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「愛の言葉は難しい 22-side Kyoko-」

「京子ちゃん、事務所から連絡あったわよ~」

自己防衛本能はどこへやら……どんどん酷くなる自己否定の中から自力では浮上することも出来ず、ひたすら暗い考えの中に沈みこんでいたキョーコの意識が、名前を呼ばれたことで急激に浮上した。


───キョーコちゃん、お客様の前に立つ以上、お客様にはいつもにこにこしてなあかんえ。どんなに体調が悪うても顔に出したらあかん。


そうよ。

私の周囲にいる人達はみんなお客様みたいなものだもの。

“京子” として、頑張らなくちゃ駄目……

これ以上迷惑をかけないようにしなくちゃ……

最上キョーコがどんなに役立たずであっても、体調がどんなにおかしくても、“京子” の仕事を途中で放り出すことは許されていないのだから。

俯き気味だった顔を上げる直前に、顔に “京子” としての笑顔を貼付ける。

「あ、加藤さん、お帰りなさい」

「ただいまぁ。スケジュール調整が終わったそうよ。今日はこのあとの海外スターとの対談だけですって」

「え?他の仕事は?」

「雑誌の取材関係は先延ばしか企画変更でカタがついたそうだし、バラエティーはうちのタレントや俳優を代替で放り込めたから。新規のバラエティーや料理本企画なんかも断ったり、うちの会社から別の企画持ちかけたりしてるそうよ。だから気にしないで大丈夫!そんなわけで、身体辛いだろうけど、京子ちゃんはドラマだけ頑張って頂戴ね」

事務所の人間にそんな手間をかけさせてしまったことで、キョーコの内面にまた傷が増えた。“京子” の仕事のほとんどを途中で放り出したも同然だと、報告された内容はそう告げていた。

だが、出来もしないことを出来ると言い張ることも出来ない。そして、まだ仕事は残されている。

この業界のプロである事務所の人間が、今の “京子” に出来ることが何であるかを判断し、残してくれた仕事が。

今はそれを全うすることに全力を尽くす他ないのだ。

「すみません。皆さん普段から忙しいのに、私が余計な仕事を増やしちゃいましたね。こんな...役立たずで申し訳ないですが、今できる仕事を一生懸命頑張らせていただきます」

「も〜何言ってるの!いいのよぉ、気にしなくて。それより、残念だったんじゃない?料理番組や料理本の仕事が出来なくなって」

「いえ……ご迷惑をかけちゃいますし、椹さんに新規企画は断っていただける様にお願いしようと思って……たので、丁度良かったです」

「そうなの?なんだか惜しい気がするけど」

「いえ……」

奇麗に笑ってはいるのだが、どことなく影を背負った “京子” の様子に、臨時マネージャーである加藤はこの話はやめたほうがいいと判断した。

「病院の先生が、疲れとストレス貯め過ぎじゃないかーって言ってたけど、カウンセリング本当に受けなくていいの?」

「大丈夫です。味覚障害は疲れが取れたら治るでしょうし…もうお料理の仕事をしないなら、今のところ問題ないかと」

「そう?でも、しばらくはさっき撮ってきたドラマ中心にこなして、身体休めていきましょうね!私も久し振りの現場復帰で燃えてるから、困ったことがあったら何でも言って頂戴!これでも5年前まで敏腕マネージャーって言われてたんだからね!」

5年前に家の都合により不規則なマネージャー業務から外れ、タレント部での後方支援業務をこなしていた加藤は、近々マネージャー業に復帰予定だったらしく、突然任命された臨時マネージャーの仕事も慣れた様子で楽しそうにこなしていた。

「はい、頼りにしてます」

「よっしゃー!京子のマネージャーとして、頑張るわよー!さっきの京子ちゃんの台詞じゃないけど、この役立たず!なんて、誰にも言わせないわ!」

ビクッ!

「え?京子ちゃん?どうしたの?」

突然顔色を悪くした “京子” の様子に焦った加藤だったが、数瞬のち元通りに微笑まれたことで疑問に思いながらもその場は流したのであった。

(今の台詞って地雷的なもの?“京子” の背景とか、少し調べたほうがいいかしらね。不調の原因も突き止めないと不味いし)

“京子” 同様に内心を悟らせない笑顔で応対しながら、加藤は今回の原因追求と今後の対処法について考えを巡らしていたのだった。

23話に続く

加藤さんファイトー!

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