拍手御礼からの移動です。

「敦賀蓮氏の御礼の程は」

「ねぇ、最上さん。何かほしいものない?」

敦賀さんからその質問をされること数十回。

それはもう、会う度にほぼ100パーセントの確率で聞かれてました!

「そうですね、演技力でしょうか!」

「うーん、少しぐらいは大人っぽい体形になりたいですね!」

「地味な私ですから、芸能人としての“華”がほしいかも?」

最初の頃は結構真面目に(切実に)欲しいものを答えていたと思う。

でも、10回をこえたあたりから、段々イライラしてきて……

───何のリサーチ?好きな女性に贈り物をしたいんだったら、本人に聞いたらいいじゃない!

だから、途中からは営業スマイルでこう応えたわ。

「いえ、特に何も」

それでもしつこく聞かれるから、最後にはキッパリ言ってさしあげたの。

「人様にほしいと言える様なものはないです!ほしいものは自力でなんとかしますしね!」

───貴方がほしいって答えてもくれないくせに!!

素直に答えられる筈のない私には、もうそう応えるしか道がなかった。



いつもいつも私の答えに、困った様な顔をしていた敦賀さん。






でも、本当に困ってるのは…


困ってしまったのは…


私です!!





ホワイトデーの夜。

あれよあれよという間に、敦賀邸に連れてこられていた私。




何故かはにかんだ笑顔で通された部屋は…

足の踏み場がないほどの「モノ」で溢れかえっていた。

「ホワイトデーのお返し…どれがいいか決められなくて…ちょっと買いすぎちゃったかもしれないけど、最上さんに似合うと思うものばかりだし、受け取ってくれる?」

───はぁ?

───ホワイトデーのお返しは例え20倍返しでも、この足元にあるバッグの1/10位でいい思います!!

「ねぇ、敦賀さん……これはどなたへのプレゼントですか?」

「勿論、最上さんのだよ!」

ギギギギギ

なんだか動き辛い首で無理矢理振り返ってみれば、何故か驚いた様な顔をして私を見つめている敦賀さんがいて。

───ほんとですか!嬉しい!って言ってくれないの?って顔だわね。

でも。

でもですよ?

「はい、有難うございます!(〃∇〃) な~んて、言えるわけないでしょう!!」

「え?」

───え?じゃありません!

積み上げられてるのが新品じゃなかったら、この部屋は汚部屋ですよ!!

尋常じゃない散らかりようですよ?



っていうか、ここはどこの店の倉庫ですか!!!

お店1軒分は余裕でありますよ!

「敦賀さん、意味不明な無駄遣いはやめてください!!」

「意味不明なんてことないよ。俺はホワイトデーのお返しを……」

「お返しなら、先日の食事で十分です!これは返してきてください!代金をお支払いできたらいいんでしょうけど、こんなにあったら私には払いきれません!」

───何?そのワンコ顔は!!やめて!!その顔されると弱いんだから!!

「返せないよ?もう……」

「え?そんな!!勿体ない!!どうするんですか、これ!」

「勿体なくなんてないよ。最上さんが使ってくれればいいんだし、ね?」

「ね?じゃありません!もう!!」

───私は怒ってるんですよ?なのに何故貴方はそんなに嬉しそうなんですか?

「まぁまぁ。とりあえず、これに着替えて……いや、こっちの袋に、いや、あっち?」

「嫌ぁああ!敦賀さん、袋を適当に破いて開けるのはやめてください!返せなくなっちゃうじゃないですか!!」

「袋はもういらないし、面倒くさい……」

「いや、面倒なら開けなくてもっって!!また!!ぎゃーーーー!!」


最上キョーコがたまに寝起きしているその敦賀邸のゲストルームが、再び泊まれる状態になるまでには、その後1ヶ月の期間を要したという。


fin  

キョコさんが諦めて持ち帰るなり、この部屋のクローゼットに仕舞うまでに、1ヶ月かかりました!
その間の攻防も、蓮さんは「最上さんとの触れ合い期間」として、楽しまれたようです。


お、お粗末様でした。(土下座!)

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