こちらは、りーちゃん&セーちゃんによる【反撃の乙女と狼狽える破壊神企画】です。

コラボ連載作『純情乙女の危険なあしらい』は、元旦からスタートしています。

まだまだ続きますので、お楽しみ頂けたら嬉しいです♪

 

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スタート話はこちらです。

→『破破壊神がやって来た』(一葉梨紗作)

1 /  /  /  /  /  /  / 9・完結

 

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反撃の乙女と狼狽える破壊神企画

『純情乙女の危険なあしらい 10』

 

 本日のキョーコは、自分と同じくこのテレビ局での仕事があった古賀と待ち合わせをしていた。

 敦賀蓮には劣るとはいえ、古賀は抱かれたい男No.2の座を定位置にしているスター俳優だ。そんな男と、共演作の現場でもない場所で親しげにするのは非常に不味い。

 

 誰かに見られても、相手が自分ならば、熱愛の噂などには発展せぬだろうが、古賀のファンに絡まれるのは面倒だし、某先輩に古賀との面会を知られる危険は回避したい。

 

 待ち合わせの約束をした古賀の楽屋が、人目に触れにくい非常階段の横だったことを理由に、果敢にもエレベーターではなく階段利用を選択したキョーコだったが、若く体力があるとはいえ、待ち合わせの時間が迫っていたことで走る様にして階段を上る羽目になれば、当然息は上がる。そして足もフラフラだった。


「 あはは、スッゴイヘロヘロだねぇ。もしかして君、下の方の階からここまで階段使った? 」

「 ハァハァ……はいっ!2階から…… 」

「 え〜〜、ここ15階だよ?流石現役女子高生!若いね〜 」

「 いえ、無謀でした。もう足がフラフラです……ハァ〜 」

「 お疲れさん。少し休んでも良いよ!と、言いたいところだけど……俺、出番まであんまり時間ないんだよね 」

「 私は、大丈夫です!  」

「 じゃあさ、早速だけど、俺に話って何? 」

「 実は昨日、敦賀さんにまた捕まりそうになったんです!でもそのとき、古賀さんが伝授して下さった数々の教えが頭の中を走馬燈のように駆け巡って!その一つをわしづかみにしてなんとか危機を脱することが出来ました。古賀さんのお陰です!有難うございました!!  」 

「 へぇ、そりゃ良かった 」


 礼を言うキョーコの態度は、古賀に対し、「憧れも尊敬も皆無です」という感じだった以前に比べると、別人の様だった。

 凄いです、古賀センセイ!という尊敬の念がこもったキラキラな目をしたキョーコにお礼を言われ、気をよくした古賀は、更なる策を授けてやろうと……ついでに笑える話も聞きたいからと、どんな感じで成功したのかと訪ねた。


「 えっと、壁際に追い詰められた後、こんな感じで腕も身体も拘束されまして! 」

 

 立ち上がったキョーコは、本日所持しているカバンを手に持ち、あの日の再現をしてみせた。


「 うん、うん、それで? 」

「 逃げようにも、腕ごと上半身をギュウギュウに締め付けられている感じで、上手く抜け出せそうになくて!身体の前面に満員電車より酷い圧力がかかっている感じだったので、腕を持ち上げるのも難しくって……」

「 うん、うん  」

「 でも、それでもなんとか隙間を作ろうと頑張ったんです!必死にこう腕を持ち上げたり!でも、やっぱり無理で、それならせめて片手だけでも上に移動させて、敦賀さんの身体との間でつっぱろうとしたんです!そしたら、敦賀さんが急に妙な声を上げられて…… で、私の手の甲あたりで何かが動いたんです!! 」

「  フン、フン、それで?  」

「 これは何だろうと、ちょっとだけ手のひらでも触ってみたんですけど、ピクピクしてるのが何なのか、どうしてソコで動いているのかわからなくて……でも、そのあと敦賀さんが、また妙な声を出したかと思ったら、何だか怖いオーラを出されて!私、今すぐ逃げないと死んじゃう!って必死になったんです!」

「  ふっ、それで? どうしたのかな? 」

 「 死を覚悟したせいか、先程ご報告した様に、古賀さんの教えの数々が、頭の中をぱ〜〜っと走馬燈のように駆けていったので、その一つを実行できたんです!!ほら、意味深に呟きながら、手のひらで相手を撫でるやつです!そこから敦賀さんの様子はどんどんおかしくなっていきましたけど!私がちゃんとキメ台詞まで言ったら、敦賀さんは私から手を離して、後ろに向いてくれたんです! 」

「 ふっ、ふふ…、コホン!へぇ、それはそれは……ヨカッタネというか……ぶっ  」

「 古賀さん凄いです!どうしてあんなに効いたのかわかりませんけど、あのセリフのお陰なんですか?魔法みたいですよね〜! 」

「 そ、そう……ぶっ 」

「 で、あのピクピクは結局何だったんでしょうか?」

「 うん、まあ、男と女の魔法というか、なんというか……でも、ピクピクは、俺にもわかんないな〜。本人に聞いてみたら?あのピクピクは何なんですかってさ?ぶ……ククククク!もうだめ……ブハハハハハ!!そ、そういえば、凄い接触しちゃったんだよねぇ。京子ちゃん、ドキドキだったんじゃないの?だ〜〜い好きな敦賀くんとそんなに超絶密着接触しちゃったんだしさ?ブッククク、あははははは! 」

 

 途中から、蓮の状況を察していた古賀は、笑いをこらえるのが大変だった。それでも話の最中に爆笑してしまえば、この愉快な話を聞き損ねると、それはもう必死に真面目な顔を作ろうとしていた。

 どう頑張っても、口元がフヨフヨとしてしまうことは止められなかったが、キョーコの話がフィニッシュするその瞬間までは何とか耐え切った。そして一気に決壊した。

 しかし、キョーコは古賀にからかいの言葉をかけられたことで、自分が笑われているのだと勘違いした。

 

「 もうっ!そんなに笑わなくても良いじゃないですか! 」

「 うん、ごめんね?プククク!でも、実際初めての密着抱擁は嬉しかったんだろう?興奮した? 」

「 別にあれぐらい平気です!抱擁自体には慣れてますし、過去にもっと凄い接触をしたことだってありましたもの!それに比べたら、なんてことありません! 」

「 ん?なにそれ?それって、どれだけ凄い接触なワケ?新しい策に使えるかもだし、センセイに詳しく話してごらんよ? 」

「 私、前に敦賀さんのお腹に馬乗りになったことがあるんですよ!それも、超きわどいミニスカートで!それで、色んな意味で……その時の方がドキドキしましたっ! 」

「 へ?どんな理由で、敦賀くんと君が、そんな体勢になる訳? 」

「 え〜と、その!仕事に絡んでいることなので、申し訳ありませんが、それについてのお話は出来ません 」

「あ、そ。……ま、いいけど。でも、その時の状況ぐらいは、説明出来るでしょ?ちょっと俺を敦賀くんに見立てて、どんな感じだったのか教えてよ! 」

「 え? 」

「 馬乗りなら当然、俺は仰向けだよね♪んで、君が上に乗っかると。ほらほら時間ないんだし、早く乗って! 」

 

 妙にウキウキしながら行動に移す古賀。楽屋のソファーに仰向けになって、戸惑うキョーコを自分の上に導く。


 腰を下ろして体重をかけるのは申し訳ない気がしたキョーコは、膝立ちで寝転がる古賀を跨ぐ羽目になっていた。古賀が他の男性同様、自分を異性だなんて思っていないと理解しているので、危険などは全くは感じないが、それでもキョーコは複雑な気持ちだった。

 

「 いや、まさか人生で二度もオトコの人の上を跨ぐことになるなんて……これってどうなの? 」

 

 そんなキョーコの呟きは聞こえなかったのか、上機嫌な古賀が更なる無茶振りをする。

 

「 それで?このあと敦賀くんはどうしたの?君の足を撫で上げたりしたとか? 」

 

 自分の身体の上のキョーコを見上げ、古賀が悪い顔をしてニヤリと笑う。

 

「 この先は君のことだから考えられないとして。もしかして、マッサージなんかをしたりされたり? ああ、君、階段上って疲れてたんだよね。サービスでちょっと揉んであげるようか?」

「うぎゃあ!古賀さん、太もも揉まないでください!」


 素足では無かったが実際に古賀の手が自分の足を揉むようにして撫でたことで、流石のキョーコも抗議の声をあげた。


 その時、古賀の楽屋のドアがノックもなしに開いた。


 突然の訪問者に驚いたキョーコと古賀が固る中、訪問者の男は、物凄い形相で部屋の中に入り、古賀の上のキョーコを自らの肩の上に担ぎ上げた。


 「え?ちょ……な、なに?」


 呆気にとられている古賀を鋭くにらみつけた後、男は何も言わずに部屋を出て行ったのだった。

 

第11話に続く。

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