続きです!
※相櫻
※BL
自己責任でお願いします🙇🏻♀️
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それから何日か経って、
和の頬の腫れもすっかり引いてきた。
「お兄ちゃん、今日からテスト勉強する?」
「あー、もうそんな時期か。」
学力テストが近づくと同時に季節もすっかり冬を感じさせる。
カーディガンを着た上からブレザーを羽織った和が少しモコモコしててかわいらしい。
いつもの帰り道も少し肌寒く感じる。
「まーくんもそろそろテストかな?」
「かな?和、今日から帰ったら晩御飯の前に勉強しような。」
「うん!」
ツンと鼻を刺す冬の近づく空気。
クリスマスイヴが誕生日の雅紀の顔が浮かんだ。
「来週から雅紀が帰ってくるから。」
「…え?」
乱れたシャツのボタンをかけ直しながら父が発した言葉をすぐには理解できなかった。
「寮が改装工事に入るらしい。1ヶ月だけ自宅から通わせろって学校から連絡があった。」
「1ヶ月…」
気だるい身体を何とか引きずってシャワーを浴び終え、部屋に戻る。
いつもならそのまま気絶するように眠ってしまうのに、
父の言葉が脳内で繰り返し再生される。
『来週から雅紀が帰ってくるから』
表現しようにない感情だ。
きっと和は喜ぶだろう。
家も今より賑やかになる。
なのに、どうしても逃げ出したくなる。
「1ヶ月もって…無理だろ…」
重くのしかかる身体の疲れと腰に残っている不快な痛みで、
いつの間にか俺は眠ってしまっていた。
夢には、雅紀が出てきた。
そして朝起きた時、汚した下着にため息をつく最悪の目覚めだった。
学校に行くのが憂鬱そうな和に少しでも笑って欲しくて、来週から雅紀が帰ってくることを告げると案の定わかりやすく嬉しそうにする和。
「え!?まーくん!?帰ってくるの!?」
「1ヶ月だけだけどな。」
「ぃやったーーーー!!」
「喜びすぎw」
「そりゃ喜ぶよ!だって1ヶ月間は3人で一緒ってことでしょ?!」
「まあな。あ、でもテスト終わるまでは今まで通り勉強優先だからな?」
「だーいじょーぶ!わかってるから!」
先までの重そうな足取りが嘘かのように軽快に歩く和を見て、頬が緩んだ。
こんなに素直に和が感情を見せてくれたことが単純に嬉しい。
でも…
「あ"ーー、ど〜すっかな〜」
「しょおくん?どうした?」
情けない声をあげて机に突っ伏した俺を前の席の智くんが心配そうに覗いた。
「…家のことで、ちょっとね。」
「弟くん?」
「まぁ…」
「どっちの?」
「っ!…ど、どっちのって…」
「和くんじゃない方か。」
「え、なんで…」
「しょおくん分かりやすいから。和くんのことなら悩まずに動けるでしょ?もう一人の弟くんのことになると何か躊躇ってるよね。」
「…。」
智くんにバレていたことに驚いた。
確かに俺は和のことなら躊躇せず行動に移せる。
でも、雅紀と関わりを持ちすぎると自分の気持ちが制御できなくなりそうで躊躇ってしまう。
「そういえば、しょうくん。」
「ん?」
「俺たち付き合ってることにしちゃったままじゃない?」
「…。っ!あーー!」
「忘れてたんだw」
「そうじゃん!変なことに智くんのこと巻き込んでたじゃん!ごめん!今度会ったら別れたことにしとくから!!」
「大丈夫だよ。それに前にも言ったでしょ?しょおくんとならほんとに付き合ってもいいって。」
「…さ、智くんってたまに読めないとこあるよな〜w」
「ふふ、そう?しょおくんの前では割と正直に自分を出してるけどね。」
穏やかに小さく笑って言う智くんは俺に癒しを与えながらも、どこか胸をザワザワさせた。