拍手御礼からの移動です。
魔人の駄作は受付NGな方は、バックプリーズ!!(・∀・)

愛の言葉は難しい 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12 / 13 / 14 / 15 / 16 / 17 / 18 / 19 / 20 / 21 / 22 / 23 / 24 / 25 / 26 / 27 / 28 / 29 / 30 / 31 / 32 / 33 / 34 / 35 / 36 / 37 / 38 / 39 / 40 / 41

「愛の言葉は難しい 42-Yashiro-」

加藤とキョーコが仲睦まじくダイニングルームに移動する様を、暗雲を背負った担当俳優と共に背後から眺めることとなった社はこの食事会の意図を的確に把握しながらも、複雑な気持ちになっていた。

社長はともかく、加藤は甘くない。

この食事会が蓮に与える最後のチャンスのつもりだろうことは容易に予想がつく。

例えその目的がキョーコの精神ケアの為であったとしても、これは彼からすれば蓮への激甘なプレゼントなのだから、次のチャンスなど来ないと思ったほうがいい。

キョーコの誤解を解くこと。

今日の食事会でそれが出来なければ、蓮の恋路はヘタレてなくても困難なものになりそうだった。

───お前がヘタレてなかったら!キョーコちゃんとはとっくの昔に恋人同士で、結婚の約束なんかも出来ちゃったりしてたかもなのになーー!ああ、ヘタレって怖い症状だなー。(←病気扱い)

複雑な思いで心配しながらも、ここ数カ月、どんなにお尻を引っ叩いても煮え切らず、動こうともしない蓮に呆れ返っていた社の感想は突き放すまではいかないまでも、これまでの彼からすれば少々乾いたものになっていた。

───あとはもう、蓮が頑張るしかないからな!俺はキョーコちゃんの料理を美味しく食べるぞー!社長や加藤さんとの掛け合いは蓮に任す!俺は知~らない、っと。うん、出来る限り、知らんぷりだ!無理でも頑張るんだぞ、俺!

食事を楽しみにする位しか、多分!きっと!居たたまれないこの御呼ばれを乗り切るすべがないであろうこともあったが、それでも絶対!乗り切れない気がする諦めと察しのよい社であった。

「本日は皆様お忙しい中、お集まりいただき、有り難うございました。私の手作りで申し訳ないですが、お食事の準備が出来ておりますので、順番にお持ちしますね」

緊張した面持ちで、丁寧な挨拶をし、奇麗なお辞儀を披露したあと、キッチンに消えたキョーコのかわりに、社長の執事が給仕を始めた。

ANTIPASTOとして出て来たのは、サラダやマリネの3種盛り合わせ。カットされた天然酵母のフォカッチャもテーブルの真ん中に置かれた。

キョーコの席も用意してあるようだが、そこは空席のまま、加藤の合図により食事を始めることとなった。

「ん、美味しい!」「旨いな!」「凄くっ、美味しいです!」「……」

───お、美味しい!!前菜だけ食べてもキョーコちゃんの料理の腕の凄さがすぐにわかるのに、これで自信喪失になっちゃうんだもんな。蓮の存在がそれだけ大きかったってことなんだろうけど……はぁ……蓮の奴ほんと、罪作りだよ。

久し振りに食べたキョーコの手作り料理の美味しさに改めて感心した社は、一口づつゆっくり味わいながら、周囲の様子に目を配った。

隣に座っている蓮は無言だが、ローリィも加藤も満足そうに笑顔で食事している。

次のPRIMO PIATTOの皿も執事が持って出て来たときには、キョーコはキッチンから出ないつもりかと、心配になったが、執事のあとにその姿はあった。

自分と加藤の分の皿を持って、それをテーブルに置いたあと席についたキョーコの顔色はさえなかった。

「お、お口に合うかわかりませんが、プリモピアットはキノコのリゾットです。リゾットがお口に合わない場合はサルティンボッカをお出しいたしますので、フォカッチャと共にそちらをお召し上がりください。あと、セカンドピアットはオマール海老の香草焼きをご用意しております」

俯き気味に早口でそう言いきったキョーコは、微笑みながら頷く加藤に視線を向けたあと、ANTIPASTOを飛ばしてリゾットを食べだした。

そろそろと。味わうように。

その様子を観察しながら、残りの者もそれを口に運ぶ。

「旨っ!なにこれ!さっきの前菜も美味しかったけど、キョーコちゃんこれめちゃくちゃ美味しいよ!」

出来る限り存在を消して食事を楽しもうと決めていた社だったが、あまりの美味しさに興奮してしまい、食事の席には似つかわしくない程の大声をあげてしまう。

しかし、それは彼一人ではなかった。

「最上君、これほど旨いリゾットは初めて食べたぞ!おかわりも出来ればお願いしたいんだが、あるかね?」

「は、はい!」

「キョーコちゃん、俺もいい?」「じゃ、俺も」

笑顔になったキョーコが席を立とうとしたところに、それを制するようにワゴンを押した執事が出てきて、食べ終わった皿とおかわりを入れたものを入れ替えていった。

浮かせた腰を再び椅子に戻したキョーコに、賛辞を贈りながら、再びリゾットを頬張る一同。

その中で加藤の贈った賛辞はご機嫌だった社の胃に嫌な刺激を与えるものであった。

スッと、横に座ったキョーコの頭を抱き寄せた加藤のスマートさと、動じずにそれをナチュラルに受け入れるキョーコ。

耳元にキスを贈りながら「キョーコ天才!めちゃくちゃ旨いよ、今日のリゾット!」と、耳元で囁く意味があるのか漏れ聞こえまくりな加藤の甘い声。

それが部屋と胃に響く。

ガタン!

その次に響いたのは、隣の男が椅子をひっくり返す勢いで立ち上がった音だった。

「あのっ!失礼ですが、貴方はどなたですか?」

口調は丁寧だが、声は地を這う低さだ。

「俺?俺は京子のマネージャーで、キョーコの同居人のミナト・カトゥッロ・宝田だけど?」

震えだしたキョーコを自分の膝の上に抱き寄せた加藤の口から出た名前に、ある程度予想はついていた筈の社も衝撃を受けたのだった。

43話に続く。

あれ?加藤さんの正体は本名だけで終わってしまったー!
(ここまでは皆様予想通り?)
でも、まだ続きます!

お気に召しましたら、ポチッとお願いします。
一言だけでも感想などいただけると嬉しいです。
拍手はこちら


こちらも参加中!
スキビ☆ランキング