拍手からの移動のパラレルファンタジーです。

あの森を目指して 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 11 / 12 / 13 / 14 / 15 / 16 / 17 / 18(アメンバー限定)or18(アメンバー限定を読めない方はこちら) / 19 / 20 / 21 / 22 / 23 / 24 / 25 / 26 / 27 / 28 / 29 / 30 / 31 / 32 / 33 / 34 / 35 / 36 / 37 / 38 / 39 / 40 / 41 / 42 / 43 / 44 / 45 / 46 / 47 / 48 / 49 / 50

拍手御礼「あの森を目指して 51」

男が昼食である肉饅頭を食べ過ぎた夜。

結局、彼はタカトウ(貴島)オススメの午後のお茶菓子は勿論、旨いと評判の「獅子の咆哮亭」の夕食もほとんど食べられなかった。

キョーコとタカトウ(貴島)に二人っきりで食事されるのが嫌で、胃のムカツキが治まらないまま階下の食堂までは行ったのだが、残念ながら「獅子の咆哮亭」のこの日の夕食メニューは彼が受け入れられるタイプのものではなかった。

この日のメインディッシュの山ブーブーの丸焼きは脂が滴ったなかなかハード品であったし、トマトトと山ブーブーの内臓シチューの酸味の利いたその味付けは、男の胃に全く優しくなかった。

一口食べて悪い方向に胃を刺激してしまった彼は、「獅子の咆哮亭」の食堂を阿鼻叫喚の場に変える前にキョーコによって、部屋に送り返されてしまった。

《小さな子供じゃないんですから、そろそろご自分の胃の容量を把握してくださいよ?…あとで薬草茶を届けますから、それまで少し横になっていてください》

呆れた様にそう言って、タカトウ(貴島)の待つ食堂に戻っていくこのときのキョーコを、男は引き止めることも出来ず見送るしかなかった。

幸いにも翌朝には回復し、「獅子の咆哮亭」の名物絶品朝食には無事キョーコと同席の上でありつくことが出来たが、昨日の痛恨のミスにより男のタカトウ(貴島)への嫉妬心はますます大きく育っていた。

───今日はタカトウ(貴島)と彼女が昨日以上に仲が良いように見える…。夕食を “二人っきり” で食べさせたせいなのか?俺がいない場所で二人は何をしてたんだ? ←美味しいと感激しながら御飯食べてましたYO!

それはもう被害妄想と言えるレベルで、見えるものすべてを燃料にしてボウボウと燃やしていた。

勿論不機嫌MAXで。




逆に、キョーコとタカトウ(貴島)の機嫌は非常にヨカッタ。

「獅子の咆哮亭の部屋の使い心地はどうでした?」

「部屋も快適でしたし、お風呂も凄くヨカッタです」

「へぇ。俺は外風呂にしか入ったことがないんですけど、部屋風呂ってそんなに広くないんでしょう?」

「確かに大柄な男性には向かないかもしれませんが、浴槽が小さい分サービスのお花のエキスが濃厚に感じられて気分がヨカッタです」

「なるほど。一番高い部屋には少し大きめの浴槽がついてるそうなんですがねぇ。うーん。俺も1回位はそう言う部屋に泊まってみたい気がするんですが…でも高いしなぁ」

「クスクス。夕食も今朝の朝食も最高でしたし、泊まり甲斐のある宿だと思います。いつかその凄い部屋にも泊まれるといいですね」

「ははは。昨日の晩飯はこってりしてる様で、あと味サッパリでしたしね。昼間のあの肉饅頭も旨かったですけど、なんというかレベルが違いましたよね」

「確かに!朝のパンもそこらの専門店より美味しかったですしね!あの薮鳥の卵焼きも絶品でした!」

「部屋の質やサービスが凄い宿は他にもありますけど、この街の宿飯は獅子の咆哮亭が最高ですからね」

「あともう1泊あるので、堪能させていただきます」

買物中は周囲への警戒や店探しに忙しく、必要なことしかしゃべらない二人だったが、この日は朝や昼の休憩も馬車に乗ったままだったこともあり、茶菓子や昼食を食べながらの会話は非常によく弾んでいた。

昨日仕入れた保存食類は宿の倉庫に預け、今日は空の荷台で買物に出かけた彼等だったが、昨日とは違い午後になってもその荷台には果実の入った2つの小さな籠と薬草の数束位しか荷物が増えなかった。

昨日もそうだが、キョーコは沢山の武器屋や古着屋を覗きはするが、見るだけで買わずに戻ってくることも多かった。

何か特定の物を探していて、それが見つからなてガッカリ…という風にも見えず、何も買えなくとも楽し気な様子で店を回るキョーコの行動が男には不思議に思えた。

───これぐらいしか買わないなら、タカトウ(貴島)の契約を解除して、俺と馬で出掛ければヨカッタんじゃないか?

自分がいなければ、買物はキョーコ1人で十分だとは知らぬ男は都合の良過ぎる意見を脳内に浮かべていた。

《今日も、馬車に積んだ荷を盗まれないように後方の警戒をお願いしますね》

今朝またキョーコにそう言われたが、まだ極僅かしかない様に見える荷は御者台の側にしかなく、男は周囲に何もない状態の荷台の後部で、後方ではなく前方の二人を “警戒” して過ごしていた。




「あっ!えっ?あれ?うそっ!!!」

そんな彼の視線の先で、キョーコは突然御者台から立ち上がると、その場で大声で叫んだ。

「おーーーーい!!モー子さぁああああああああああん!!!」

ブンブンと両手を振って、まだ少し遠い前方の人物に嬉しそうに呼びかけるキョーコ。相手もこちらに気づいて驚いた顔をしているのがわかる。

「え?嘘っ!」

しかし、次の瞬間、喜色満面だったキョーコの表情は一変した。


第52話に続く。

ついにこの方の出番が!!ここまで来るのに随分より道しちゃいました。(;´Д`)ノ!
*拍手はこちら *゚▽゚)ノ シュッ≡≡≡≡≡[愛]*
↑ ↑ ↑
クリックで拍手できます。
拍手やコメ欄に、感想コメントをいただくと魔人がやる気を出します。←単純


「あの森を目指して」では、まずダーーッと勢いで書いたものを拍手御礼として出し、一晩おいて頭を冷やしたあと(?)、加筆と修正をした上でアメバ記事で公開し直しています。加筆時に設定が変更になることも多々あります。拍手のみを読んでくださっている方は内容が繋がらない場合があるかもです。もしお時間が許す様でしたら、外に移動後もまた読んでいただけると嬉しいです。m(_ _ )m ←またというところが欲張りですみません。