「あなただけに意地悪ー元ラブミー部員達からの鉄槌4ー」


千織の手により彼女の黒いノートに書き出された、その被害内容は箇条書き状態で4ページ。それにひとつひとつの被害内容を加えていくと、軽く100ページを超えてしまった。


「なんか、こうして整理したものを改めて読み返すと・・・・・・あり得ないくらい酷いわね」


ノートを読み返しながら奏江が呟けば、素晴らしい速度でノート2冊分を文字で埋め終えた千織が肩をまわしながら尋ね、それをすまなそうに見つめながらキョーコが応えた。


「ほんと、あり得ませんよ!キョーコさん、よく1年も我慢できましたね」

「うん。こ~やって文字になったのを読むと・・・・・・確かに酷い・・・・・・我ながらよく耐えたと思うわ」



「これって、家出して済む話じゃないわよね。この悪行の数々を放置してたら大変なことになるわよ?」

ちょっとした復讐軽いお仕置き程度でも駄目ですよ」


「徹底的に叩き潰さないといけないわね、この嫉妬と独占欲で狂った男の根性を」

「そうですよ、人任せにしていたら、キョーコさんの女優生命がたたれてしまいます!今すぐにでも私達の手で、敦賀蓮に鉄槌を落とさねば!!



「そ、そうね・・・・・・?」(((゜д゜;)))



先ほどまでは奏江と千織と一緒になって蓮への怒りに燃えていたキョーコだったが、長話の結果、親友宅への家出が女の子同士のお泊まり会へと発展したことで、少々浮かれた気分となっていた。


そのことを察した奏江と千織は、被害内容の本当の怖さがわかっていないキョーコへの対応を含めた蓮への鉄槌作戦を練ることにしたのだった。


そして、翌朝、奏江と千織の手によりローリーに提出されたのが「敦賀蓮による最上キョーコへの被害報告書兼被害届」であり、その7日後には「敦賀蓮により大きなダメージを与えるための大作戦本部」と化した奏江宅にて練りに練られた「元ラブミー部による愛のムチ作戦」も許可を請うかたちではなく、応援要請用にと提出されたのだった。


こうして、彼女達の本音のままに言えば「敦賀蓮をギタンギタンに叩きのめしてキョーコの復讐を果たすための戦闘プラン」が、(社長を味方に引き込むために「愛」の文字で飾られはしたが)実行の第一段階、敦賀蓮の味方を根絶やし孤立作戦がスタートしたのだった。



以下が雨宮ノートのコピーで構成された最上キョーコの被害内容リストである。ほんの一部ではあるが。

会話について
1.男性との会話は仕事であろうともいい顔をしない。
2.男性との会話中に割り込んでくる。顔は似非紳士。
3.男性との会話中に大魔王を出現させる。
4.男性との会話中に割り込み、見せつけるようにイチャつこうとする。顔は夜の帝王。
以下悪化の一途を辿る内容が10まで続く。

友人とのお出かけについて
1.外出前までは笑って聞いているが出かける段階になると拗ねる。
2.外出の約束が入ってる日に、自分の用事に誘おうとする。
3.外出予定を聞くだけで拗ねてごねだす。
4.外出中に何度も帰ってこいと電話してくる。
5.外出の予定日に体調が悪い振りをする。
6.外出時に外に出るのを阻止しようとする。
7.外出は自分と一緒じゃないと許さないと言い出す。
以下悪化の一途を辿る内容が11まで続く

仕事について
1.自分以外との仕事の話を楽しそうに話すと途中で拗ねだす。
2.ラブシーンが’あると機嫌が悪くなり、放映時には嫌みをいいまくる
3.ラブシーンがあると見学と称してスタジオに乗込んできて、相手を威嚇する
4.ラブシーン後、消毒と称して、キョーコを楽屋に拉致しようとする
5.ラブシーン後すぐにかけつけ、消毒と称して人前でキスをする
6.自分以外の役者とのラブシーンがある共演作では、監督をそのシーンの必要性なしとの結論に誘導しようとする
7.ラブシーンがある仕事は断れといいだす
8.ラブシーンがある仕事はいつのまにか断っている
以下悪化の一途を辿る内容が15まで続く

服装について
1.自分が買った服を着せたがる
2.勝手に大量の服を買ってくる
3.肌の露出が多い服を着ると似非紳士顔でお説教をする
4.肌の露出が多い服を着ると夜の帝王顔で脅す
5.露出しないと誓いをたてさせようとする
6.露出できない状態にされそうになる
以下悪化の一途を辿る内容が10まで続く

お世辞について
1.誰かに容姿などを褒められると何故か怒られる
2.誰かに容姿などを褒められるとその場から拉致される
3.誰かに容姿などを褒められた話をすると大魔王になる
以下悪化の一途を辿る内容が20まで続く

視線について
1.男性と視線を合わすと相手を睨む
2.男性と視線を合わすと胸で抱きつぶされそうになる
3.男性と視線を合わすと浮気者扱いを受ける
以下悪化の一途を辿る内容が12まで続く

悪化の一途を辿った「以下」の内容は、誰が読んでも恐ろしすぎるものだった。

これでは、女性として普通に暮らせないだろう。

こんなことが続けば、女優の仕事などしようがない。

誰が読んでもそう思う「以下」のあり得ない内容。



敦賀蓮の暴走っぷりはうすうす感じてはいたものの、ここまで酷いとは思ってもいなかった面々は、被害報告としてまとめられたその内容に頭を抱えた。


「なんとかせなば!!」いや、「なんとかしてほしい!」



稼ぎ頭の常軌を逸した暴走っぷりを100ページもの報告書のカタチでつきつけられた関係者全員がそう思った。



こうして、元ラブミー部員による敦賀蓮への包囲網は完璧なものとなっていった。


そして、いつのまにやら孤立無援となっていた敦賀蓮への「元ラブミー部による愛のムチ作戦」は、家出から11日目に本格決行の時を迎えた。


続く



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