続きです!
※相櫻
※BL
自己責任でお願いします🙇🏻♀️
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人のお金でお風呂に入って、あげくコーヒー牛乳まで買った相葉くんはやたらご機嫌に隣を歩いている。
こういう人種は基本的に避けてきた人生だったから、慣れてなくて余計にイラついた。
「外は寒いけどお風呂入ったからあったかいな〜」
呑気に口から白い息を吐く相葉くんに、柄にもなく意地悪を仕掛けたのはやられっぱなしが悔しいから。
「先の人、追いかけなくて良かったの?」
「え?」
「相葉くんの部屋から出ていった女の人。彼女?怒ってたじゃん。あのまま返して良かったの?」
「フフ、翔ちゃんも結構そういうの聞けちゃうタイプなんだw」
「…別に答えたくないならいいけど」
「あの子、別に彼女じゃないからね〜。」
「え、そうなの?」
「ん。仲良しの女の子はいっぱいいるけど、彼女はいっぱいどころか1人もいないよー」
いや彼女がいっぱいいるのもおかしいだろ、と心の中でツッコんだ。
「じゃあ、あの人は…友達…」
「うん!でも、彼女になりたいって言われちゃって、それは無理って言ったら怒っちゃってさ〜」
「なんで、彼女は作らないの?」
「んー、そんな一人だけ特別には思えないから、かな?」
「っ!」
「ん?どうした?」
驚くリアクションを抑えられなかった。
まさか相葉くんが自分と同じような考えの人だったとは。
「特別に思えないって…なんで?」
「ん〜、なんでだろ?自分が一番好きだから?」
「ナルシストじゃん…」
自分に言っているように聞こえる言葉。
「でも別に自分を好きなのは悪いことじゃないでしょ?」
その素直さが何だかずるくてイライラする。
「相葉くんみたいにかっこよかったらそれでもいいけどさ、俺みたいなのは…」
自分が1番なんて簡単に人に言えない。
「翔ちゃんは自分のことが好きじゃないの?」
「嫌いだよ。こんな自分好きになんてなれない。」
誰かを特別に思えないのは、他人のことより自分のことが大切だから。
そんな自己中心的な自分が嫌だ。
誰のことも想えない俺は、誰からも大切に想われない。
独りぼっちの人生がずっと怖くて不安で、大嫌いだった。
「あ、ついた!」
相葉くんの声でハッとした。
気づけばアパートまで帰ってきていた。
先まで温まっていた体も少しだけ冷え、自己嫌悪に落ちた心は冷え切ってしまった。
「じゃあ、おやすみなさい。」
相葉くんの部屋の玄関の前でそう言い残して、自分の部屋へ向かった。
「うん、おやすみ、翔ちゃん。あ、ねぇ!」
「?」
お互い開いた玄関のドア越しに顔を合わせる。
「これからもよろしくね。お隣さん。」
「…あ、あぁ、お願いします。」
バタンとしまったドアの音はほぼ同時だった。
俺は、部屋の中に入ってから玄関のドアにもたれて少し動けなくなった。
なぜか鼓動が速くて、顔が熱い。
"これからもよろしくね。お隣さん。"
勝手に再生される相葉くんの声。
少しだけ口角が上がったミステリアスな笑みが瞼の裏に勝手に蘇る。
「な、なんだこれ…」
隣人は男さえも勘違いさせるとんでもない色男なのかもしれない。