12月23日午後5時30分。

俺が撮影してる最中に、抜け出してどこかに行っていたらしい社さんが帰ってきた。怒ってるような呆れてるような、複雑な顔付きで。

ここ数日、休憩時間や自宅に帰ってる間の記憶が曖昧な俺だが、仕事中はなんとか意識を保てている。

その間、社さんとした会話は自分のスケジュールに関してだけで、他のことはなにも話せていない。

最上さんのことは、相談を兼ねて話したいような、いつもは聞かれたくないことまで聞いてくる社さんが今回に限って何も言ってこない訳を聞くのが怖いようなで、自分から話を振ることができずにいる。


「蓮、ただいま。撮影は問題なかったか?」

「おかえりなさい、社さん。はい、俺的には問題なしです。雪で入りが遅れてる方がいて、俺を先に撮ってくれましたから、予定より随分早く終わっちゃいましたよ。次の移動は19時入りでしたよね?お昼食べる時間ありませんでしたから、社さん食事でもしてきてくださって結構ですよ。俺は車で仮眠でもしてますから」


「そうか・・・それじゃ、スケジュール調整はせずとも済むな」
「??なにか急な仕事でも入ったんですか?」

「お前が大事な仕事をし忘れてたんだよ」

「は?」

「おにいちゃんは情けないぞ!」
「何言ってるんですか、社さん。さっきから訳がわからないんですけど?」


「お前が馬鹿で、ヘタレで、目標を前に敵前逃亡しやがるから、こんなギリギリになって動く羽目になったんだぞ!反省しろ、反省!そして、ちゃんとミッションをやり遂げろ!」

「だから何を・・・」

「キョーコちゃんのことだ!!」


恐れていた話題を振られ思わず固まっていると、鬼軍曹と化した、社さんに頬をペチペチ叩かれた。


「これ以上腑抜けてる時間はないぞ!・・・キョーコちゃんと明日からのオフを過ごしたいなら・・・今すぐ動け!2時間以内に、キョーコちゃんと会って、明日の約束をとりつけろ!」

「最上さんは、誰か他の奴と・・・予定が・・・」

「ちゃんと確認したのか?キョーコちゃんはお前の方に予定があると思ってたぞ?キョーコちゃんのイブのっていうか、24日のイブから25日のクリスマスまでの予定ってのは、泊まりでどこかに行っちゃうみたいだぞ。でも、その最終の連絡はまだしてないらしい。あと2時間だけ待ってもらった。」

「で、電話・・・最上さんに!!」

「あ~~電話は無理だ、諦めろ!」

「は??」

「彼女にもいろいろあったらしくてな。不埒な男は全員シャットアウトされてる。彼女が今してる仕事があと30分で終わるから、そこでなんとか捕まえろ!○○テレビだ!携帯なんぞに頼らず、足を使え、足を!もう敵前逃亡は許さんぞ!行け!俺は次の現場で待ってるからな!」

詳しくは何も聞かせてもらえていない気もするが、最上さんと彼女の大切な誕生日を過ごす権利を・・・手に入れられるかもしれないということだけは理解できた。

そして、俺は走りだした。彼女のもとへと。

続く



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