拍手からの移動のパラレルファンタジーです。
あの森を目指して 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 11 / 12 / 13 / 14 / 15 / 16 / 17 / 18(アメンバー限定)or18(アメンバー限定を読めない方はこちら) / 19 / 20 / 21 / 22 / 23 / 24 / 25 / 26 / 27 / 28 / 29 / 30 / 31 / 32 / 33 / 34 / 35 / 36 / 37 / 38 / 39 / 40 / 41 / 42 / 43 / 44 / 45 / 46 / 47
拍手御礼「あの森を目指して 48」
「…ははは、頑張らせていただきますよ。じゃ、まずは馬車を取りに戻りますかね」
キョーコ相手にはちっとも通じない賛美の言葉に苦笑いしながら、タカトウ(貴島)は意識を仕事のソレに切り替えた。
「はい!じゃあ、私は支払いと…ついでにちょっと買物をして来ます。お二人は先に外に出て、宿に向かってください」
「了解。御馳走様でした。それじゃお先に」
「はい。彼をよろしくお願いします」
奢ってもらうことに礼を言うタカトウ(貴島)に笑顔で応えたあと、キョーコは1人無言を貫いていた(?)男に視線を向けた。
《貴方は、タカトウ(貴島)さんと先に外に出て、宿に向かっていてください》
タカトウ(貴島)とキョーコが立ち上がったのを見て、自分も椅子から立とうとしていた男だったが、キョーコの指示に疑問を感じ、その動きは一時停止させた。
《…先に?》
《そうです。先に向かっていてください。心配しなくとも大丈夫ですよ?貴方には、タカトウ(貴島)さんがついていてくれますから》
男からすれば、ちっとも大丈夫じゃない、嬉しくもない配慮である。
《君と一緒に行く。あと、タカトウは別にいらない》
《私も用を済ませたら戻ります》
《ここで、待ってる》
男に意味不明な駄々を捏ねられ、美味しいケーキの効果で綻んだ顔をキープしていたキョーコの顔がいつもの顔に戻っていった。
《大分ここでゆっくりしてしまいましたが、馬車を取りに戻ったら、すぐに買い出しに出かけますからね。ニッコリ》
先程の天使の微笑みはどこへ行ってしまったのか、男の目の前には最早見慣れた感のある “聞き分けのない客” を宥めるやり手商人の顔を貼付けたキョーコがその視線で彼の行動を促していた。
───俺はタカトウなんかと一緒にいかない!君と一緒に行くんだ!
そう文句を付けたい男だったが、キョーコの目にそれを許さない色を感じて黙り込んだ。
《どうぞ、行ってください》
優しく微笑んではいるのに、キョーコのその視線はどう見ても「ほれ、さっさと外に出んかい!」と伝えていた。←客というより、子供です。
《……ಠ_ಠ…》
「それじゃ、タカトウ(貴島)さんお願いします」
「はいはい。じゃ、行き、ます、よ」
タカトウ(貴島)に腕を引っ張られ、仕方がなく立ち上がった男は、キョーコにも背中を押され、入り口に向かうしかなかった。
嫌々ながら店の外の大通りに出てみると、来た時よりも更に人が増えていた。
「ちょっとどいとくれ!」
「おいっ、何突っ立ってるんだぁ」
「おっさん、邪魔!」
「そこ、立ってる、邪魔。歩く、歩く!」
店の前でキョーコを待つつもりの男だったが、周囲の人間もタカトウ(貴島)もそれを許さなかった。
人混みには流れがある。
それに一度乗ってしまえば、杖を頼りに歩く男は流れに逆らうことが出来ない。
他の歩行者にぶつかりながらも、男は転ばないように必死にバランスを取りながら進んだ。
そんな余裕のない中にもチラリと背後を窺いはしたが、残念ながら見えたのは追いついたキョーコではなく、男を背後から見守るタカトウ(貴島)の姿だけだった。
───やっと、戻れたっ。ああ、疲れたっ。
タカトウ(貴島)に促され馬車に乗込んだあと、男は荷台に崩れ落ちるように座り込み、荒くなった呼吸を整え様と何度も大きく息を吐いた。
自分のペースで歩けなかった男は、ほんの短い距離を移動しただけにも関わらず、疲れを感じていた。
───駄目だ。もっとしっかり動けるようにならないと。
“毒の森” の小屋にいたときにも、旅に出てからも、立ち上がる練習や杖を使って歩く練習は沢山していた。
自分では既に随分スムーズにしっかりと歩けるようになったと思っていたが、“切り株ケーキ” の店から彼等の宿である「獅子の咆哮亭」に戻るまでの道のりで、その自信はあっさりと消えてしまった。
人の流れに乗れる程のスピードで歩けなかった彼は、大勢の人間にぶつかった。
自分よりも小さな人間と軽くぶつかっただけで転びそうになる彼の身体は、その度に背後のいけ好かない男に支えられて、事なきを得ていた。
───こんな状態じゃあ、彼女を守れない。もっともっと一杯食べて、動いて、身体を作らないと!
食べ過ぎて吐き出すなんて失敗を繰り返す気はないが、毎食限界まで食べることを彼は自分に課すことを決めた。←
第49話に続く。
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「あの森を目指して」では、まずダーーッと勢いで書いたものを拍手御礼として出し、一晩おいて頭を冷やしたあと(?)、加筆と修正をした上でアメバ記事で公開し直しています。加筆時に設定が変更になることも多々あります。拍手のみを読んでくださっている方は内容が繋がらない場合があるかもです。もしお時間が許す様でしたら、外に移動後もまた読んでいただけると嬉しいです。m(_ _ )m ←またというところが欲張りですみません。
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「…ははは、頑張らせていただきますよ。じゃ、まずは馬車を取りに戻りますかね」
キョーコ相手にはちっとも通じない賛美の言葉に苦笑いしながら、タカトウ(貴島)は意識を仕事のソレに切り替えた。
「はい!じゃあ、私は支払いと…ついでにちょっと買物をして来ます。お二人は先に外に出て、宿に向かってください」
「了解。御馳走様でした。それじゃお先に」
「はい。彼をよろしくお願いします」
奢ってもらうことに礼を言うタカトウ(貴島)に笑顔で応えたあと、キョーコは1人無言を貫いていた(?)男に視線を向けた。
《貴方は、タカトウ(貴島)さんと先に外に出て、宿に向かっていてください》
タカトウ(貴島)とキョーコが立ち上がったのを見て、自分も椅子から立とうとしていた男だったが、キョーコの指示に疑問を感じ、その動きは一時停止させた。
《…先に?》
《そうです。先に向かっていてください。心配しなくとも大丈夫ですよ?貴方には、タカトウ(貴島)さんがついていてくれますから》
男からすれば、ちっとも大丈夫じゃない、嬉しくもない配慮である。
《君と一緒に行く。あと、タカトウは別にいらない》
《私も用を済ませたら戻ります》
《ここで、待ってる》
男に意味不明な駄々を捏ねられ、美味しいケーキの効果で綻んだ顔をキープしていたキョーコの顔がいつもの顔に戻っていった。
《大分ここでゆっくりしてしまいましたが、馬車を取りに戻ったら、すぐに買い出しに出かけますからね。ニッコリ》
先程の天使の微笑みはどこへ行ってしまったのか、男の目の前には最早見慣れた感のある “聞き分けのない客” を宥めるやり手商人の顔を貼付けたキョーコがその視線で彼の行動を促していた。
───俺はタカトウなんかと一緒にいかない!君と一緒に行くんだ!
そう文句を付けたい男だったが、キョーコの目にそれを許さない色を感じて黙り込んだ。
《どうぞ、行ってください》
優しく微笑んではいるのに、キョーコのその視線はどう見ても「ほれ、さっさと外に出んかい!」と伝えていた。←客というより、子供です。
《……ಠ_ಠ…》
「それじゃ、タカトウ(貴島)さんお願いします」
「はいはい。じゃ、行き、ます、よ」
タカトウ(貴島)に腕を引っ張られ、仕方がなく立ち上がった男は、キョーコにも背中を押され、入り口に向かうしかなかった。
嫌々ながら店の外の大通りに出てみると、来た時よりも更に人が増えていた。
「ちょっとどいとくれ!」
「おいっ、何突っ立ってるんだぁ」
「おっさん、邪魔!」
「そこ、立ってる、邪魔。歩く、歩く!」
店の前でキョーコを待つつもりの男だったが、周囲の人間もタカトウ(貴島)もそれを許さなかった。
人混みには流れがある。
それに一度乗ってしまえば、杖を頼りに歩く男は流れに逆らうことが出来ない。
他の歩行者にぶつかりながらも、男は転ばないように必死にバランスを取りながら進んだ。
そんな余裕のない中にもチラリと背後を窺いはしたが、残念ながら見えたのは追いついたキョーコではなく、男を背後から見守るタカトウ(貴島)の姿だけだった。
───やっと、戻れたっ。ああ、疲れたっ。
タカトウ(貴島)に促され馬車に乗込んだあと、男は荷台に崩れ落ちるように座り込み、荒くなった呼吸を整え様と何度も大きく息を吐いた。
自分のペースで歩けなかった男は、ほんの短い距離を移動しただけにも関わらず、疲れを感じていた。
───駄目だ。もっとしっかり動けるようにならないと。
“毒の森” の小屋にいたときにも、旅に出てからも、立ち上がる練習や杖を使って歩く練習は沢山していた。
自分では既に随分スムーズにしっかりと歩けるようになったと思っていたが、“切り株ケーキ” の店から彼等の宿である「獅子の咆哮亭」に戻るまでの道のりで、その自信はあっさりと消えてしまった。
人の流れに乗れる程のスピードで歩けなかった彼は、大勢の人間にぶつかった。
自分よりも小さな人間と軽くぶつかっただけで転びそうになる彼の身体は、その度に背後のいけ好かない男に支えられて、事なきを得ていた。
───こんな状態じゃあ、彼女を守れない。もっともっと一杯食べて、動いて、身体を作らないと!
食べ過ぎて吐き出すなんて失敗を繰り返す気はないが、毎食限界まで食べることを彼は自分に課すことを決めた。←
第49話に続く。
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「あの森を目指して」では、まずダーーッと勢いで書いたものを拍手御礼として出し、一晩おいて頭を冷やしたあと(?)、加筆と修正をした上でアメバ記事で公開し直しています。加筆時に設定が変更になることも多々あります。拍手のみを読んでくださっている方は内容が繋がらない場合があるかもです。もしお時間が許す様でしたら、外に移動後もまた読んでいただけると嬉しいです。m(_ _ )m ←またというところが欲張りですみません。