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「愛の言葉は難しい 34-side Kyoko-」

夜中にふと目を覚ましたキョーコは、いつものようにスリスリと隣で眠る身体にすり寄った。

そして、眠っている筈のその人の手が頭にまわり、ぎゅっと抱きしめてもらえたことに安心して、また目を閉じる。


******


あの料理番組収録時に始まったストレスを原因とする体調不良は、味覚障害以外にも様々な症状でキョーコの日常生活や芸能生活を脅かすこととなったが、仕事の量を減らしたことで、体調の方は徐々に回復してきていた。

崩壊しかけていた精神面も、マネージャーである加藤との二人三脚とも言える同居生活を送るうちに、安定するようになっていった。

社長宅、そしてキョーコの自宅で過ごした日々、新たな症状が出る度に、加藤はキョーコの手を握ったり、肩を抱いたりしながら、優しく、そして丁寧に、キョーコ自身が否定した “自分の価値”を、認めさせていった。

小さな子供を諭す様にやさしく、しかし、理路整然と否定できない言葉を並べ、問い、そして、結論を導く。

それでも、納得できないとき、加藤は、キョーコに自身の思考を紙に書き出させた。

そして書かれていた否定的な言葉を、キョーコ本人と二人掛かりで、ひとつひとつ理由を書き加えながら消していった。

味覚障害については、割と早く改善された。

体調と精神が安定しだしたことで、自分の食事は普通に摂取できるようになったのだ。

そこで加藤は、“今までずっと美味しい料理など作れていなかったに違いないが、我慢して食べてくださった方々のお世辞を鵜呑みにしてしまっていた” というキョーコの妄想とも言える自己否定を打ち消す為の行動に出た。

何人もの高名な料理人の料理を食べさせては、それをどのように美味しいと感じるかという、試験の様な味覚実験を繰り返し、自分の味覚レベルを認識させていったのだ。

そうしていくうちに、キョーコの中で、“とりあえず自分の味覚は正常らしい” という結論が導きだされることになり、それを受け、今度は料理修行と称して、弟子に厳しいと有名な料理人のもとに賄いを作りにいき、文句も言わず残さず食べてもらえれば合格!という試練に挑んでいるのが現在の状況である。

勿論、ここまでくるには時間もかかっていた。

当初は、自宅のキッチンを見ただけで気分が悪くなってしまったのだ。

加藤がキョーコの家に泊まった初日。来客にお茶でも……と思ったキョーコはそれさえもできぬ身体になっていたことに愕然とした。

そこからは広めのワンルームの一角にあるキッチンスペースを目隠しで覆う生活となった。

夜は何度も、嫌な夢を見ては飛び起きを繰り返す生活の中、姉のような母の様な加藤の存在はキョーコにとってなくてはならないものへとなっていった。

連日夜中何時であろうと、キョーコが目を覚ます度に一緒に起きて、温かい飲み物を飲ましてくれたり、あやす様にやさしく身体をさすりながら話しかけてくれたりする加藤。

家でも仕事場でも、他の人に対する10倍はキョーコに優しい加藤の、本人曰く「キョーコ愛」のなせる態らしい気遣いは、ホカホカと温かい真綿に包まれているような安心感をキョーコに植え付けていった。

どんなキョーコも受け止めてくれる存在。

今のキョーコにとって、加藤はそんな存在になっていたのだ。

そして当然の様に信頼度も上昇し、キョーコの方でも加藤という人間がどんな人間であれ受け入れてしまえる存在へとなっていった。

だから、平気だった。

加藤の秘密を知らされても。

3週間前に、加藤と共に引っ越して来た新居での生活は快適で、キョーコの心の傷はもうほとんど痛むことない程度まで癒やされていた。

その変わり、某先輩に対する新たな謎が生まれはしたが、まだ心に余裕のないキョーコはそのことについて深く考えることを加藤により禁止されていたので、思い悩んでまたストレスをためることなく、将来の仕事完全復帰の為の自己調整に励む毎日であった。

35話につづく

加藤さんも実は大きな大きな秘密もちーw

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