拍手からの移動のパラレルファンタジーです。

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拍手御礼「あの森を目指して 49」

「すみません、お待たせしました!《お待たせしました。すぐに出発しますので》」

荷台の男が息を整え終えた頃、小さな荷物を抱えたキョーコが帰ってきた。

「おかえりなさい。結構早かったですね」

待ち時間をこれから乗せてもらう馬とのスキンシップに割いていたタカトウ(貴島)は、馬を撫でる手を休めてキョーコに出迎えの言葉をかけた。

「はい。お隣のお茶店さんはちょうどお客さんが途切れたときに行けたので、すぐに買えました。先程のケーキも予約と支払いを済ませてきました。宿まで近いので出発日の朝、店を開ける少し前に宿まで届けてくださるそうです」

キョーコはタカトウ(貴島)の質問に応えつつ、馬車に繋がれている状態のもう1頭の馬に近づくと、顔をすり寄せてくる馬の首を軽く叩き、「今日もよろしくね」と告げてから馬車に乗込んだ。 

*馬の首を軽く叩くのは、馬に褒めていることを伝える合図です。キョコさんは良い子で待っていたね、と、今日はよろしくの意味で叩いています。

「へぇ。出発日の午前中は買物で忙しいですから、並ばずに済むのは助かりますねぇ」

「本当にねぇ。有り難いことです。では、出かけましょうか!」




大勢の買物客で賑わう大通りだったが、賑わっていた先程の宿周辺から離れるに従い、少しづつ行き交う人の姿が減っていく様に思えた。

───なるほど。あの一帯から離れれば離れる程、治安が悪くなって行く訳だ。まあ、タカトウ(貴島)さんもそんなにピリピリした感じじゃないし、この辺りはそこまで警戒しなくても大丈夫そうね。

その大通りを、少しゆっくり目に幌付きの馬車で進んでいたキョーコは、立ち寄りたい店を発見する度に馬車に寄り添う様にして馬を走らせているタカトウ(貴島)に声をかけていた。

「そこの角の店に寄ってきます。ここで少し待っていてください」

「了解。行ってらっしゃい。スリに気をつけてくださいね」

「はい、わかりました」

女剣士風の装いのキョーコは、そう言われる度に少しばかし周囲を威圧するような雰囲気を出しながら、お目当ての店に向かった。

その甲斐があったのか、彼女の買物は順調に進んでいった。



荷台の男はといえば、馬車の後方に座らされている為、キョーコとの会話もままならなかったし、彼女とタカトウ(貴島)と何を話しているのかも、周囲の音にかき消されほとんど聞こえなかった。

《今日はこれからどんどん荷を積みこんでいきます。馬車に積んだ荷は目を離さず守らねばなりませんから、貴方は後ろの警戒を担当してください》

キョーコから与えられたこの任務を断れば、役立たず以外の何者でもないことは男にもわかっている。

だから、男は “それなりに” その面白くもない仕事をこなしていた。

ただ、後ろ向きに座っているだけのことで、なんの労力も使っていなかったけれど、男にとっては一番条件の悪い場所でのこの仕事は、内心の苛立ちを高めるものであった。

───あ、また馬車が止まった。

止まる度に、馬車の手綱を側で騎乗しているタカトウ(貴島)に預け、キョーコはまず薬草や薬の売買を進めていた。

タカトウ(貴島)とは、馬車が動いている間と止まったときに言葉を交わしてはいたが、それは必要な情報の交換に限られており、先程の甘味の店で聞いていた様な盛り上がりを見せる様子はない。

しかし、まったく会話に加われない男は、タカトウ(貴島)の担当する場所が羨ましくて仕方がなかった。

───まだ大きな荷物は増えていないし、俺が前にいても問題なさそうなのに。ここに人が必要なら俺が馬に乗るから、タカトウがここに座ればいいんだ。←馬に乗っけてもらうだけで何もできなさそうですけど

時折大きな声で話しかけてはもらえたが、忙しいのか、キョーコは馬車の後ろ側まで回ってはきてはくれない。

タカトウ(貴島)が極たまに、馬のスピードを落とすことで、馬車の後方に並びはしたが、彼の視線さえも荷台にまで届くことはなかった。

───タカトウの姿は見えなくていいのに!っていうか、後方は俺が見てるのに、信用していないのか?

プロとして雇われているタカトウ(貴島)からすれば、歩くのもやっとなヨロヨロの親父に護衛任務の一部を任せる筈がないのだが、荷台の男はその当然の筈の態度にもイラついていた。

御者台の直ぐ側に薬や乾し肉とチイズの包みを積み終わった頃、漸く荷台の男の “ひとりぼっち” で過ごす時間の終了を予告する女神の声が聞こえた。

《あと少しお店を回ったら、お昼にします。もう少しだけ我慢してくださいね!》

───あと少し。あと少しの我慢だ!よし!昼飯を食べるときには、彼女がタカトウ(貴島)と話す暇もない位、沢山話しかけよう。



待ち望んだ昼飯の時間はすぐにやってきたが、彼の目標の1つは挑む間もなく果たせないまま消えた。

───どうして、コイツと二人で飯を食わなきゃいけないんだっ!

第50話につづく。
どうでも良い似た様なシーンが続いています。そろそろ皆さん飽きてらっしゃるとは思いますが、もう少しだけお付き合いくださいませ。
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「あの森を目指して」では、まずダーーッと勢いで書いたものを拍手御礼として出し、一晩おいて頭を冷やしたあと(?)、加筆と修正をした上でアメバ記事で公開し直しています。加筆時に設定が変更になることも多々あります。拍手のみを読んでくださっている方は内容が繋がらない場合があるかもです。もしお時間が許す様でしたら、外に移動後もまた読んでいただけると嬉しいです。m(_ _ )m ←またというところが欲張りですみません。