拍手からの移動のパラレルファンタジーです。

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すみません!!m(_ _ )m
47話がかけなかったので、46後半を47話にさせていただきました。
前半も一応加筆はしています。


拍手御礼「あの森を目指して 46」

宿の大部屋にてすっかり本気で寝入っていたところをキョーコに起された男は、部屋の使い方や護衛のタカトウ(貴島)が同じ部屋で付き添う旨を教えられた後、外に出るための準備をさせられた。

キョーコによってベッドの下の床に放り出していた荷物の中から取り出された薬袋は、長い紐で男の首にぶら下げられた。

《薬は貴重品であり、貴方の財産です。これまでは貴方の鞄に仕舞っていましたが、今後は何れお渡しするお財布同様なるべく身体に身につける様にしてください。この宿はかなり安全ですが、普通の宿の大部屋では目を離せば空の鞄やマントですら盗まれます。大部屋の床の上に置きっぱなしにして寝るのはやめてくださいね。》

《わかった…》

これまでの人生で薬を売買したこともなく、鞄やマントなど現在自分に与えられている荷物が大事な財産とは全く思えない男であったが、とりあえずは頷いておく。←

《あ、今からの外出には鞄は持っていかなくても良いですよ。この宿なら盗まれる可能性は低いですし》

この宿の様に大丈夫じゃない宿がどんな宿なのか、まったく想像がつかなかったが、これにも頷いておいた。

《わかった》

《もしもの為にこの剣を渡しておきます。座ったまま抜きやすいように腰ではなく、少し上に付けておきますね》

《わかった》

動く度に男の胸の下あたりでカサカサと音を立てるそれの一部を留める様にして巻かれた幅広の腹帯の上には細い剣帯が付けられ、そこに小振りの剣が収められた。

キョーコから与えられたその剣は、護衛には負けずに戦えることを示すための大事な武器である。

───何かあったら、ちゃんと戦わないと!まだ動きが少し鈍いけど、このぐらいの剣なら素早く抜けそうだ。

男は小振りだが使い込んである剣の柄を握ってみて、腕をそう動かさずとも抜ける位置に剣があることに安心したのだった。





───俺だけっ、俺だけ、凄く格好が悪い!!

男の現在の服は丈夫ではあったが、地味だった。そして、その地味な上になにやらおかしかった。

妙に幅広な帯は通常よりずっと高い位置に巻かれており、腰に来ているはずの剣帯がその上にあるのは、全身のバランスを著しく崩していた。

彼は知らないかもしれないが、言うなれば「天◯バ◯ボン風着付け」である。←若い読者様も知らないかもですね。

小振りの剣が中途半端な位置で不格好にその存在を主張しているのが更に間抜けであった。

───どうして、俺はこんな格好で歩いているんだ?

キョーコに支度を手伝ってもらっている間には一切気づかなかったが、彼等の宿である「獅子の咆哮亭」のすぐ側にあると言う、タカトウ(貴島)のオススメの甘味どころに向かっている途中には、そのことに気づいてしまった彼は非常に情けない気持ちになってしまった。

ほんの少し前まで、裸同然で暮らしていたが、それとこれとは感覚が別なのである。

既に街は多くの買物客で賑わっている時間であり、男は多くの一目にその姿を晒すことになっていた。

すれ違う者にギョッとした顔をされる度に、彼は自らの衣装とその着こなしを呪った。

周囲の者にとっては、大男が幼い子供の様な服の着方をしていることよりも、やせ細ったコケコケ男でがあることのインパクトの方がずっとキョーレツなのであるが、彼の脳内では今の自分の姿は随分修正された上で保存されているので、服の中身についてはあまり考えていなかった。

───でも、今は杖も必要だし、空いている方の手に剣帯ごと剣を持って歩いてもいざというときに使えない…

とりあえず店につくまでは我慢しようと、男は気持ちを切り替え、少し前を歩くキョーコに視線を送った。

───ピンと背中が伸びていて。後ろ姿も凄く奇麗だ。

キョーコはいつも奇麗で時に可愛いが、宿の部屋で衣装と化粧を変えて現われた時には、その場に美しい戦いの女神が降臨したかの様に思えた。

───うん。彼女が美しいのはいいんだっ!

気に入らないのは、目の錯覚であろうとなんであろうと一瞬でも美しい彼女とお似合いに見えてしまうタカトウ(貴島)の姿である。

───どうして、お前まで着替えてるんだ!

少し外に出ると行って部屋から消えたタカトウ(貴島)は、宿泊に必要な荷物を自宅に取りに戻っていたらしい。

1泊位なら男なんだし着替えなど我慢すればいいのにと思わないでもないが、荷物を取りに行くのが面倒でない距離なら、家よりは立派である筈な高級宿の湯を堪能する為に清潔な着替えを用意したいと思う心は理解出来る。

しかし、何故今着替えて来たのかは理解できなかった。

───ひとりだけ、格好つけやがって!!←

買物には馬車を使うが、近所の甘味屋には徒歩で向かうことに決めた一行は、宿屋周辺がこの街の中で特に治安が良い一角であることから、かなりリラックスして歩いていた。

「貴方も服を着替えられたのですね」

「むさ苦しくない雇い主には、むさ苦しくない格好でお供するのが、俺の流儀でして」

「先程も素敵でしたよ?でも、その服はとてもお洒落だと思います。その剣帯は特注ですか?皮紐の細工が凝ってますねぇ」

「朝お会いしたばかりのお嬢さんも守ってあげたくなる程奇麗でしたけど、今の貴女様はひれ伏したくなる程美しい女王様の様ですよ。やはり女性は素晴らしいですね」

「タカトウ(貴島)さんは、本当お上手ですね。煽てても何も出ませんけど、お買い物の案内もお願いしたいし、お茶は御馳走しますよ」

「有り難き幸せ」

今はもう物語の中でしか見かけないような騎士の礼をとってみせたタカトウ(貴島)に、キョーコは女王然とした微笑みで応えた。

「我に任せよ」

「ぷっ!」
「くすくすくす」

女王とその騎士。そう見えなくもない二人の男女は、杖の男を気遣いゆっくりとした歩調を保ってはいたが、仲良く会話する二人と後ろを一人寂しく歩く男の間には、言語だけではない壁が立ちふさがっていた。

───そいつと話さないでくれ!しゃべりたいなら俺と話してくれ!

意味はまったくわからないまでも、盛り上がっているように見える二人の会話。

時折上がる笑声は楽し気で、男の機嫌はまたもや急降下してしまった。

───気に食わない。ムカつく!!


第47話に続く。

キョコさんは、前作の司ママンとナッちゃんブレンドな見た目でイメージしました。( ̄▽+ ̄*)
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「あの森を目指して」では、まずダーーッと勢いで書いたものを拍手御礼として出し、一晩おいて頭を冷やしたあと(?)、加筆と修正をした上でアメバ記事で公開し直しています。加筆時に設定が変更になることも多々あります。拍手のみを読んでくださっている方は内容が繋がらない場合があるかもです。もしお時間が許す様でしたら、外に移動後もまた読んでいただけると嬉しいです。m(_ _ )m ←またというところが欲張りですみません。