拍手からの移動のパラレルファンタジーです。

あの森を目指して 1 / 2

拍手御礼「あの森を目指して 3」

「ヨッコラショ!」

年寄りの様なかけ声と共に、左肩にまとめるようにして担いでいた保存食の入った数個の包みを宿の壁に備え付けられた棚に載せ終えたキョーコは、今度はテーブルの上に腰に吊るしていた袋から取り出した薬草の束を並べた。

テーブルの上には、宿のこの部屋から市場まで3往復する間に入手した様々な薬草がすべて並んでいる。

壁の棚の上と窓際の長椅子の上には保存食や石鹸、包帯にもなる清潔な布や様々な効能のある香油類とマントなどが。床には防水加工された大きな薄い布やロープ類、携帯用小型ランタンを幾つかとオイルやロウソクの類いが置かれている。

「うふふ、薬の材料は完璧ね!これであそこまで無事辿り着けそう。予定してなかったけど、この先に高く売れそうな薬の材料が幾つも揃ったのはラッキーだったわ!」

街によっては、貨幣や宝飾品よりも貴重な薬の方が役に立つことも多い。それに加え、他の貴重品に比べ持ち運びしやすい軽さなのもキョーコからすればポイントが高かった。

「これで薬の残量に怯えながら明日の朝出発なんてハードなことをしなくて済むし、残りの買物もじっくり出来るわね」

明日の朝に立つならば、旅の準備が完璧ではなくても一番重要な薬作りに時間を割かねばならなかったが、もう一晩泊まれるなら話は別だ。

薬は今日と明日の二晩かけて作れば良いのだから、日中は買物に集中出来る。


「さてと、あとは武器屋と古馬車屋…ね。それと…うううーーん、もう少し迫力を出したほうがいいかしらね?」

部屋の姿見で自身の姿をチェックしたキョーコは、慣れた手つきでメイクや髪型をチョイチョイと直し、購入したばかりの品の中から取り出した数本の革をぐるぐると腕や頭に巻き付けた。

「んー、まっ、こんなもんかな。時間があればもう少し “それっぽい服” も買い揃えたいところね」

故郷を立つ前に秘かに受け取った餞別の一部を身に纏った効果か、ごった返す市場で絡まれることもなかった。

今から行くつもりの武器屋や古馬車屋でもそれなりの対応を受けたいと、キョーコは故郷で武術の指導をしてくれた幾人かの“師匠” のアドバイスに従い身に纏っていた “旅慣れた剣士の装い” をより “それっぽい” ものへと直し、キョーコはまたも市場へと飛びだした。

ちなみに彼女が身につけている剣は飾りで身につけてる者など皆無な流派の剣であり、師匠達曰く「キョーコの剣技が確かなことを歩きながらアピールしてくれる便利なもの」だそうである。


第4話につづく


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