魔人の駄作は受付NGな方は、バックプリーズ!!(・∀・)

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「愛の言葉は難しい 45-Ren-」

蓮の前からだけ下げられたセコンドピアットの皿。

代わりにおかれたサルティンボッカは、手の込んだキョーコの料理に馴染んだ蓮にとっては、少々違和感のあるメニューに見えた。

チキンの上にプロシュットとセージの葉がのったそれは、日本人なら酒のつまみと思うであろう簡単な料理である。

キョーコが作ったものならどんなものでも美味しく思える蓮だから、それが酒のつまみとして提供されたものなら、素直に喜んで食べるであろう品であり、実際それなりに美味しそうには見えた。

でも、今の蓮には、それと引き換えにしたのが、先程の皿の中身だけじゃない気がしていた。

ハッキリはしなくとも。

───どうして?俺だけ?さっきの皿を食べたくないなんて言ってないのに……。ああ!でもそれより!!最上さんどこに行ったんだろう?次に出て来たら、ちゃんと話しかけないと!なんて言えば……!!

蓮としては、やっと手に入れたキョーコとの接触のチャンスを逃さないことが何よりも重要であった。だから、理解不能なもてなしには疑問を抱きつつも、次にキョーコが姿を見せたときへの対応を必死に考えていた。

しかし、傍目にはじっと皿を見つめるだけで、相変わらず手は動かないし、口も開かない、礼儀を忘れた男にしか見えなかった。

その間に、他の面々はセカンドピアットのオマール海老の香草焼きとコントルノの温野菜を平らげ、ドルチェのティラミスを堪能していた。

通常であれば、ある程度同席のものと食べるスピードを合わせるのがマナーであるし、遅い人間に合わせる気遣いも必要ではある。

だが、今回の蓮は遅いもなにも、食べる気があるのかどうかすらわからない状態であり、周囲の者も料理を出す執事も、彼には構わず食事を進めていた。

気遣いの出来る男と言われてはいたが、食事に関することだけは常日頃行動を共にしている社にも日常的に配慮が欠落してしまう蓮である。

それは、例え相手がキョーコであっても同じであり、目の前の相手の腹から限界を告げる合図あるまでは、食事のことなど思い出しもしない。

キョーコが絡むときには、自分から言いだすことも多いが、その多くは一緒に時間を過ごす口実として繰り出されるアイテムのようなものでしかなかった。

だから、目の前に気を遣いたい相手がいない今この場で、彼の思考はますます食事から遠のいていった。

執事により、ローリィにディジェスティーヴォ(食後酒)のグラッパが、ミナトと社にエスプレッソがサーブされたことにも気付かずに、俯き加減だった顔を上げた蓮の視線は、キョーコが消えたキッチンに向けられた。

───全然戻ってこないじゃないか。ここで待ってるより、探しに……行ったほうがいい…のか?

蓮がその決断をし、席を立ちかけたとき、ローリィや社との軽いおしゃべりにはホストとして応じながらも、蓮に対しては徹底的に無関心な様に見えたミナトから声がかかった。(←話しかけられない限り、蓮には視線すら向けないミナト氏。キョコさんがいるときには主にキョコさんを見てましたしねー!)

「敦賀君、悪かったね。気にしないで帰ってくれていいよ。ま、本当なら招待を受けたときに断って欲しかったけどね」

「え?」

「食べたくもない食事にお付き合いいただき有り難うございました。帰りたいんだろ?遠慮せずにどうぞ?何なら玄関までお送りしましょうか?」

ミナトの口調は丁寧だが、その声や表情は冷たい。

キョーコのことで頭が一杯だった蓮は、漸く気付いた。

目の前の席にずっと気を張って接しなくてはならない相手がいたことに。

───うわっ!俺また何かやらかしてたのか!?

「いえ。お招き頂き、非常に嬉しかったです。帰りたいなんてとんでもない!」

慌てて笑顔を作り、取り繕うがミナトの視線が弱まる気配はない。

現在周囲にいる人間は、蓮が食事中に何をしてようが気にしない数少ない人間ばかりだったことが蓮を追い詰めていた。

常ならしない周囲のことを無視しているかのような行動を無意識にではあるがとってしまっていたのである。

46につづく。

蓮さんピンチ!そろそろ、ミナトさんの怒りが爆発?

☆イタリアンコースメニューについて。
ANTIPASTO(アンティパスト=前菜)
PRIMO PIATTO(プリモピアット=1番目の皿)
SECONDO PIATTO(セコンドピアット=2番目の皿)
CONTORNO(コントルノ=野菜の付け合わせ)←別注文
DOLCE(ドルチェ=デザート)
DIGESTIVO(ディジェスティーヴォ=食後酒)



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