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愛の言葉は難しい 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8

「愛の言葉は難しい 9-side Ren-」

帰宅後、冷凍庫の中に真空パックのキノコリゾットを詰めながら出るのは溜め息ばかり。

冷凍庫内に重ね置いたそれを少し眺めたあと、今日の夜ごはん分も取り出さずに扉を閉めた。

折角彼女が苦労して用意してくれたものだが、どうにも食べる気がしない。

彼女の作ってくれたキノコリゾットは美味しかった。

そして、今冷凍したものも美味しいに違いない。

でも俺は、今日から毎日これを食べ続けたいだなんて、露程も思ってはいなかった。

あれはただ、最上さんと一緒にいる時間を確保する為の方便であり。

ハッキリ言えば、嘘だったのだから。

ああいえば、少しだけでも時間が空いたときには、まず俺を優先してくれると思ったのだ。

少しだけ、朝ゆっくりできるときとか?

少しだけ仕事が早く終わったときに……とか?

彼女なら朝早くからでも、きっと来てくれる。

仕事を終えたあとでも、きっと……俺の願いを叶えてくれる。

恋人にはまだなれていないけれど、彼女は先輩である俺の本気の頼みを蔑ろにしたり出来る子じゃない。

「明日から毎日ご飯を作りに来ることは無理ですが、よろしければ来週また作りに伺いますけど?」

とか。

「すみません、どうしても無理なんです。でも、敦賀さんの食事事情は心配ですから、今度お弁当でもお届けしますね?」

とか、言ってくれると思ったんだ。

そうしたら、俺は。

「最上さんにばかり無理させるのは申し訳ないから、今度仕事が早く終わった日に食事に付き合ってくれないか?迎えにいくから……」

と、言えるだろう?いや、言えた筈なんだ。

だってそうだろう?

あの無理難題な我が儘をそのまま聞いてもらえるなんて……思わないじゃないか!?

お願いは断られる筈で、それを申し訳なく思う彼女に、未来の約束を取り付ける!

俺の用意した筋書きはこれ1本だけだったんだ。

なのに、こんなことになるなんて!

俺は夜中に若い女性である彼女をあちこち移動させる気も、少ない睡眠時間を根こそぎ奪うつもりも、仕事に支障が出る様な行動をさせるつもりもなかった。

───なかったんだ。

10につづく


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