こちらは、りーちゃん&セーちゃんによる【反撃の乙女と狼狽える破壊神企画】です。

コラボ連載作『純情乙女の危険なあしらい』は、元旦からスタートしています。

まだまだ続きますので、お楽しみ頂けたら嬉しいです♪

 

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スタート話はこちらです。

→『破破壊神がやって来た』(一葉梨紗作)

1 /  /  /  /  /  /  / 9・完結

 

続きのコラボ新連載はこちら↓

『純情乙女の危険なあしらい』 1 / 2 

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反撃の乙女と狼狽える破壊神企画

『純情乙女の危険なあしらい 3』

 

「 携帯の留守電にでも脅しの言葉を入れておけば、夕方ぐらいには捕まえられるか?そうだな、まだ時間はある。明日の仕事は早いみたいだけど、うちに泊まらせれば夜中までにはカタがつく筈だ 」

 しかし、獲物を震え上がらせようと、悪魔になりきって吹き込んだ蓮の渾身の脅しは、効果を発揮することができなかった。

 マネージャーに無理を言い、苦労して確保したオフは、なんの収穫もないまま、終わってしまった。




 この日を境に、キョーコは蓮からの逃げ方を変えた。


「 だからさ〜、そもそも必死で逃げるから、舐められるんだよ。ちょっと脅せば、簡単に言うことを聞く子だって言う風にさ。大体、京子の秘密……隠している恋心がどんなものか、吐かないなら、縁を切るぞって、何?自分を崇めろ、全てを隠さず報告しろ、逆らうなら存在抹消ってこと?彼、中2病? 」

「 中2病?いや、そ、そんなことは!あの、つ、敦賀さんは秘密がとにかく嫌いみたいで…… 」

 

 

 これまでの経験を思い返してみれば、キョーコが様々な…秘密を持つたびに、それがどんなに些細なものであったとしても、蓮は聞きたがった。隠そうとすれば、何故か恐ろしい執念をみせるあの先輩に追い詰められ、最終的に土下座で泣きながら白状することが、キョーコにとっての当たり前になっていた。

 だけど、今抱えている秘密だけは、どんなに脅されても、明かすことができない。他のことであれば、土下座で白状すれば、許してもらえると思うが、今回のこれだけは、例外だ。口にしたら、最後、全てが終わるのだ。



「 ふ〜〜ん、私達親友でしょ?お互いに秘密はなしよ!って感じ? 」

「 いえ!私如きが、敦賀さんの秘密を教えていただくなんて、滅相もありません 」


 いやいやいやと、右手を高速で左右に振りながら否定すると、目の前の男……古賀は、呆れたような視線を寄越した。


「 だから、その奴隷根性をなんとかしなよ。口では尊敬する先輩みたいな役者になりたいって言ってるけど、俺には敦賀くんに媚び諂うだけの奴隷を目指しているようにしか見えないよ。うわ〜〜、情けな〜〜い、格好悪〜〜、最低〜! 」

「 うぐっ! 」


 敦賀蓮教の信者であり、布教者であると自負するキョーコだが、惚れた男にボロ雑巾の様に扱われる女の情けなさはよ〜く理解している。勿論、蓮はこんな対象外の女であっても、キョーコを都合の良い奴隷や家政婦の様に扱ったりはしない。だけど、実際のところ、自分は確かに、情けない女だった。蓮に嫌われないためなら何でもすると口走ってしまう程に、馬鹿で、愚かな女なのだ。

 彼の側に置いてるもらえるなら、奴隷でも良いと考えてしまう自分が情けない。

 そして、奴隷になったとしても、恋心を明かせば、側に置いてもらえない自分が悲しい。

 だが、そんな情けない女を神は見捨てなかった。
 救いの神は、知恵と勇気を、キョーコに与えたのだ。



 

 数日後。午後のある時間にキョーコが事務所に戻るとの情報を得た蓮は、必死に時間を作り、捕獲に向かった。

 タレント部のあるフロアの廊下で、椹との打ち合わせを終えた後のキョーコを待ち構え、会釈だけして蓮の横を通り過ぎようとしたその身体を捕まえ、空いている会議室に押し込んだ。


「 やっと、捕まえた!最上さん、もう逃がさないから、覚悟して? 」
 


 ニヤリと笑う破壊神の笑顔は、悪魔のそれ。だけど、別の神のご加護を得たキョーコは怯まない。



「 あら?天下の敦賀蓮さんが、私如きタレントの本名をご存知とは…ビックリです!確かに私は、最上ですけど、あの、何か御用ですか? 」

「 ……何、それ…… 」

 

 強い怒りの波動がキョーコを襲うが、ここで負けてはならぬと、蓮が求めているものとは違う方向の覚悟を決める。

 会議室の壁際に追い詰められたキョーコは、目の前の男に向かって倒れかかる様にして、縋り付いた。


「 こんな誰もいない部屋に引っ張り込むなんて……もしかして……まさかっ……ツルガサンったら、私と……シタい……んですか? 」


 クールにでも、妖艶にでもなく。砂糖大盛りにしたナツをイメージし、甘い声を出す。
 そして、限界まで潤ませた目で、蓮の顔を見上げた。

 自分は今、何を言っているのか、何をしているのか。そこは重要ではない。
 キョーコはこの様な危機を迎えた際に、自分がするべき振る舞いを学んでいた。

 本当にこれで勝てるのかしら?と、思わなくもない。
 だが、キョーコが「センセイの教え」に疑問を抱いたのは、ほんの一瞬。


「 ……し……シタっ?…… 」


という声と共に、目の前の檻が解けたのだ。効果について、考えている暇はない。


「 敦賀さんの……エッチ…… 」


 決めセリフを吐いて笑顔を見せた後、余裕な振りをして、その場を去る。
 今大事なのは、この流れを守ること。


 理由は不明だが、聞いていた通りに動きを止めた蓮を部屋に残し、キョーコは廊下に出た。そして、隣の会議室に忍び込んだ後、息を潜めた。


「 このまま、このまま。静かに。大丈夫、敦賀さんの自由になる時間なんて、30分もあれば良いところよ。次の仕事現場への移動を考えたら、事務所に居れるのはほんの10分程度なんだから、やり過ごせるわ 」


 10秒後、隣の部屋から人が飛び出す音が聞こえた。

 

 

「 最上さん!どこだ!くそっ!!! 」


 聞こえた蓮の怒声に、心臓がキュッとなるが、悲鳴を堪え、無音を維持する。

 数分後。エレベーターの到着音と共に、蓮の気配が消えた。
 そのまま待つこと、10分。

 キョーコは満面の笑みで、報告のメールを打った。



「 あの方法で、逃亡成功しました! 」

 

 

第4話(りーちゃん)に続く。

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