拍手からの移動のパラレルファンタジーです。
あの森を目指して 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 11 / 12 / 13 / 14 / 15 / 16
拍手御礼「あの森を目指して 17」
突然に向けられた刃。
それに視線を奪われながらも、男はまったく反応出来なかったし、危機感すら持つ暇がなかった。
「生かしておけないっ!!そうよっ!生きてちゃいけないのよぉおおっっっっ!」
細身ではあるが、決して剣を扱えない者の護身用には見えないソレの鋭い切っ先は台車に横たわっていた男の喉を…狙うことなく、クルリと逆手に持ち直され、女自身の喉にピタリと充てがわれたからである。
先程まで怒りでその顔を赤や青に染めていた女───キョーコの顔には、今や怒りではなく絶望の色が浮かんでいた
それを見つめる男は金縛りにあったかのように固まったままである。
剣を抜いた瞬間に男に向かってほんの一瞬放たれた殺気は既に霧散している。その代わりに現われた絶望に染まった空気が、今彼を追い詰めていた。
「もう生きていけないっ…いえ、生きる価値がないわ…こんな、こんな私なんてっ!」
昼間でも薄暗い毒の森に相応しいをオーラを背負ったキョーコは地面を這う様な低い声でそう吐き捨てた。
尋常じゃない様子のキョーコをなんとか宥めようと、男はぎこちない動きしか出来ない腕を伸ばしたが、それを読んでいたかのようにスッと後ろに下がった彼女にはそれが届かない。
重病人の自覚のある男がこんなところで治療と世話を放棄されたくないと保身に走るならば、もう少し機転を利かせることが出来たかもしれないが、このときの彼はただ訳もわからず焦っているだけで、どうすればいいのかわからずある意味途方に暮れていた。
「…アアア…オオッノッ」
声をかけたいが、この言語を操って会話する能力などない彼には相応しい言葉など浮かばない。会話など随分長い間してない彼の喉からは、意味不明な擦れた音が漏れるのみである。
「ハレンチナコトヲシテタノデハナイノ、アレハチリョウナノ、デモハレンチナノッ!ウウウウウっモウダメナノォオオオオ、ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
大きな瞳に涙をいっぱいに湛えたキョーコは、彼に訴えかける様に叫んだあと身を翻し、剣を握る腕に力を込めた。
───っ!!!
《駄目だ、死ぬなっ!!ゲホっ》
そのとき、彼が必死に叫んだ言葉は遠い故郷の言葉。
通じる筈のないその言葉を発していることにも気づかず、彼はキョーコの行動をなんとか止めようと必死に言葉を紡いだ。
《死んじゃ駄目だっ!剣を離すんだ!!ゲホゲホゴホッ》
叫ぶことにまだ慣れない喉が限界を告げても、彼は必死に声を上げ続けた。
《ゲホゴホッ、何故自害しようするっっ!やめ…ゲホ…ウッ!やめっゲホ…ろっゲホゲホゴホッッッッッ!!グッッ!》
───ぐっ!!!
いつのまにか無意識に起き上がろうしていた彼は、それを成功させることなく台の上に沈んだ。咳き込んだことで傷だらけの身体に激痛が走ったのだ。それでも、今の彼にはしなくてはならないことがある。
───お、おんな、は?
痛みに襲われたことで、思わず目を離してしまったことを後悔しながら、横たわったまま視線を巡らしたが、既にキョーコの姿は消えていた。
───止められなかったのかっ?
焦って再び起き上がろうとした彼がそれを叶えることなく、台から転がり落ちそうになったとき、それはさっと差し出された。
───!!!
細いが力強い腕が、彼の身体を支えたのだ。
男を台の上にそっと横たわらせたキョーコの顔は既に落ち着き払っていた。
「ごめんなさい、ちょっと動揺しちゃったけど、もう大丈夫だから」
───い、生きてたっ!
安堵のあまり、全身の力が抜け、それにより少し痛みがマシになっていく。
「治療してる人間が、患者に危害を加えるなんて最低よね。ほんとごめんなさい」
先程までのことが嘘の様に、静かにかけられる言葉。
───『ごめんなさい』は、謝罪の言葉だった筈。もう大丈夫なのか?
「ところで。ねぇ、貴方私のこの言葉はわかっているの?さっきキニシナイとかヨカッタとかはしゃべってたわよね?」
「?」
眉をクニョリとへの字に下げて謝罪の言葉を紡ぐキョーコに、何故か罪悪感をもってしまった彼は、謝罪を受け入れたことを伝えようとコクコクと頷いてみせたが、それを見たキョーコが投げかけたこの言葉は理解できなかった。
「うーん。わかってないみたい…ね。わかるとしても単語を少し程度で会話は無理っぽいかも…」
質問されている気はするが、内容の方はまったく理解出来ていない彼には、頷いていいものか、首を傾けたほうがいいのかの判断もつかない。
「はぁ~」
溜め息をつかれても、どうしようもない。
───会話…したほうが良い気がするけど、俺の知ってる単語じゃ無理だ…よな?
気まずい雰囲気が二人の間に流れ出していたが、それを破ったのはキョーコの方であった。
第18話(限定公開)につづく
見せ場なしで、地味に17話終了。
うううっ、ごめんなさい。
奇特読者さんとの間に気まずい空気…嫌ぁぁああああん!๐·°(৹˃̵﹏˂̵৹)°·๐
そして、次は桃ではないのに、破廉恥過ぎて限定です。
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突然に向けられた刃。
それに視線を奪われながらも、男はまったく反応出来なかったし、危機感すら持つ暇がなかった。
「生かしておけないっ!!そうよっ!生きてちゃいけないのよぉおおっっっっ!」
細身ではあるが、決して剣を扱えない者の護身用には見えないソレの鋭い切っ先は台車に横たわっていた男の喉を…狙うことなく、クルリと逆手に持ち直され、女自身の喉にピタリと充てがわれたからである。
先程まで怒りでその顔を赤や青に染めていた女───キョーコの顔には、今や怒りではなく絶望の色が浮かんでいた
それを見つめる男は金縛りにあったかのように固まったままである。
剣を抜いた瞬間に男に向かってほんの一瞬放たれた殺気は既に霧散している。その代わりに現われた絶望に染まった空気が、今彼を追い詰めていた。
「もう生きていけないっ…いえ、生きる価値がないわ…こんな、こんな私なんてっ!」
昼間でも薄暗い毒の森に相応しいをオーラを背負ったキョーコは地面を這う様な低い声でそう吐き捨てた。
尋常じゃない様子のキョーコをなんとか宥めようと、男はぎこちない動きしか出来ない腕を伸ばしたが、それを読んでいたかのようにスッと後ろに下がった彼女にはそれが届かない。
重病人の自覚のある男がこんなところで治療と世話を放棄されたくないと保身に走るならば、もう少し機転を利かせることが出来たかもしれないが、このときの彼はただ訳もわからず焦っているだけで、どうすればいいのかわからずある意味途方に暮れていた。
「…アアア…オオッノッ」
声をかけたいが、この言語を操って会話する能力などない彼には相応しい言葉など浮かばない。会話など随分長い間してない彼の喉からは、意味不明な擦れた音が漏れるのみである。
「ハレンチナコトヲシテタノデハナイノ、アレハチリョウナノ、デモハレンチナノッ!ウウウウウっモウダメナノォオオオオ、ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
大きな瞳に涙をいっぱいに湛えたキョーコは、彼に訴えかける様に叫んだあと身を翻し、剣を握る腕に力を込めた。
───っ!!!
《駄目だ、死ぬなっ!!ゲホっ》
そのとき、彼が必死に叫んだ言葉は遠い故郷の言葉。
通じる筈のないその言葉を発していることにも気づかず、彼はキョーコの行動をなんとか止めようと必死に言葉を紡いだ。
《死んじゃ駄目だっ!剣を離すんだ!!ゲホゲホゴホッ》
叫ぶことにまだ慣れない喉が限界を告げても、彼は必死に声を上げ続けた。
《ゲホゴホッ、何故自害しようするっっ!やめ…ゲホ…ウッ!やめっゲホ…ろっゲホゲホゴホッッッッッ!!グッッ!》
───ぐっ!!!
いつのまにか無意識に起き上がろうしていた彼は、それを成功させることなく台の上に沈んだ。咳き込んだことで傷だらけの身体に激痛が走ったのだ。それでも、今の彼にはしなくてはならないことがある。
───お、おんな、は?
痛みに襲われたことで、思わず目を離してしまったことを後悔しながら、横たわったまま視線を巡らしたが、既にキョーコの姿は消えていた。
───止められなかったのかっ?
焦って再び起き上がろうとした彼がそれを叶えることなく、台から転がり落ちそうになったとき、それはさっと差し出された。
───!!!
細いが力強い腕が、彼の身体を支えたのだ。
男を台の上にそっと横たわらせたキョーコの顔は既に落ち着き払っていた。
「ごめんなさい、ちょっと動揺しちゃったけど、もう大丈夫だから」
───い、生きてたっ!
安堵のあまり、全身の力が抜け、それにより少し痛みがマシになっていく。
「治療してる人間が、患者に危害を加えるなんて最低よね。ほんとごめんなさい」
先程までのことが嘘の様に、静かにかけられる言葉。
───『ごめんなさい』は、謝罪の言葉だった筈。もう大丈夫なのか?
「ところで。ねぇ、貴方私のこの言葉はわかっているの?さっきキニシナイとかヨカッタとかはしゃべってたわよね?」
「?」
眉をクニョリとへの字に下げて謝罪の言葉を紡ぐキョーコに、何故か罪悪感をもってしまった彼は、謝罪を受け入れたことを伝えようとコクコクと頷いてみせたが、それを見たキョーコが投げかけたこの言葉は理解できなかった。
「うーん。わかってないみたい…ね。わかるとしても単語を少し程度で会話は無理っぽいかも…」
質問されている気はするが、内容の方はまったく理解出来ていない彼には、頷いていいものか、首を傾けたほうがいいのかの判断もつかない。
「はぁ~」
溜め息をつかれても、どうしようもない。
───会話…したほうが良い気がするけど、俺の知ってる単語じゃ無理だ…よな?
気まずい雰囲気が二人の間に流れ出していたが、それを破ったのはキョーコの方であった。
第18話(限定公開)につづく
見せ場なしで、地味に17話終了。
うううっ、ごめんなさい。
奇特読者さんとの間に気まずい空気…嫌ぁぁああああん!๐·°(৹˃̵﹏˂̵৹)°·๐
そして、次は桃ではないのに、破廉恥過ぎて限定です。
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