「あなただけに意地悪ー元ラブミー部員達からの鉄槌14ー」



「シンさん、貴方・・・・・・私のこと、好きなの?」

少女がそう言いながら振り返ってみると、いつもの強面振りはどこへやら、顔を真っ赤にさせ固まる(?)大男がいた。


「もう!その顔!その図体で乙女の如く赤面するのはやめて!見てるこっちが恥ずかしくなるから!!」

「い、いや、だって・・・・・・そう、ハッキリ言われると・・・・・・////」


「モテモテで、悪~~い遊び人の癖に気持ち悪いから!」

「酷いよ、フブキ・・・・・・」


男にとってその少女は汚い闇の世界で生きる自分では触れることもできない、奇麗な奇麗な存在で。明るい世界で光り輝くその姿は男には眩しすぎた。苦しくなるほどに眩しかった。

それでも。

どう足掻いても、自分からは目を逸らすことができない存在で。恋いこがれる気持ちを葬りさることもできない相手だった。

例え。

怖がられても、嫌がられてもいいから、その側に居続けたいと願ってしまう・・・・・・そう願ってしまう自分自身を全力で否定していたとしても。



その存在に隠していたつもりの気持ちを言い当てられた上に、気持ち悪いとまで言われてしまった男。


男にとって、こんな状況に追い込まれたのは初めてのことで、どう反応していいのかわからないようだった。そして、少し歪めた顔で、酷いなと呟いたきり、黙ってしまった。

面と向って、「気持ち悪い」と・・・・・側にいることを拒否するような、切り捨てるかのような言いようをされたことが哀しかったのかもしれない。

しばらくの沈黙のあと男は再び少女に語りかけた。

常の男の性質からは考えられない程、柄ではない表情・・・・・・まるで慈悲を請うかのような顔で、固まりかけたその口から言葉を絞り出した。


「俺が・・・・・・側にいるのも気持ち悪い・・・・・・・・・・・・のか?」



「そうね・・・・・・外は極悪人、中身は純情乙女な大男なんて、始末が悪いわね」

そう言って、男の方にツカツカと歩み寄った少女がしたことは。


ぐぃ!「ペロッ」



「な!!//////」

男のネクタイを掴んで自分の元に引き寄せたかと思えば、その唇を舐め上げたのだった。



「フン!続きはまた今度ね。バイバイ、シン!」


いつもと変わらない天使のような笑顔のまま、悪魔のように男を翻弄して去って行く少女。

そのあとには、ただ呆然と、その後ろ姿を見送ることしかできなかった男だけが取り残された。



「はい、カットぉ!」


「京子ちゃんヨカッタよ!京子ちゃんは、次の仕事の時間だよね、上がってくれていいよ。お疲れ様」
「敦賀くーーん!今のシンはちょい違うんじゃない?フブキの前のシンはギラギラした男じゃ駄目なんだよ?、ちゃんと乙女を入れてくれなきゃ!ってことで。敦賀くんはもう一回頼むよ。口舐められる前のとこまでのシンのカットだけ取り直すよ!」

「監督、敦賀さん、お先に失礼します」

自分の撮りにオッケーをもらい、一人だけその場からの退場を許されたキョーコが監督と俺に奇麗なお辞儀で挨拶をし、去っていこうとした。

「ちょ、ちょっと、待って!!ああ、監督、10分だけ時間ください!」

監督に一言断り、慌ててキョーコを追う俺。今逃すわけには行かないんだ!

「ま、待って!!」




続く



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