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乙女心と秋雨前線 前編
「乙女心と秋雨前線 中編」
ぎゅっ!
「え?」
最近一人暮らしを始めたマンション。
そのエントランスを出たところで、キョーコは横から出て来た腕により拘束された。
驚いたが、叫び声は上げない。
「っ!また、ですか……もうっ!」
肩にかけていたバッグの重みはいつのまにか消えている。
お気に入りの傘だけを抱えたキョーコを包み込む様にして抱きしめているのは……
いつもの男だった。
「やめてくださいって、お願いしましたよね?」
「だって、雨だし……」
広い胸に押し付けるようにして抱き込まれた頭を上に向けて抗議してみるが、満面の笑みを浮かべている男、敦賀蓮にはその抗議が通じない。
「いい訳になってません!」
「でも、雨は……久し振りだよ?」
「雨を理由に来るのは久し振りって、それは貴方がロケでいなかった期間だけでしょう!5日前の雨の日にも来たじゃないですか!!」
「そうだね、あれから会えなかったから、最上さんとは久し振りだよね。昨日の夜中に帰ってきたから、会えるのは今日の夜になると思ってたけど、雨だったし……ね?」
「ね?じゃありません!それに、今日の夜も約束なんてしてないでしょう?」
「んーーあ、遅刻しちゃうよ?」
最近の蓮との会話は非常に難しい。
噛み合わない会話の応酬に疲れた頃、急いでいたことと、ここがマンションのエントランス前という、人目につきやすい場所であることを思い出した。
「もう!じゃあ、私は学校に行きますので、敦賀さんはお家に帰ってゆっくり休んでください!今日の仕事はお昼からだって、こないだ仰っていたでしょう?」
「うん……帰るよ」
後編に続く
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そのエントランスを出たところで、キョーコは横から出て来た腕により拘束された。
驚いたが、叫び声は上げない。
「っ!また、ですか……もうっ!」
肩にかけていたバッグの重みはいつのまにか消えている。
お気に入りの傘だけを抱えたキョーコを包み込む様にして抱きしめているのは……
いつもの男だった。
「やめてくださいって、お願いしましたよね?」
「だって、雨だし……」
広い胸に押し付けるようにして抱き込まれた頭を上に向けて抗議してみるが、満面の笑みを浮かべている男、敦賀蓮にはその抗議が通じない。
「いい訳になってません!」
「でも、雨は……久し振りだよ?」
「雨を理由に来るのは久し振りって、それは貴方がロケでいなかった期間だけでしょう!5日前の雨の日にも来たじゃないですか!!」
「そうだね、あれから会えなかったから、最上さんとは久し振りだよね。昨日の夜中に帰ってきたから、会えるのは今日の夜になると思ってたけど、雨だったし……ね?」
「ね?じゃありません!それに、今日の夜も約束なんてしてないでしょう?」
「んーーあ、遅刻しちゃうよ?」
最近の蓮との会話は非常に難しい。
噛み合わない会話の応酬に疲れた頃、急いでいたことと、ここがマンションのエントランス前という、人目につきやすい場所であることを思い出した。
「もう!じゃあ、私は学校に行きますので、敦賀さんはお家に帰ってゆっくり休んでください!今日の仕事はお昼からだって、こないだ仰っていたでしょう?」
「うん……帰るよ」
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