いつから放置してるんだかもう記憶にない、ブログ開設3日目に仕掛けた罠への自爆ドボン作。読み直すだけでは書けない気がしてきたので、修正しながら1話から順にアップしていきます。

素敵な獲物さん作でなくて、ほんと申し訳ないです。(´・ω・`)

魔人の作なんて、興味ないし!という99パーの方はバックプリーズ。

暇つぶしのために読んでやるぜ!という勇者さんのみ読んでくださいね。(;´▽`A``



逃げ足◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇逃げ足
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逃げる彼女をつかまえろ!第22話


「あ、来た来た、おはよう、京子ちゃん!」

ドラマ撮影の為、スタジオ入りしたキョーコは、自分を待ち構えていた様子のスタッフに声をかけられ、少し焦りながら挨拶を返した。

「おはようございます。あ、もしかして、もう来られてるんですか?お待たせしちゃったとか?」

「ダイジョーブ!ダイジョーブ!今日は用事があったみたいで朝から来てたけど、それが終わったのがさっきだし。一応男性だし、楽屋もだけど、メイク室や衣装室はマズイと思って、ちょっと五月蝿くて申し訳ないけど、スタジオの隅にね……場所作ったの。ほら、あそこ!」

どうやら、このスタッフは京子を案内する為に待ってくれていたらしい。

「あ!はい。有り難うございます!すみません、ご面倒おかけして」

仕事以外のことで手間をかけさせてしまったことに、キョーコが恐縮すると、スタッフは顔の前で大きく手を振りながら、それを否定してくれる。

「いいの、いいの。子供は遠慮しない!仕事はちゃんとしてくれてるんだから、これぐらいは甘えていいのよ。みんな応援してるんだから!!」

「有り難うございます。頑張ります!」

「それより、京子ちゃんは朝から学校に行ってたんでしょ?お疲れ様。ね、お昼は食べたの?」

すっかり保護者気分のドラマスタッフは、まだそんな歳でもないのに、母親の様に「京子」の世話を焼いてくれる。

「はい、今日も午前中だけですけど、なんとか。お昼はまだですけど、授業のあとでお握りでも買ってきて食べます。通信でも失礼でしたけど、流石に目の前では……」

「いいじゃない、そんなに気を遣わなくても、彼もここの身内みたいなもんだし、一緒に食べれば失礼とかじゃないでしょ?今日の楽屋弁当当たりなのに余ってるし、片手で食べられるの!あとで二人分もっていくわ!」

「でも……」

「このあと着替えとメイクの時間を考えると5分とか10分ぐらいしか空き時間がないし、私達もそのほうが助かるし!!」

礼儀を大事にし、人に気を遣う「京子」の操縦法に慣れたスタッフの駄目押し。これには、キョーコも素直に頷き、感謝するしかない。

「そうですか。では、お言葉に甘えさせていただきますね。いつも有り難うございます」

「いいのよ。それより、勉強頑張ってきて!あ、洋くん、京子ちゃん来たわよー」


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


15時過ぎに、ドラマのスタジオに入った蓮は、カメラの前で演技中の「京子」を見つけ、硬かったその表情を緩めた。

数日前に、マネージャーの社によって、携帯電話の使用を全面禁止にされて以来、キョーコに留守録を利用してメッセージを送ることも、その返事を返してもらえることもなくなった。

元々、蓮の電話は、仕事中ならかかってきても気にもしないような相手……モデルや俳優仲間などからの一方的な連絡が多かった。

それを承知している社は、携帯電話を没収しようとしたのだが、キョーコに出会う前の携帯電話の主な使用目的であった「辞書」機能が使えないのは、仕事に差し支える蓮は、今まで隠していたその使い道を暴露することで、なんとか没収だけは免れることができた。

そのかわり、携帯電話の「通話とメール」の使用を全面禁止にされたのだ。

毎日聞けたキョーコの(留守録の)声が聞けなくなり、運が悪いことに、それからしばらく共演現場でもすれ違いが続いた。

当然ながら、敦賀蓮のキョーコ不足は進みまくる。

勿論、これまでに携帯に録音されたメッセージや、撮り貯めたテレビの録画、雑誌の切り抜きは毎日見てはいたが、最早それだけでは埋められない餓えが日々、いや24時間、彼を襲っていたのだ。

だから、見つめた。

今、唯一禁止されていないこの方法で、その不足分を1パーセントでも補っておかなければ、自分を保っていく自信がなかった。

幸い向こうからの「入りと出」の2回の挨拶は禁止されていない。

今日は自分が後から入ったが、存在に気づいてくれさえすれば、挨拶しに来てくれる筈だ。

キョーコを目の前にしたときには、触りたくて、つい伸ばしてしまう両手に心の戒めをかけ、周囲のスタッフをこれ以上敵に回さないように失言に気をつけねばならないが、それでも、近くでキョーコを感じられることができるその瞬間が待ち遠しかった。

「カット!!」

スタジオに響く監督の声。そして、役者と共に映像をチェックしている。

「よし、京子と須賀さんは30分休憩してきていいぞ。田村は次、そのまま撮るから、スタンバイしてくれ!」

30分の休憩。今のキョーコはその時間を丸ごと休憩に使える筈はないが、少しはゆっくり挨拶してもらえるかもしれない。

蓮の中で期待が広がる。

しかし、その後、キョーコがスタジオの入り口に立っていた蓮に気づくことはなかった。

楽屋には向かわず、何故か、スタジオの奥に行ってしまうキョーコ。

そこで彼女は、出迎えた男に導かれ、親しげに言葉を交わしながら、衝立の奥に消えた。


「だ……れ……?」




<23>に続く

誰かは皆さんにはバレバレですが、蓮さんは知りません。


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