続き
※相櫻
※BL
自己責任でお願いします🙇🏻♀️
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高校受験にはなんとか成功して、五ノ宮高校に通えることになった。
入学式の日、見に来ていた父方の祖母に
「うちの家系から五ノ宮に行く子が一人も出ないなんてことにならなくて安心したわ〜。お兄ちゃんが中等部で受かってたら最初から心配なんて要らなかったのに。まぁ、和くんが受かってくれたからおばあちゃん鼻が高いわ〜。」
捲し立てるような早口で言われたが、プライドなんてとっくの昔に無くしてしまっている俺は傷つくこともなかった。
俺が失敗した中等部受験に合格した3つ下の弟、和也が俺の制服のブレザーの裾を不安そうに掴んでいた。
「和、少し校舎は遠いけど俺もいるから大丈夫だぞ。」
「お兄ちゃん…」
不安そうな和に優しく笑いかけた。
「困ったことがあったらいつでもお兄ちゃんに言えよ?いいな?」
「うん!」
弟たちに過保護なまでに世話を焼くのはせめてもの罪滅ぼしだ。
大人しくて控えめな性格な和が五ノ宮を受けると言ったとき、自分の経験からプレッシャーに耐えられるか心配だった。
だからずっと、
『和、頑張ったことが大事だから、結果じゃない。和は今のままで充分いい子だからな?』
そう言って頭を撫でてやった。
嬉しそうに笑いながら俺に抱きつく和は、
まだまだ甘えたな手のかかる弟だと思っていたのに、難なく受験に合格した時は嬉しいような寂しいような気持ちだったのを覚えている。
「ねぇ、お兄ちゃん。」
季節は秋が近づき、夏に一度脱いだブレザーにまた袖を通す時期だった。
学校からの帰り道、いつものように土手沿いの道を2人で下校していると突然足を止めたニノが言った。
「ん?和?どうした?」
「俺たちはいつまであの家にいないといけないの?」
「…あの家が、嫌?」
「おばあちゃんもおじいさまも…母さんや兄ちゃんのこと悪く言うんだよ。俺は、兄ちゃんのために五ノ宮受けたのに、」
和の言いたいことは分かっている。
俺が中等部に落ちた時、母が息を引き取った病院で祖父母に言われた。
『お前が落ちたのは、あの女のDNAのせいだ。逃げるように死にやがって。』
『あの女に教育を任せた私がバカだった。』と。
母さんが常日頃、肩身の狭い思いをしていたのは知っていた。
だから、母さんのためにも受からなきゃという思いがプレッシャーだった。
母さんを少しでも楽にしてあげたかったのに、最終的に母さんを追い詰めたのは間違いなく自分だった。
「和、ごめんな。和1人にいっぱい頑張らせてたよな。…学校いやなら行かなくてもいいんだぞ?」
「…お兄ちゃんがいるから行く。」
和が学校に上手く馴染めていないことは薄々気づいていた。
父さんが社長に後継してから3年が経つ。
中小企業の心臓を一手に担っている大きな会社だから、恨みを買われることもライバル視されることも少なくない。
俺と和が通っている五ノ宮にはライバル企業の子供や、父さんの会社が抱える中小企業の社長の子供がいたりするから、居心地が悪いのは仕方ない。
特に、中学生はそれが露骨なのだろう。
調子に乗ってる、とか
偉そうだ、とか言われながら和が肩を押されているところを何度か仲裁に入った。
「お兄ちゃんは学校楽しいの?」
「んー、行きたくないとは思わないけど。和と一緒にいる方が楽しいかな。」
そう言って頭を撫でてやると嬉しそうに俺に抱きつく和は、まだやっぱり子供のような気がした。