自分からは出ない音が羨ましい。


少し努力すれば大概の音は出るから、絶対に届かない音はとても素敵。


沢山の羨望と沢山の憧憬。


自分からは音が生まれない。


私が綴る音は、以前に誰かが謳ったものかもしれない、依然として自分のモノとしては認識できないモノ達。


言葉しか出てこない。


言葉に抑揚という旋律が乗ればどれだけ素敵なことだろう。


抑揚は人間の感情であり、その言葉が誰かに届くにはやはり音が必要になる。


抑揚も音も旋律も。


総ては人間が生みだしていくんだ。


それをなぞっていく。


それが自分に染み入るまで。


好きな旋律を、好きなだけ歌いたい。


自己満足だって構わない、ただ邪魔されなければそれでいい。


だから、私は唄う。


音が出ない日も、泣きそうな日も、どんな日も。


きっと、音も声も出なくなったら消えてしまうんだと思う。


表現をしなくなれば、その存在が消えることはもう知っているから。


私の届かない音や、旋律、言葉を辿る為に、知る為にただ唄おう。


それらは総てが人間から出ているものだから。