続きです!

 

相櫻

BL

 

自己責任でお願いします🙇🏻‍♀️

 

 

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「じゃあ、気をつけてね!また帰ってきてよ?」

 

 

玄関で雅紀を見送る和の声を

一人、空き部屋で身を潜めて聞いていた。

 

合わせる顔なんてあるわけもなくて、心の中で頑張れと思うことしかできない。

 

 

「和くん、翔ちゃんのことよろしくね。何かあったらすぐ連絡して。」

 

「うん!ねぇ、まーくん。」

 

「ん?」

 

「お兄ちゃんのこと守って…?」

 

「当たり前でしょ。翔ちゃんは俺が守るから。」

 

「うん…!」

 

「あ、もちろん。和くんのことも俺が守るよ。」

 

 

盗み聞いた2人の会話に涙が出そうになるのを必死に堪えて、言い聞かせるように呟く。

 

 

「…出て行ったくせに。どうやって守ってくれんだよ。」

 

 

期待したらダメだ。

俺はお兄ちゃんなんだから、2人を守らないといけないんだ。

 

 

 

 

 

「昨日、大丈夫だった?」

 

 

教室に着いてすぐ松潤が話しかけた。

 

 

「え、あー、うん。大丈夫。ごめんね、急に。あ!ファミレスのお金、払うよ!」

 

「いや、それは全然いいんだけどさ。あの人誰だったの?弟って、和也くんだけでしょ?」

 

「…あー、あれも弟なんだけど、一緒に住んでなくて。」

 

「ふーん。かっこいいね、弟くん。あんまり似てなかったけど。」

 

「……別に、和とも似てねぇだろ。」

 

 

後ろめたさに目を逸らしてしまう。

 

我が家は複雑だ。

三人兄弟なんて軽々しく言えない。

 

 

 

帰り道、和はすごくゆっくり歩いた。

 

 

「和?どうした?」

 

「今日は、まーくんいないから帰りたくない。」

 

「雅紀は寮なんだから仕方ないだろ?」

 

 

和が俺に抱きついて泣きそうな声で話した。

 

 

「俺、3人でいたいよ…。」

 

「和…」 

 

 

ギュッと抱きしめてあげることしかできなかった。

小さくて華奢な和の肩は、中学1年生なんてまだまだ子供だと思い知らせてくる。

 

 

「お兄ちゃん、まーくんね、寮やめるかもって。」

 

「…は?あの学校は全寮制だから無理だろw」

 

「父さんに頼むって。」

 

「っ!?だ、ダメだよ!雅紀が父さんにたてついたら、」

 

「たてついたら、どうなるの?」

 

「…とにかく、それはダメだ。ほんとに雅紀がそうしたいなら俺が父さんに言うから…雅紀に聞いといて…」

 

「…うん。」

 

 

和は知っている。

どこまで知っているかは分からないけど、

頭の良い和がいつか俺から離れていってしまわないか心配で、せめて今だけでも俺に守られていてくれる和を精一杯抱きしめた。

 

 

 

ねぇ、雅紀…

こんな時にいつもお前を思い浮かべてしまう情けない兄を嫌だと思う?

 

ずっと会いたくなかったんだ。

雅紀に会ったら気づいてしまうとわかっていたから。

 

俺は雅紀に抱きしめて欲しい。

家族に対してではない愛を…

気持ち悪いと分かっていながら抱いているんだ。