔴「え?あ、タクシー?あ、あぁほんとだ。」

 

 

少し真剣な眼差しを向けられているかと思ったが、どうやら勘違いだったみたいだ。

ほら。と言って相葉くんが手を出して支えてくれる。

密着する相葉くんの身体は、細いのにしっかりしていて俺の頭が首にすっかりフィットするくらいの身長差だ。

ほどよく日に焼けた首が男って感じでかっこいいなと思った。

触れているところが熱でもあるみたいに熱い。

心臓は忙しなく鳴り、ドキドキと落ち着かないはずなのに、このまま近くにいれたらと思う。

 

 

 

たぶん、これが恋なんだろう。